変わらないもの/後


「はっ…はぁ…ぁ…はっ…」

「は……っ……大丈夫か…」

 クリスはまだ痙攣しているトーマスに覆い被さり、頬へ口付けた。そこから、労るように目元、唇へと口付ける。

「ん…ふっ……っん……ぁ、まだ、まだ抜かないで…くれ」

「どうした」

「もうちょっと…このまま…」

 トーマスは手を伸ばし、クリスの首もとに抱きついた。クリスはトーマスを抱いて自分が下になるように体勢を変えた。
 胸に頭を乗せクリスの鼓動を聞きながら、トーマスも段々と息を落ち着かせる。

 とうとう、念願叶って兄に処女を捧げてしまった。と、ぼんやりと思った。意識を戻せば中のクリスが、自分を抱き締める腕がしっかりと存在し、これが夢ではないことを物語っていた。

「大丈夫か?」

「ああ」

「痛くなかったか?」

「最初はちょっと痛かった…けど、そんなのどーでもいいくらい良かった…。初めは皆…痛いって言うけど、全然…」

「身体の相性が、いいのかも知れないな」

「そーだったら…いいな。クリスは…気持ち良かった…か?」

「ああ、良かった。お前の身体も、初めて見る顔も、初めて聞く声も全てな」

「うるせーよ、恥ずかしい…もう忘れろ」

「いや。これが全部私のものだと思うと愛しくて仕方がない」

「っ…!そんなこと…俺以外に言うんじゃねーぞ…」

「当たり前だ」

「クソっ…嬉しいからムカつく…。なあ、もう一回やんねぇ?」

「今日はもう遅い。明日は学校だろう。私も授業がある」

「ちぇっ…真面目だな」

「それに…明後日までミハエルはいない」

「それは明日期待していいってことかよ?あ、…ミハエルには内緒な。今日のこと」

「解っている。私とお前の、二人の秘密ということにしておこう」

「うん。…なあ、今日もうやんねーなら、このまま寝たい」

「繋がったままだぞ?」

「繋がったままがいい。明日早く起きて風呂入ろうぜ」

「仕方がない…」

 クリスの髪をすく手つきや規則正しい心音は、やがてトーマスの眠りを誘った。

「ん…もう眠い……」

「ああ、寝なさい。おやすみ、トーマス」

「ん…おやすみ……」

 幼い頃はよくこうして兄の鼓動を聞きながら眠っていた。状況は全く違うものの、あの頃と変わらぬ兄の優しさはトーマスをひどく安心させた。

 愛し方に幅ができ、一見関係が変わったように見えるかもしれない。
 しかし、二人は兄妹であり互いを最大限に愛している、その事実は過去も現在も何ら変わることはない。歪かもしれないが、それが兄妹の絆だった。 そして、変わらぬ絆で結ばれた二人が愛し合い続けられる未来を願い、幸せな疲労の中で二人は眠りについたのだった。

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