【よかれと思って】ベクターが、してあげるっ!【ミザエル編】
数日後、一週間も立たないうちにミザエルから接触があった。ベクターの端末に、メールが届いたのだ。メールにはたった一文、
「放課後、体育館倉庫にて待つ」
とだけ書いてあった。ベクターは一読して、果たし状か何かか、と苦笑しながら端末を閉じた。
放課後、様々なアイテムが入ったバッグを持って体育館倉庫へと向かった。ミザエルがこうして連絡を寄越してきたということは、おそらくそういう意味でベクターを呼んだのだ。扉をガラリと開くと、腕組みをしたミザエルが何かを瞑想するように佇んでいた。
「よぉ、早いじゃねぇか」
「ああ」
「で?する気になったのかよ?」
前回とは彼の様子が違っているように見えた。少なくとも、元来ミザエルの根に備わっている自信を取り戻したように見える。それを見てベクターも調子良くミザエルを挑発するように吹っ掛けてみた。彼からは言葉の返答はなかったが、腕組みをしたまま空色の瞳がベクターの姿を捉えると、途端にニヤリと形のいい口角が上がった。デュエルにおいて優勢な時と同じ笑みだ。
「何があったかは知らねぇが、随分やる気だな。あん時のメソメソ泣いてたのが嘘みてぇだぜ」
「過去のことをいちいち掘り返すな。あの時の私はここにはいない」
「何に自信満々なのかは知らねぇが、やるんならここに寝ろよ」
いつものようにズルズルとマットを引っ張り出して敷きミザエルを呼ぶ。彼は抵抗も拒絶もすることなく、優雅に歩いてきたかと思うと大人しく横になった。それだけでなく、驚くことに自分でボタンを外し、制服を脱ぎ始めたのだ。ベクターは思わずへぇ、と声を上げた。
「随分と積極的だな。誘ってんのか?」
「フン。男は抱かないんだろう?」
「お前顔はいいからな。身体見なきゃ普通にイケると思うぜ。まあチンコ見ると萎えるんだけどさ」
前の時と同じく、ベクターはまず身体を解していく為に横になったミザエルに覆い被さり、身体にキスを施しながら撫で始めた。首筋から胸にかけ、舌で舐めつつ痕がつかないように唇で吸っていく。ピクリピクリと身体をヒクつかせながら、ミザエルは熱い吐息を吐いた。時折グッと力を入れて、ベクターの制服を掴む。
開いたシャツの間から胸板に手を滑らし、指先が触れるか触れないかという距離で撫でた。やっぱり脂肪がないから硬い。だが肌の手入れを念入りにしているのか、ミザエルの肌はすべすべとして気持ちがいい。少し焦らしてやった後に乳首をピンと指先で弾いた。
「ふ、…っあ……んんっ!」
「いー声してんじゃねぇか。そんなに気持ちいいかよ?」
「あ、っく…ぁ、……気持ちいい…!」
「……!」
あの極度の恥ずかしがりなミザエルが愛撫に対し素直に気持ちいい、と言うなんて。予想外のことに、驚いて彼を見ると彼は眼を閉じて眉尻を下げ、はあはあと切なく呼吸をしていた。感度はそのままどころか、上がっているように思える。
「あん……あっ…!」
「ミザちゃん…ちょっと、…ヤバいんじゃねーの…?」
段々と刺激の強さを増してゆき、両方の乳首を摘まんでくりくりと転がしてやるとミザエルはビクンビクンと腰を浮かせながらベクターの手に身悶えた。その姿に思わず腰がズクリと疼く。ベクターは喉を鳴らしてミザエルの下半身に手を遣った。そこは既に硬く、上半身がちゃんと感じていることが確認できた。円を描くように起伏を撫でながら揶揄ってやる。
「あれれぇ?テント張っちゃって、恥ずかし〜」
「ひぅっ…!や、ぁ……」
「アナル感じるようになったらどうなるんだろうなあ、こりゃ…」
本当にそう思った。確かにマグロよりも自然体の方がいいと言ってアドバイスして、彼もその通りにしているのだろうが、実のところこんなに開花するとは思っていなかったのだ。アナルを感じるようにしてやったら一体彼はどうなるのか。彼の身体を更に開発するのが楽しみになった。
ずるりとズボンを脱がせ、完全に露出させる。勃起した陰茎はピクピクと震えていた。
「さ、わって…」
「ん?」
「さわっ…て……。カイト……」
「んん〜?何だってぇ〜?」
一瞬の、思わぬ失言だったのだろう。しかしベクターは聞き逃さなかった。面白がるように声をかけるとミザエルはハッと眼を開いて、「しまった」というような顔をした。上半身だけで素直に感じていたことの理由に合点がいき、ニヤニヤと腰を抱き締めて顔を近づける。
「俺のことカイトだと思ってたんだ〜。ミザちゃんかわいーなあ」
「うるさぃっ…。お前が、素直になれと言うからっ…!」
「んーん、いいんじゃねぇの?感じてるお前やらしかったぜぇ?これなら、アナルで感じられるようになるかもな」
指がギリギリ触れる距離で勃起した陰茎の裏筋をツツ、となぞってやればミザエルはヒクリと内股を震わせた。真面目だから余計なのか、一度快感を受け入れてしまうと抜け出せないらしい。彼のスイッチを入れることは成功した。後は、アナルを開発するだけだ。
陰茎を扱きながら、ベクターはローションを取り出し指とミザエルの尻に塗りつけ、入り口の周りを揉むように撫でた。
「この数日間、何してた?オナニーか。一人で、マス掻いてたのかよ?」
「あっ…あっ…!カイトのこと、考えながらっ…!ひとりで、してた…!」
「ふーん。お前の中のカイトはどうしてくれてたの?」
「わたしの、身体中触って…っ!たくさん…キスして、くれた…。きもち、よかった…!」
「そりゃあ良かったなあ。じゃあこのまま、尻でも気持ちよくなれよ」
ローションを足し、周りを撫でていた人差し指をつぷりと中へ押し入れる。きゅうきゅうと指を締め付けられるが、すっかり力が抜けてしまったミザエルの中は前程にベクターを拒絶しなかった。
「あふ、あっ…ふぅ……」
「狭ぇけどなんとかなるだろ。ケツしめんな、踏ん張って開いてみろ。カイトの指だと思えよ」
指を一旦抜いてローションを足し、再び指を入れた。楽な体制になるように片足だけ立ててやる。
ミザエルは眼を閉じて荒く息をしているが苦悶の表情は見られなかった。ベクターはその様子に些か安心し中でかき混ぜるように指を回し、出し入れしながら前立腺を探す。
「っあ…!」
「お?」
中のコリコリとしたしこりを見つけて押すとミザエルの反応が変わった。当たりだ。今回はハッキリとその存在を捉えることができた。やっぱり最初の愛撫で散々感じていたお陰で、アナルも少々具合が変わっているようだ。
「なあ感じる?気持ちいい?痛くねぇかよ?」
「わか、らない…!ん、んっ…!おなか、じんじん、痺れて……変な感じっ…」
ミザエルはふるふると首を振り、ベクターが指を擦る度に腰を浮かせた。彼の中では明確な快感として捉えられているのではないが、恐らく感じているのだろう。本人がわからない、と言っていても態度を見れば明らかだ。
「感じてんじゃんミザちゃーん」
「感じて、る…?っ、く…ああっ!」
「指は合格だな。じゃあこれ、いってみようぜ」
ベクターは指を抜き、半ば鼻歌を歌うような心持ちで様々な道具が入ったバッグを漁った。ここまで何かをすることに対して充実感を感じるのはいつぶりだろうか。荒い息を続けるミザエルの前に、嬉々として道具を突き出した。
「じゃじゃーん、これなーんだ!」
「………?」
「バイブだよ。これ入れてみたら気持ちいいぜー?」
カチッと電源を入れると、アナルスティック型のバイブの先端が音を立てて卑猥に動き出した。ミザエルはカッと顔を紅くして口元を両手で覆う。こういうものを使ったことは恐らくないだろう。初々しい反応だ。
そんな彼を尻目に、バイブにローションを塗りアナルへと宛がう。バイブは当然指よりも大きいから、注意して入れなければならない。ゆっくりと出し入れをしながら先程見つけた前立腺のあたりを軽くつつく。
「あっ…く、あぅ……」
「ここだな。じゃぁー電源入れてやるから、自分でやってみろよ」
「えっ!?」
「自分でこのへんってわかっとくとこれからヤるのにいいだろ」
アナルに入ったままになっているバイブをミザエルが受け取ったのを見て電源を入れる。ミザエルは突然の振動を感じ取ったようで、脚をピンと反らして仰け反った。しばらくそのままで快感をやり過ごし、ベクターに言われた通り震える手でバイブを動かして前立腺を探し始めた。
一回感じるようになったからか、前立腺を探し当てるのにはそこまで時間を要さなかった。じわりと疼いたその一点に集中してバイブを出し入れする。
「はっ…はぁっ……うぅ、…あっ…」
「まだ後ろだけじゃキツイだろ。前も扱いてみろ」
「っ、あ…なにっ……なに、これっ…!?」
「チンコ気持ちいい?普通に擦るのより気持ちいいだろ…?」
「はぅっ…!うぅんっ…ああっ、あ、きもちい…!まえもうしろもっ、…!」
ミザエルの陰茎を扱く速度が上がってゆく。それに伴い、前立腺を刺激するバイブの動きも激しくなる。もうベクターの存在が頭に入っていないのか、髪を振り乱しながら身体を震わせていた。
彼の目の前で繰り広げられる、その辺のAVよりも興奮する光景にまたゴクリとベクターの喉が鳴る。ミザエルの姿はいやはや想像以上だ。なまじ顔がいい分、乱れて喘ぐ姿が完成された女優のようでもあった。男の象徴がついていたとしても、それを上回る程に彼の姿に興奮した。
「んっ…ああ!ああぁっ!!」
しばらくして、ミザエルは半ば泣きながら絶頂へと達した。びゅくびゅくと白く濃い液体が飛び、彼の手と腹を汚していく。射精の余韻ではぁ、はぁ、と眼を閉じ荒く呼吸する姿まで官能的だ。
ベクターは股間が痛くて心持ち前屈みになった。
「気持ちよかったかよ。すんごかったぜお前……」
「ん、…。後ろを弄りながら前を触ると、気持ちよかった……。これが、感じるということか…?あれだけ、痛かったはずなのに…」
「そうだぜ。お前はもともと挿入経験があるから前立腺さえ見つかりゃ早ぇんだよ。もうチンコ入れても大丈夫だろうな」
「では、それも試したい。ベクターお前、実験台になれ」
「ファッ!?」
突然のミザエルの言葉に、ベクターは思わず喉の奥から空気が潰れたような声を出した。先程まで彼をAV女優のように見立てて興奮し、挙げ句の果てに股間にテントを張っていたこともあってそれが見透かされたようでしどろもどろになる。
「ミミミミザちゃーん?い、いいの?カイト以外にしちゃっていいの?俺、男は抱かない主義なんだけど……」
「は?抱く?何を言っているんだ貴様は。実・験・台だと言っただろう。いいからそこに寝ろ」
自身から道具を抜いて立ち上がり、ミザエルはギロリとベクターを見下ろした。ほぼ全裸だというのに彼の鷹のような眼は威の衰えを感じさせない。ベクターは色んな意味でドキドキとしながらマットの上に横たわった。
「動くなよ。動いたらお前のこれを機能しないようにしてやる」
「わかったって、おっかねぇな」
ミザエルはベクターのズボンの前を開き、逸物を取り出す。もうズボンの上からわかっていたことだが、それは既に臨戦体勢であった。ちょっとやそっとのことでは羞恥など感じないベクターであったが、さすがにこれには顔を紅くした。
「男を抱く主義はないと言っておきながらギンギンではないか、変態め。私が手を下すまでもないな」
「ミザちゃんがやらしーのがいけねーんだよ。あんなに感じまくるとは思ってなかったぜ」
ミザエルに変態、と揶揄われてカチンとなり、ベクターも挑発し返す。先程の彼の官能的な姿を見た感想を言ってやれば、彼は途端に眼を閉じて顔を赤らめた。次の瞬間に陰茎を潰されそうになるほど握られて直ぐ様謝ったのだが。
予想通り、ミザエルはベクターの股間に股がり、陰茎に腰を下ろした。ゆっくりと勃起したそれが彼のキツいアナルに呑み込まれてゆく。
「っ、はぁ…ふぅ、ん……」
「うっ…はぁ、ミザちゃんのアナルきっつ…!やらしー…」
「ベクター…っん…手出しは、無用だぞ…」
彼は顔を歪めながら、もう一度ベクターに釘を差す。自分で動いて、感覚を掴みたいのだろう。彼はプライドの高い男だ。先程潰されそうになったことも考え、手出しなどすればそのままアナルに力を入れられて陰茎を折られないとも限らない。
ベクターがはいはい、と返事を返すとミザエルはゆっくりと前後に動き出した。自分の前を扱きながら、前立腺を探している。ベクターはきゅうきゅうと締め付ける圧迫感に耐え、快感を堪えた。思うように動けず、彼の拙い動きにじわじわといたぶられるのに耐えるばかりのこの時間はある意味拷問のようであった。
ミザエルがいいところを見つけ、動きが変わりだしてからはもうダメだった。アナルで感じ始めたミザエルはその一点に集中して動き、ベクターの上で大きく腰をくねらせて快感を貪る。アナルの締まり具合も彼の喘ぐ姿も全てが官能的に見えてしまって、射精したいのをひたすらに耐える。ミザエルのアナルが感じるようになっているのを確認するよりも自分の方が気持ちよくなってしまい、考えている暇がなかった。
「あぁ!っく…んんっ…あ、あぁ……」
ミザエルの陰茎を擦る手の動きが速くなったかと思うと、彼は声を上げびくびくと身体を震わせて射精した。アナルがきゅっと締まり、益々ベクターを刺激する。もう限界だった。
「ぐっ……はぁ、俺もイく…」
「あ、ちょっと待て…待って、って…!」
ミザエルの静止は少しだけ遅かった。抜こうとする彼の内壁に思い切り擦れてベクターは中に射精してしまった。入口近くで発射したため、中から溢れた白濁がポタポタと尻に伝う。
「あーあ、悪ぃ。てかミザちゃんエッロ…」
「黙れ。待てと言ったのに、耐え性のない奴め。結局のところお前は男にも興奮する変態ではないか」
「ちょっと…ホモのおめーに言われたくねぇなそれ。ま、興奮したのは認めるけどよ。エロすぎるミザエルが悪いんだぜ?」
「私は誰彼構わず欲情する節操なしではない。カイトが特別なんだ」
「はいはい、わかったよ。しかしアナルで感じられるようになってよかったな。これ見たらカイトも興奮しまくりだろーぜ」
後始末をしながらちらりとミザエルの方を見ると彼は何を妄想しているのか、顔を紅くして中途半端に服を着た状態で硬直していた。しかしその顔は、自信に満ちているようにも見える。彼の脳を覗くことはできないから詳しくはわからないが、感じるようになった自分を武器にカイトと過ごす夜を楽しみにしているのだろうということは検討がついた。
ベクターとしてはあれだけ感じなかった彼のアナルを開発できたことの達成感、そして成り行きとはいえ開発したアナルを試すというおいしい思いができたことに満足していた。いつもより上機嫌でミザエルを茶化しつつ、体育館倉庫の後片付けをした。
後日、昼休みの終わりにベクターはミザエルを学校の廊下で見かけた。そういえば前日彼はカイトのところに泊まりに行き、姿を見ていなかったのだ。
相変わらずお高く止まってそうな顔をしているが、彼を観察しているといつもと異変を感じた。誰もいないことをいいことに、何かを思うように顔を撫で、ほんのりと顔を赤らめている。彼のこういう姿は珍しかった。こういうのを、幸せオーラというのだろう。これまで出していたものよりももっと濃くて顕著だった。女みたいな顔しやがって、と内心突っ込む。
ふと、ミザエルと眼が合った。途端にふやけた顔は締まり、眼を吊り上げてこちらへと向かってくる。不味いなあと思いながらも、決定的瞬間を見てしまったベクターはニヤニヤとして揶揄う体勢に入った。
「よぉ、昨日はお楽しみだったよーで…」
ニヤニヤとするベクターと顔を合わせるのにあと数メートルというところでミザエルは突然ポケットから何かを取り出し、ベクターに投げつけた。咄嗟のことに身動きが取れなかったベクターの額にスコーンと小気味よい音を立ててそれは見事命中する。
「んだよ、いってぇな…」
手に取ってみると、見覚えのある一枚のカードが目に入った。随分前にミザエルに対し、自分のデッキに合うからくれとせがんだものだ。レアカードで、そこそこ値が張る上に手に入りにくいものだった。言うまでもなくその時は一蹴されてしまったのだが。それが今自分の手にあること、そしてそんな前の戯れ言を彼が覚えていたことにベクターは驚いた。
「この前の礼だ」
それだけ言って、ミザエルはポカンとするベクターを置いて颯爽と去って行ってしまった。彼の後ろ姿を見ながら、再び手元に視線を落とす。
カードが手に入って嬉しい反面何だか「負けた」ようで悔しいような、複雑な気分だ。普段意地っ張りで揶揄いがいのある彼がこうも素直になってしまうと拍子抜けしてしまう。
元々はミザエルの弱みを掴むためのものだったのだが、結果的に彼に感謝されることになってしまったようだ。まあたまにはいいか、と思いつつ、彼を揶揄うネタをまた探すことにして、ベクターはカードをポケットにしまった。
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