決定

身なりを整えて靴をはく。振り返って行ってくるね、と妙ちゃんに声をかける。どこに行くの?となぜかうきうきと聞かれる。総悟に呼ばれただけなんだけど。そうと答えるとデートね!と言われた。違う、全くもって違う。

『妙ちゃん、妙ちゃん。今のどこを聞いたらそうなるのかな?』

「じゃあ、おしゃれしなきゃ!女の子なんだから黒ばっかなんて駄目よ!」

『妙ちゃん!私の話聞いてる!!どこみてる!?私の事みてる?!』

「ピンクがいいかしらー。」

聞いてないよ。ズルズルと部屋に連れ込まれる。あーあ、動きやすい黒のスカートだったのに。帯くるしっ…、しかも丈短っ!ってかなんでピンクなんだ。文句を言ったら怖い笑顔が返ってきたので仕方なくこのまま行くことにしました。こんな可愛らしい格好初めてだよ。緊張で落ち着かない。

『(いつも潜入する時はお色気系か地味かだし)あー、今からでも帰ろうかな。あ、土方さんいい所に。」

「っ!!あ、あぁ!!なんだ名前その格好、誰かと思った。」

『あぁ、妙ちゃんが貸してくれた。やっぱり変かな。』

「いや、年相応っぽいというか。今どき風であー、似合って、」

「名前ー。可愛いですねィ。あれー、土方さん。いたんですかィ、全くもって視界に入らなかった。つか消えろ。」

「わざとだろ。それ絶対わざとだろ。お前が消えろ。」

『総悟、呼ぶ手間が省けてよかった。言われた通り来たよ。だから、帰っていい?』

「お前いつも帰りたがるよな。入れよ、暑いだろ。」

ええー、と渋る私の背中を総悟が押す。本当に大きいなー、ムサいなー。なんだか最初に来た時より目線が痛い。やっぱりこんな格好似合わないんじゃないか、と不安になっていると総悟がバズーカ構えていきなり撃った。彼いきなり撃ちやがりました。

『総悟っ!なんで撃ってんのっ。反抗期、反抗期ですか。お母さんはそんな子に育てた覚えはありません。』

「育てられてねぇーでさァ。」

『…まぁね。ってか何故に撃った?あれ、私の目の前にゴリラがいる。屯所ではゴリラも保護してるの?』

「幻覚でさァ。スルーしやしょう。それか動物園から逃げてきたんでさァ。気にしない気にしない。」

「総悟ォォ!!俺だよ!!」
 
「なんだ近藤さんか。てっきりゴリラだと思いやした。ゴリ、近藤さんはほっといて中にいきやしょう。」

「今ゴリラって言おうとしたよね!?」

『近、ゴリラさん。んな事ないよ。』

「なんで言い直したの!?合ってたよ!?」

『ちょ、近づかないで。動物臭い、バナナ臭い。』

「いいから中に入りやがれ!!」

土方さんに怒鳴られ、やっと中に入る。なんで怒られなきゃいけないんだ。私完全に巻き込まれた感じですけど。畳に正座すると山、なんとかがお茶を出してくれた。ありがとう山田。暑いのにお茶を出すなんて、と土方さんにキレられてるけど。

「で、桂との関係は?」

『いきなりその話ですか。えっとー、ただの愛人だよ。』

「まじでか。」

『嘘です。あんなのこっちから願い下げです。愛人になるなら金持ちにするよ。』

「じゃあ俺の愛人になりやせんか?朝から夜までたっぷり可愛がってやりまさァ。こちとら一応公務員ですぜェ。金ならありまさァ。」

「総悟、てめーは仕事なめてんのか!というか俺らの給料はお前がバズーカーで壊したもので差っぴかれてんだよ!」

「俺がナメてんのは土方さんだけって言ってんだろ。物分かりの悪ィー人だねィ。」

「てめぇ!!表にでやがれ!!」

「上等でィ!!」

2人は外に出て争いを始めた。この暑い中外に戻るなんて馬鹿か。でも懐かしい…、この感じ。寺子屋と攘夷戦争を思い出す。皆で会いたいけどきっと会えないだろうな。個別に合うのは敵いそうだけど。晋助なんてそもそも会えるのか。

「すまんなぁ、騒がしくて。」

『いや、なれてますから。桂とはただの幼なじみです。銀時も攘夷志士とは関係がありません。(今は、だけども)私が言うから間違いないですよ。これでも政府から依頼を受ける身。私は下手な事はしませんよ。』

「そうか、疑って悪かったな。あ、そういえば名前ちゃんはお妙さんの家に住んでるんだよね?」

『…まぁね。』

「俺の事なんか言ってる?」
 
『…まぁね。』

「恥ずかしいなぁー!!」

『キモイ。死ねとかしょっちゅう。』

「俺…どうしたらいいと思う?なんでふりむかれないのかな。頑張ってんだけどな俺。照れてるのかな。」

『あれ。なんで人生相談になってんの?なんで恋愛相談になってんの?おいおい、しかもさっきの私の言葉聞いてたかな。死ね、って言われてるんだって。好きとは程遠い言葉頂いてるんだし。』

「なぁ!!頼むよ!!名前ちゃん!どうしたらいいか教えてくれ!!」

『諦めよう。』

「無理!」

『じゃあ…死ね!』

「なんでェ!!今…の間に何があったのォォ!!ねぇ!」

「死ね、土方ァァ!!」

後ろからまた大砲の音がする。近藤さんという名のゴリラも横でうるさい。私何のためにここに来たのかな。ミニスカも落ち着かないし。座るとこれ上に上がるしさ。土方さんがぎゃあぎゃあ言うのをシカトして総悟が歩いてくる。焦げ臭いんだけど君。

「名前。土方いじんのも飽きたんでどっかいきやしょう。」

「何呼び捨てにしてんのォォ!!ってかてめーは仕事だろ!!」

「何言ってるでィ。んなの土方さんにあげまさァ!俺は名前と遊ぶんでィ。」

「いらねェーよ!遊ぶな!」

『元気だな…、あれ土方さん。仕事の用じゃないですか?皆さんまって、…まってたよ。過去形で、今土方さんが打っちゃったから。ここは何かしらあればバズーカを打つんですね。』

「何覗いてんだ、てめーら。」

「切腹されてぇーか?」

【スミマセンしたァァ!!】

「名前!!今のうちでさァ。」

いきなり腕を取られ走る。土方さんが後ろで叫んでるけどお構いなしだ。この着物の利点は走りやすいって事だな。そういえば呼ばれたのだから用があったのだろう。なのにどこに行きたい?なんて聞かれる。いきなり言われても困る。

『総悟が拉致ったんじゃん。それに用があったは総悟でしょ。あ、神楽ちゃん。』

「名前。なんでサドと一緒アルか。」

「うっせー。名前は俺の愛人でィ。」 

『違います。変な事神楽ちゃんに教えないの。まったくなんでそういうこと言うかな。』

「じゃあ、デートでさァ。」

『あれ?デートだっけ?』

「何言ってんでさァ。男と女が歩いてたらデートでさァ。」

『じゃあ、貴方は仕方なく神楽ちゃんと歩く事に。これもデートじゃん?そういう事でいいの?』

「それはガキの子守でさァ。」

「ムキー!!てめーもガキだろがァ!名前をお前の我儘で連れまわってんじゃないネ!迷惑がってるヨ!」

「危ね。すぐ手だすんじゃねーやィ。お前それでも女か?あ、女じゃないのか。悪ィ、悪ィ。」

「なんだと、コラァァ!!」

江戸は平和だなぁー。警察が喧嘩だなんて暇なんだね、うん。どうしようかと考えていたら知ってる奴と目があった。神楽ちゃんがいるんだから銀時がいてもおかしくないけども。私と認識した瞬間目が見開き素早い動作で近付いてきた。その俊敏さ他に活かせよ。

「…名前?え、ちょっと待て。ちょー可愛いんですけど!!何!!お前こんなの持ってたっけ?」

『お妙ちゃんが貸してくれたっ。首が…、痛い痛い。がくがくと揺らさないでっ、』

「あの怪力女も役にたつことがあったんだな。つか、こんなの持ってたのかよ。いつ着るんだっての。」

「誰が怪力ですって?」

「…げ。」

「お妙さーん!!」

「死ね、ゴリラァァ!!」

「あらー、大串君じゃないの。ゴリラといきなり現れるとかなんだよ。パトカーを無駄使いしてんじゃねえぞ。ガソリン代は俺ら市民からもらってんだぞー。」

「またてめーか。まぁ、プーだしな。暇なんだろ。お前みたいな奴から貰ってるガソリンじゃねえから安心しやがれ。おい、税金払ってんのかよ?総悟と名前追ってきたんだよ。」

「そりゃ、ご苦労なこった。」

「死ね、サドォォ!!」

「死ね、チャイナァァ!!」

傘と刀で殺り合う2人。もう喧嘩の域を越えている。妙ちゃんに抱きつこうとするゴリラをぶん殴る妙ちゃん。あれで諦めないのはある意味すごい。口で言い争ってる銀時と土方さん。ガキのようだ。で、いつの間にかいた、新八君と退君。お互い大変だね、なんて地味同時で慰め合っててなんだか可哀想になってきた。と、周りを観察してたらグイッと銀時に手を引っ張られた。

「名前、帰るぞ。」

『え、銀時の家に?』

「あぁ、昔話で盛り上がろうやー。大串君が知らない昔話で。」

『私を挟まないでよ。こんなポジション嬉しくないから。』

「いやいや。今日は真選組に泊まってけ。パーティーの話をしようか。いやー、綺麗だったな。あの赤いドレス姿の名前。」

『あ、ありがとう…。』

「はっ。俺なんて名前で呼ばれてるもんね。」

「旦那、俺も呼ばれてますぜィ。」

「名前。俺も呼び捨てでいい。」

『え。十四郎?それともトシ?どっちで呼べばいいの?』

「はっ。俺なんてあだなでも呼んでもらったぜ。」

「昔は銀ちゃんって呼ばれてたしー。別に、羨ましくないしー。」

「俺なんか名前から声かけてきたからな。」

「俺なんかなぁ!」

『うっさいな。ちょっと黙れ。きりねーだろ。シバくぞ。間に挟むなって言ってんだよ、むさくるしい。』

すみません、と2人が謝る。ったくどこに行ってもこんなんだ。こんな道中で騒いで、しかも真選組だ。なにか悪い事したんじゃないか、みたいな目線が突き刺さる。早く帰りたいし、着物を脱ぎたい。妙ちゃんの家に、とおもってみたらそこには地獄絵図がひろがっていた。近藤さん、御愁傷様です。そんな時総悟がいきなり後ろから抱きついてきて爆弾発言をした。

「旦那ー。名前は今日から真選組で働くんで。」

「は!?ちょっと。総一郎君?」

「総悟でさァ。」

『ちょっと待って、私聞いてないし。』

「ほらみろよー。びっくりしたー。」

「高給料で屯所にタダで住み放題。朝昼晩のメシつき。今なら俺もついてきまさァ。」

『わぁ、お買い得ー。』

「おいおい。名前が真選組なんてお堅い副長さんが許す訳ないだろー。心配しなくても名前はこれから万事屋のメンバーですからー。」

「そうネ、ありえないね。うちにすんでもらうヨ!私のお姉さんになってもらうんだからな!」

「いいぜ。よろしくな名前。わからない事があったらなんでも聞け。」

「てめっ!!許しませんっ、銀さんは許しませんよ!!」

『んー。でもお金はあった方がいいし。妙ちゃんちにいつまでも居座るのは確かに申し訳ない。神楽ちゃんのお姉さんポジションはぜひ欲しいけども。』

「きゃっほーい!」

「神楽!お前自分の願いがかなったからって戦線離脱すんなよ!」

「もういいネ。うちに来るより公務員の方が安心ヨ。こいつらの所は気に食わないけどうちも駄目ヨ。」

「厳しいお言葉!」

「あら、気にしないで。そんな事より名前ちゃんをあんなムサいしかもゴリラにいる所に置いて置けないわ。神楽ちゃんの言う通り銀さんの所も駄目だけどね。」

「そうネ。姉御の言うとおりネ。」

「名前が近藤さんを見張ってればいいんでさァ。そしたら姐さんの所にもいかねーでしょう。ストーカーに困ってるみてーだし一番の恩返しでさァ。」

なる程、総悟頭いい。と言えば悪知恵だけな、と土方さんが疲れた顔で言った。あんた標的にされてますもんね。大変でしょうよ。でもお金も泊まる場所も万事屋に比べれ真選組の方がいいに決まってる。仕事的にも松平のとぉつぁんがいるし、楽だ。

「いや、許しませんよ!銀さんは!!」

「てめーの意見なんざ聞いてねぇ!!」

『そうそう、意見は私のを聞くべきだよね。まぁ、万事屋にいっても私の稼ぎを当てにされそうだし。』

「そそそそ、そんな事ねぇってっ!」

『銀時、目が泳ぎ過ぎだよ。バタフライしてるよ。』

「旦那ー。とりあえず名前借りまさァ。」

『え。ちょっと!総悟!?』

ひょい、と脇に抱えられる。案外力あるんだな、とか考えてるうちに無理やりパトカーに押し込められた。いつの間にかトシが運転席に座ってエンジンをかけている。こういう時だけ息合ってるなんて。これからよろしくお願いしまさァ、と楽しそうに笑う2人にため息をついた。



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