夜空


月よりも明るい星が沢山光っていて
こんなに星が見えるのは何年ぶりだろう

もしかしたら星はいつも綺麗に
光っていたのかも知れないが、
私が上を見ないからきづかなかったの
かも知れない。

「ZZzz....」

神楽ちゃんはぐっすり眠っている。
自然に顔が緩む。

ガラリ

「よ。」

「トシ。まだ起きてたの?」

「その言葉そのまま返すぜ。
名前は眠くないのか?」

「うーん。眠いけど星が
綺麗なのに気づいて。」

「あ、本当だ。」

「トシは?」

「近藤さんのいびきで眠れねーんだ。」

「…それはそれは。」

テラスの柵を乗り越えてこっちに
やってきた。フワリとパーカーが
揺れる。

「ラフな格好似合ってる。」

「名前もワンピース似合ってる。」
「トシって結構大胆だよね。」

「そうか?思った事を口にしただけだ。」
「ふーん。」

「…あの。…いやそのだな…。」

「…なに?」

なにかを言おうか迷ってるらしい。
私の服へん?タグついてるとか?
それとも顔が駄目!!私化粧ないと
駄目だし…。

そりゃそうだ。トシは格好いいし
私なんか隣にいては浮く。
いや、恋人ではないけど、やっぱり
自信がなくなる。

 
夜空はこんなに綺麗なのに私は
こんなにも汚い。

あぁ、自分が惨めだ…。

『…ごめん。』

「なんで名前が謝るんだ?」

「なんでトシが謝るの?」

「いや、名前から。」

「なにか言いたそうだったから。
もしかしたら私が変でやっぱり不細工でトシの隣にはもっとナイスバディの人がよくて、トシのファンに私なんかが
喋ってて悪いなとか、やっぱり
ワンピースが似合ってないとか、
化粧しないとガキなのかな「待て待て!!どうしてそんな話になってんだよ!!」

どうしてって…。どうしてだっけ?

「あれ?まぁ、自分に自信がない。
女の子なんてそんなもんだよ。」

「勝手にまとめたな。」

「…いーなー。トシは格好よくて。
総悟は可愛いし。」

「…名前も…。」

「え?」

「いや、なんでもねぇ!!」

今俺はなんて言おうとしたんだ!!
名前も綺麗だ。誰よりも。とか
甘い事言いそうになった!!

「…はぁ。なにやってんだ俺。」

「煙草吸ってる。」

「…そーじゃねぇよ。…お前は自分が
思っている以上に魅力あるぜ?
総悟があんなに懐いてんの見たこと
ねぇし。」

懐いてるというか、いじられてる。

「…ありがとう。…夜空があんまり
綺麗だからさ、自分が醜くみえた。」

「…。」

「銀時たちに心配ばっかかけて、
フラフラして、自分がなにやりたい
のかもわらなくなった。」

俺よりもずっと若いのに大人びて
見えるのは実際色んな事を経験して
大人なんだな。と俺は思った。

「…今一緒にいてやればいいじゃ
ねぇか。」

「…。」

「もうどこにも行かねーで安心させて
やればいいじゃねぇか。
名前の居場所はここだろ。」

「…トシって大人だね。」

「そうか?」

「無駄に格好いい。」

「無駄には余計だ。」

「あー。なんかスッキリした。
ありがとうね。」

「名前が弱音はくなんて珍しい
からな。」

「うん。スッキリ!!で、なにが
ごめんね?」

「あ、あぁ。真選組に無理矢理いれ
ちまったからな。本当は嫌なんじゃねぇかって思ってたんだ。」

「ははっ。私の居場所を奪う気?」

「…楽しそうでなによりだ。」

クシャリと笑ったトシに
ドキドキしてしまった。

このドキドキはなんだろう。
総悟の時にもあった。

「(昔もあったような、なかった
ような…。)」

「名前?」

「なに?!」


「いや、ボケっとしてっから。」

「夜空が綺麗だよね!!」

「さっきからそれしか言ってねーよ…」

「ね、トシは真選組になんで
入ったの?」

「近藤さんがいるから。」

「ははっ。簡単だなー。」

「名前はなんでこの仕事を
選んだんだ?」

「…銀時たちが私を置いていっちゃ
ったの。」

「は?あの過保護が!?」

「あはは。超信じられないみたいだね」

「いや、そりゃそうだろ。」

あいつは真選組にいれるのも嫌だし
海までついてくる程過保護だ。
高杉も桂も名前を一目置いてる
みたいだし…。

「行った場所はいえないんだけど
危ない場所でね。私だけでも逃げろ
的な?」

「あぁ。そういう事か。」

それなら納得できる。
女、子供を安全な場所にやるなんて
普通の事だし。
…あいつはそれ以上に大切に思ってる
んだろうな。

「で、私はね。」

「ついていくって言ったのか?
泣いたのか?」

…そういえばあいつも悲しそうな
顔をしてた。
無理して笑って送り出して。
それを見たくなくて…。

「(俺は後ろを振り替えな
かった…。)」

あの時振り替えっていたらなにか
変わっていただろうか?

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「泣くわけないじゃん。」

「え?」

いきなり言われてマヌケな声がでた。




『行ってくる。』

「うん。」

『…。はー…。』

「なんでため息つくの!?」

「おまえさー。もっとなんかあんだろ!」
「だっていくなって言っても
いくでしょ?」

「まぁなァ。」

「じゃあ言うことはない。
一生会えないわけじゃない。」

『…。そうだな。』

「死んだら笑ってやるわ。はっ。」

「おまえ鼻で笑うかァァ!!」

「行く気失せてきた。」

「高杉がんばれ。」



「…なんていうか。」

「あそこで泣いちゃ駄目だって思った。だからバカやって笑った。」

「なんでだ?最後に甘えればいーじゃ
ねぇか。」

「私が泣いたら行ったあと思い出す
でしょ?私がいないのに心配されて
足手まといになるのは嫌だし。」

「…。」

もしあいつが泣いてたら総悟の奴も
…俺も気になったかも知れねぇ。

「それにまた会えるって思ったから。
そんときに沢山甘えようってさ。」

「…そうか。なぁ、あいつら行く時に
振り替えったか?」

「いや。でもさ、振り替えったら
泣いてかもね。あのまま行ってくれて
よかった。」

「そうか…。そうかもな。」
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なんだかわからないけど
泣きそうになった。

そう言ってもらって名前に
救われた気がした。

「…ありがう。」

「?なにが。」

「…いや。」

「なんで泣きそうなの!?
え、私なんか言った!!ごめん!!」

「いや、その!!…。悪ィ。」

「…なにがあったかわからないけどさ、トシは間違ってないよ。」

「…。」

「私の勘だけどね。」

「ははっ。なんだそれ。」

「よし。笑った。」

クスクス笑ってる君は
夜空の様に輝いていた。

「…夏も捨てたもんじゃねぇな。」

「?なんか言った?」

「いや。」

「?」

笑った俺に意味が分からないという
顔をした名前にもっと
笑いそうになったのは黙っておこう。
捨てたもんじゃない夏ももう終わる。



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