桜貝


桜貝…。
それは君がくれた私の宝物だよ。


「冷たい!」

「お。名前、水着可愛いですねィ」
「総悟も格好いいって。」

「ありがとうございまさァ。
…まったくあの2人は。」

「まだもめてんの?」

「よーし。あの岩まで先に行った方が
勝ちな!!!」

「上等だ。俺が勝ったら自腹きり
やがれ!!」

「あぁ。いいぜ。」

あぁ。元気だなぁ…。
焼けたくないので日焼け止めを
塗りたくる。

「名前。背中塗りまさァ。」

「あ、ありがとう。」

「こらァァ!!サドォォ!!なにエロい
手つきで名前の背中に触ろうと
してるネ!!」

「チッ。邪魔すんじゃねぇーやィ。」

「神楽ちゃん!!日に当たっちゃ駄目
だって!!」

「名前さん。妙ちゃんを
知らないか?」

「…。九ちゃん!!水着着てるの!!
見して見して!!」

パーカーを着ていてわからないが
確かに下は水着だ。

「い、いや。僕は泳がないから。」

「九ちゃん。泳ぎましょうよ。」

「妙ちゃん。ホットドックの
ケチャップが。」

「名前ちゃん。これは返り血よ。」
ニッコリ笑った妙ちゃんの後ろに
ゴリラが死んでいた。


「…わぁお。」

「名前ー!!ちょっと!!」

「はーい!!」

銀時に呼ばれ海辺に走ると、
闘争心メラメラの2人。
見てるだけで暑苦しい…。

「なに。銀時もトシもどうしたの。」

「今からあそこの岩まで泳ぐから
見ててくれねーか?」

「ついでにスタートの合図も頼む。」

「あー。はいはい。行くよー。
よーい!!どんっ!!」

『おりゃぁぁ!!』

うっわ。早いなぁ…。ってか
叫んで泳いだら海水が口に入るのでは?

『しょっぺェェ!!』

馬鹿だ。あいつら馬鹿だ…。
するとポンとボールが転がってきた。

「名前さーん。一緒にビーチ
バレーやりましぐはっ!!」

「…私は審判で。」

総悟のスマッシュが顔面に当たる。
神楽ちゃんがそのボールを拾い総悟
めがけ超速球を打つ。

「一応日陰でやってるんだ。
ってかこれビーチバレー?」

「お妙さーん!!」

「キモいんだよ、ゴリラァァ!!」

バシッ!!

「若ー!!」

「うわぁぁ!!」

バシッ!!

「チャイナァァ!!」

「サドォォ!!」

バシッ!!

1人1人、凄い球を打つが思うように
当たらないが、何故か…。
 
「ぐはっ!!」

「ぶっ!!!」

退くんと新八くんには命中。
やらなきゃいいのに…。


「名前!どっちが早かった!!?」

「あ。」

「あ?今のあ。はまさか見てねぇー訳
じゃねぇーよな?」

「トシ!!落ち着いて!!えっと…、
引き分けで!!」

「で。ってなんだァァ!!」

「名前、頼むよ…。」

「第2次ラウンドやってください。」

『チッ。』

お互い向き合い舌打ちをして
絶対負けねー。とか言ってる。
仲悪いね、本当に…。はぁ。

「さて、何しよ…。」

あれ。目が悪くなったか?
巨大ペンギンが…。可愛いような
気持ち悪いような…。

「天人?…あれ?あ、」

あ、足がはえてる(泣)
なんか、見たくなかったなぁ…。
ミ●キーの中もあんなんなのかな?

「嫌だわぁ…。ってか何あのペンギン。人気のない所に…。」

まさか、人さらい?怪しいしね。
浜辺で着ぐるみ着てるとか
かなり怪しいからね。

「ここはいった方がいいか?」

もしかしたら近くの祭りで使う
着ぐるみかもしれない。
あまり大事にしなくても大丈夫だろう。

「…とりあえず行ってみよ。」

こっそりついて行く。
どんどん人気のない所に移動していく。

「大丈夫かな…?」

皆が見えなくなってきて、
崖や上の方に登ってくペンギンを見て
不安になってくる…。
でもなんかどこかで見たことある。


「エリザベス。遅かったな。」

「小太郎!!」

「名前!!?はは。俺は簡単に
捕まらんぞ。さらば!!」

海に飛び込もうとする小太郎。

「いや、今日は非番だから捕まえない」

「えぇェェ!!」

ザパーン!!

「…。」

この高さ。しかも下は岩…。
あいつ死んだんじゃないの…?

「あれ大丈夫かな?」

【桂さんは無敵です。】

「名前…。そういう事は、
ごほっ!!先にいガはッ!!!」

「血ダラダラですよ。あれ大丈夫?」

【…大丈夫だろ。ほっときましょう。】

「見捨てるなァァ!!エリザベス!!
あ、名前。エリザベスだ。
あ、前会ったか。可愛いだろう。」

「…あんた動物好きだったけど…。
意味分かんないもの拾ったね…。」

「どこが意味分かんないのだ!!
可愛いじゃないか!!プンプン!!」

「キモいんだよ。やめれ。」

「(泣)」

まったく。この二重人格なんとか
ならないもんかねー。

「でさ、エリザベスってどうしたの?」

「坂本がくれた。」

「あいつはちゃんとやってんのかね。」

「名前こそちゃんとやって
いるのか?」

「まぁ、小太郎よりは大分ちゃんと
やってますね。」

「(泣)」

【桂さん。散歩してきます。】

「あぁ。悪いなエリザベス。」

「なんかあんたよりマトモ。
小太郎をよろしくね。エリザベス。」

【こちらこそ。】

「マトモってなんだ?名前。
マトモってなんだ。」

「あ、エリザベス足早っ!!
で、なんか言った?」

「もういいです…。名前は
どうして海にいるんだ?」

「来たかったから?」

「昔も駄々こねてたな。懐かしい。」

「こねてないし。
真選組とお泊まりなの。」

「…何故それを先に言わない!!
おまっ!!今夜チョメチョメされるぞ!!」

「されねーよ。銀時も一緒だし、
私は神楽ちゃんとおんなじ部屋だし。」

「うむ。リーダーが一緒なら大丈夫
だな。」

「あんたやっぱ年下にナメられる
タイプだわ。で小太郎はどうしたの?」

「久しぶりに名前にあったからな。これを探していた。」

コロッと手の平に桜貝を置かれた。
綺麗な淡いピンクがキラリと光った。

「…懐かしい。昔もくれたよね。
桜貝…。」

「あぁ。もうなくなってしまった
たろう?だから新しいのをな。」

「持ってるよ。ほら。」

「…物持ちよくない!!」
 
「でも昔もらった人形は捨てた。」

「…普通逆じゃない?桜貝とか
割れやすいじゃん!!」

「だって人形可愛くなかったし。」

「ひどっ!!」


「ひどくないよ。ってかさ、
海ってこんなに広いんだね…。」

「あぁ。(時がたつのはこんなにも
早いんだな…。)」




「小太郎出かけるの?」

「あぁ。銀時たちがいるから
待ってるんだぞ。」

「小太郎どこ行くの?」

「松陽先生とお使いだってよ。
海に行くんだと。」

「海?」

「知らねぇのか?」

コクンと頷く名前になんて説明
したらいいのかわからないのか
高杉が渋った顔をした。

「大きなしょっぱい水たまりだと
でも思っとけよ。」

「銀時。へんな知識を教えるな。」

「だって他になんて言うんだよ。」

「一緒に行っちゃダメ?」

ギュ!!

「できることなら連れてきたいよ!!」

「キャラ変わってんぞ…。
名前。俺と高杉がいるから
待ってようぜ。」

「…銀ちゃんか。」

「何!!俺じゃあ不満ですか!!」

「不満だってよォ。」

「んだと高杉ィィ!!」

「…海。」

『…。』

「名前が行きたがるなんて
珍しくね!!」

「ヅラてめーのせいだ。」

「ヅラじゃない!!桂だ!!」

コソコソと3人で話ているうちに
名前はどっかへ行ってしまった。

「…。」


「名前。」

「小太郎。お帰り。」

「あぁ。ただいま。お土産だ。」

「?…きれー。なぁに?これ。」

「貝殻だ。それは桜貝っていうんだ。」

「さくらがい…。ありがとう!!」

「いいえ。」




「…名前も大きくなったな。」

「まぁね。」

「名前、あのあと「大丈夫。
大丈夫だったから。」…そうか。」

攘夷戦争に顔を出したが
それは俺たちが生きているか確認
するため。生きている事を知った君は
どこかへ行ってしまったけど…。

「また会えてよかった。」

「うん。私も…。」

君が元気でいて、また会えた事に
俺たちは感謝してるんだ。
また会えた…。本当によかった。

「名前…。」

「ん?」

「もうどこにも行くなよ。」

「…うん。」

照れたように笑った君は
思った以上に綺麗で俺は名前の
手にある桜貝をじっと見ていた。


夏後半の夕方はちょっとだけ
寒かった。

 


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