相談
お天気がいい日。私は庭で退君にミントンを教えてもらっていた。ポーン、ポーンと球が行ったり来たりする。どこへ打っても返してくれるあたりやっぱり上手いんだと思う。しかし点を取ろうと強めに打っても軽く返されてしまう。少し悔しい。
「名前ちゃん上手いね。」
『退君もね。伊達にサボりながらやってない。』
「サボってなんか、」
「山崎ィィ!!どこ行ったァァ!!」
「ギャー!!!」
『明らかサボりだね。』
「名前ちゃん、また今度やろうね!じゃあっ。」
『逃げ足は 得意だけど 捕まった。』
「俳句ゥゥ!!ギャー!!!」
『ほら、捕まった。』
「ほらじゃねぇ。お前も何一緒に遊んでんだ。この前高杉の所に行った報告書書け。」
『はーい。えっと、鬼兵隊は真選組に負けず劣らず個性的な面々がいて、総悟の女装姿は超可愛く、またみたいと思いました。…あれ?作文?まぁ、いいか。はい。』
「よくねーよ、真面目に書け。しかもどっから筆と紙だしたんだよ。」
手品も披露したが服の下に色々隠すのは得意だ。いつどんな時に見つかるかもわからない。逃げ出すための道具や変装道具を数々隠し持っている。手渡した報告書が私の手に返ってくる。そもそも報告することがないんだよなぁ。言ってないけど飲んでただけだしさ。おぇおぇしてたからバレてるか。
『どんな風に書けばいいの?報告書なんて書いた事ないし。』
「報告する事を書くんだよ。それただの感想か日記じゃねーか。」
『…襲撃の件は100人程の攘夷浪士がきた後河上万斉が叩きにいくらしい。しかし総悟が晋助に見つかったので、今回の件はなしにする様だ。今後も海辺周辺の警備には十分気を付け、なにかあれば行動する。こんなんでいい?』
「あぁ。やれば出来んじゃってなしになったのか!?」
『そりゃバレたんだからないだろ。考えてよ、トシ。そんな馬鹿じゃないぜ敵も。』
「一応俺上司な。」
『タメ口でいいって言ったのはそっち。』
「だからって敬意ぐらい示せよ。」
『だって私他の隊士と違ってなりたくて真選組入ったんじゃないもーん。』
「ムカつくなてめぇ。」
『それが私のいい所でしょ。』
「いや、やな所だ。」
トシが部屋に戻るのでついていく。多分書類を手伝うんだろう。前回これで帰ろうとしたら暇なんだからと首根っこを捕まれた。あれは苦しいので大人しくついてく。どうせ暇だしね。トシがサインをする書類をまとめ、それにあったファイルに閉じる役だ。何回かここに来てからやった事務作業。書いて、合わせて、止める。
『…地味な作業だよね。』
「まぁな。」
『あ、そういえばさっき電話がきてさ。隊士を1人拉致った、って。』
「ふーん…ってええェェ!!名前!なんで言わねーんだよ!大事じゃねえか、事件だ衛ろ!」
『だって聞かないんだもん。そう睨まないの、拉致ったのが原田さんらしくて。あんなハゲ、拉致る?』
「…罠だな。」
『でしょ。ただの脅しだなーって思って。だって私が電話受けてる時に原田さん目の前で卵かけご飯食べてたし。』
「先にそれを言えェェ!!」
『すみませんしたぁー。』
「お前明らか総悟の影響うけてるよな。前はもうちょっとましだったよな。俺にも敬意があったよな。」
『いや、元々こういう性格。素が出てきたというか。ここにも慣れてきたってことだよ、よかったね!』
「…初めて万事屋に同情したかも。振り回されてるが目に浮かぶ。同情ならいつもしてるか、金なくて。」
確かに、と頷いてふと思う。なにか静かだと思ったら総悟がいないじゃないか。いつもならトシの作業を邪魔するのに。不思議に思い総悟は?ときけばいきなり押し入れからここでィ、とでてきた。2人して叫ぶ。びっくりしたぁ、なにこいつ気配なかった。観察になれよマジで。
『なんでマヨネーズ持ってんの?』
「てめぇ、また入れ替えただろ!からしとかカスタードとかまじわかんねーだからな!!」
『…それサラダとかにかけたら地味に嫌だね。食べるまで分からないとか。そういう嫌がらせから見ると、総悟は恋愛にかんしてねちっこそうだね。』
「名前…言う様になりましたねィ。」
「くははは!!」
「笑ってんじゃねーやい。死ぬ土方。名前、土方さんはどう思いやす?」
『うーん…、分かりにくよね。ツンデレ?案外乙女とか。』
「ちげーェェ!!」
「何気にウブとかキモイですよねィ。」
「てめーが誰かに恋するのもキモイ。」
『総悟は…、案外一筋だと思うよ。そんな人見つかったらね、はは。」
「もう目をそらしてんじゃねえか。一生見つかんねーよ。」
「土方さんだってムッツリで嫌われまさァ。」
「だからムッツリじゃねェェ!!」
「だから俺はオープンでさァ!!」
『だからそれもどうかと思うよ。』
「おぉ、楽しそうだな。トシ。」
「近藤さん…。どこをどうみたら楽しそうなんだ?叫びすぎて疲れるし、書類は進まねえしよ。」
『近藤さんは楽しそうだよ。』
「あぁ!!聞いて驚くなよっ。今日はなんとお妙さんに蹴られなかったんだ!!進歩だと思わないか!」
「…頭にナイフ刺してて進歩はないだろ。いい加減諦めてくれ。あんたはここの顔なんだぞ。そんなお人が女の結追っかけてるんて示しがつかねぇしよ。」
「諦めんぞ!俺は諦めない!!名前ちゃん、相談にのってくれ!」
『まぁ、のるくらいなら。暇だし。』
「じゃあ皆で近藤さんの相談にのりやしょう。暇だし。」
「てめーはサボりたいだけだろォが。口も動かしながら手も動かせ。」
「チッ、死ねよ土方。」
「丸聞こえなんですけどォ!!せめて小声にしてェェ!!」
「なぁ、お妙さんはなにが気に食わないんだと思う?」
【すべて。】
「それじゃあ改善の余地ないじゃん!!もう勲の意味ないじゃん!!」
『あ、整形でもしたらどうですか?』
「サラリと酷い提案したな…。」
「俺はこのままでお妙さんを愛したい!!」
いや、それじゃあ駄目だって。周り女の子がいなかったらよくわからないけど、とりあえず顔はいい方がいいよね。とりあえず潜入した時の女の子の会話を思い出す。んー、皆理想が高かったからなぁ。しかし妙ちゃんも高そうだよね。とりあえずありがちなアドバイスしとくか。
『好きなタイプを調べるとかは?』
「なる程。女の子ならではのアイディアだな。そういえば万事屋が記憶喪失になった時にお妙さんが…、」
『え、銀時記憶喪失になったの?馬鹿だなー。何やってんのあいつ。』
「名前…。一応幼なじみなんだからよ。心配してやれよ。」
『だって今ピンピンしてるし。大丈夫ってことでしょ。つか、毎回怪我やら問題ばかり持って来るやつだから気にしてらんないよ。で、そん時の銀時は?』
「なんか死んだ魚の目をしてなかった。お妙さんは惹かれていたような、いや違う!勲認めないっ。」
『あー。まぁ、何気にパーツは揃ってるしね。近藤さんは熱すぎるんだよ。』
「あぁ。ストーカーはやめた方がいいぜ。」
「押してダメなら引いてみろ、って言いますしねィ。」
あ、いいね。ちょっと離れてみたら、嫌でも気になるよね。試しにやってみようか、となれば近藤さんが泣きながら嫌がる。勲寂しくて死んじゃう、とか馬鹿なのこの人。いい大人が何を言ってるんだ。
「ウサギかよ。」
「あー、ウサギって寂しいと死ぬっていいやすよね。あれ本当ですかねィ。まぁ、近藤さんはそんな可愛いもんじゃありやせんが。」
「んな柔じゃあ弱肉強食の世界でやっていけねーぜ。嘘だろあんなの。」
「別に動物園とか平穏に暮らせばいいじゃないですかィ。」
「馬鹿。ウサギだって広い野原を駆け回りてーだろうが。」
「なんかに食べられるより餌にも不自由なく長生きした方が幸せでィ。」
「あれー。話それてない!!お妙さんの相談をー。ねぇ、聞いてるっ?」
「今ウサギの相談受けてるんだよ。」
「だから押してダメなら引いてみろ作戦でさァ。」
「だからそれはダメだって。」
結局なんの話?妙ちゃんは別に近藤さんの事嫌いではないと思う。ウザイとは思ってるだろうけどね。とりあえずストーカー行為を全てやめて、紳士に接すればいいですよ、と打ち切った。こんなことやっても無駄でしょうが。
「あれ?なんかまとめちゃった?相談終わり?」
『また来てください。今ウサギの相談でいっぱいいっぱいなんで。』
「ウサギより俺のが大事でしょー!!」
『だってウサギは癒やされます。近藤さんは暑苦しい…。あ、そこがモテないんだね。』
「グサッー!!今…ガラスの心がパリーン!!って!!割れたんですけどォォ!!」
「あー…、じゃあ後でアロンアルファーでくつっけてくださいよ。俺が貸してやりますから。」
「あぁ、あれ手につくと剥がすの大変だよな。」
『くっいた後に無理やりとろうと皮が剥がれそうでね。』
「そういう時はこれを使うとすぐとれまさァ。」
『凄い!!今回はこれをセットでなんと5000千円!!安い!!お電話はこち、』
「テレフォンショッピングゥゥ!!」
「よしっ!!相談ありがとうな!!行ってくる!!」
『…なにがよし?今私たちふざけたことしかしてなかったよね。適当に相談の返事してたよね。』
「懲りねーなぁ、はぁー…。」
「あ、俺も相談いいですかィ?」
『…は?トシ、空耳かな?』
「だよな。名前。俺仕事のし過ぎかな。」
『いや、マヨネーズの取り過ぎ。総悟。パァドゥン?』
相談にのってほしいんでさァ、と真面目な顔で訴えて来る。熱があるの?お粥つくるよ、私。明日槍でも降るのかな、とトシと心配していたら案の定副長の座を!という話だった。そっから喧嘩が勃発。いつものことだが、あれ。残ってる仕事って私が処理すんの?全く嫌な上司を持ったぜ。やれやれ。