侵入
幕府のお偉い様が集まるパーティに奇襲攻撃をかけるらしい攘夷浪士。私はいつ、どこから攻め込むのか等をそのグループにはいって探る予定だ。奇襲攻撃なら人手が欲しいはず。しかしまさかの行き先は鬼兵隊。
『大雨の日はやめようぜ。しかも話を聞いてすぐって、』
「雨の日こそ姿くらましやすいしいいだろ。そもそも今は晴れてるぞ。」
『まじかぁ。さっきまで大雨だったくせに…!』
「雨は嫌だったんだろ。晴れてよかったじゃねぇか。今から行け。」
なんて言うトシをなんとかなだめ明日、つまり今日にしてもらったが。夜色々考えたが正直行きたくない。いや、晋助に会いたくないとかじゃないよ。…まぁセクハラまがいをされたって優し、優しいのか?まぁ、でも晋助に潜入がバレたらなー。
『(退君に来てもらおうかな…。いや、銀時に相談?攘夷なら小太郎?いっそ近藤さん達にすべて話、いやそれはさらに面倒)』
あぁ。どうしよう。いやしかしトシは下っ端の奴だけでいいと言っていた。情報さえ掴めれば皆が行く訳だからさっさと帰れる。晋助がこのアジトにいるとも限らない。そうだよ、トップが下っ端に会う訳ないじゃん。
『しかしピリピリしてる…。』
幕府のお偉い様を狙うとあって空気が重い。こんな時に仲間にして、とか信じてくれるのだろうか。見つかったら開き直ろう。昔のダチが会いに来て何が悪いねん。いいやん、別に。退屈しないわ。そうよ名前。いつも自分を取り戻しゃーいいんじゃいっ。
『(むしろそういう方向で潜入するか。まぁ、黙って入ってもしばったり晋助に会ったら危ないし)』
とりあえず向こうは私が真選組にいることは知らない。晋助に会いに来たといって、観察しよう。なんなら泊まって情報をとりまくろう。使うては使ったほうがいいし、よし、ばっちこーい!あ、私がいくのか。しかし馬鹿デカい船だ。あいついい生活してんな。
『(私ならほぼ船とか宇宙船の生活なんて嫌だけど。)』
「ちょっとそこの女!!」
『でも色んなとこ行けんのいいなぁ。私なんかさっさと退散だしないつも。ずりーなぁ、あのヤロー。』
「シカトすんなァァ!!」
『あ、私?』
「あんた以外誰がいるッスか!!」
『ほら、ワラワラと目つきの悪い。…まぁ、女じゃないね。』
「この船に何か用ッスか?見た所町娘っぽいけど、(攘夷浪士じゃないし)」
『(町娘に見えるのか、なんか嬉しいな)』
いつもケバい女とか敵の仲間になるときはなるべく小汚く、ではないが必死感出したりだし。しかし敵意むき出しぃー。まぁ、真選組だとは思われてないみたいだね。そしたら切られてるか。ってかこの人、
『…スタイルいいなー。』
「は?」
『美人だし、いーなー。羨ましい。(顔はいくら化粧でなんとかなってもスタイルは無理だしなぁ)』
「いやー、そんな事ないッスよ。あんたも可愛いじゃないッスか。」
『いやいや。何?晋助の彼女?』
「ち、違うッスよ!!」
『あ、顔赤くしたなって。成る程片思いって奴か。やっぱり晋助はモテるねー。』
「そりゃ格好いいッスもん。あれ、…晋助様を知ってるんッスか?」
『あははっ。様って、晋助様って!!あー、爆笑。あ、私は名前。晋助の古い友人です。』
「幼なじみッスか?まさか、あの銀髪の天パの仲間!?」
『え、銀髪の天パ?…銀時?』
「やっぱり仲間ッスか!!」
いきなり拳銃を向けられる。さっきまでいい感じに話ていたっていうのに。銀時お前はなにをやったんだっ。とりあえず銀時とは知り合いだが無関係だと必死に説明。江戸に久々に来た所たまたま晋助の噂を聞き港に来たと。
『だから本当に鬼兵隊の船があるなんて知らなくて。そしたら貴方がこれは鬼兵隊の船って固定したから、』
「…でも怪しい。」
『まぁ、正面からはな。でも船にこもってる奴にどうやって会うさ。引きこもりかこのヤロー。』
「あんた、どんどん口が悪くなるッスね…。」
『あんたじゃなくて名前だってば。貴方の名前は?今更隠してもしょうがないでしょ。』
「…北島また子ッス。名前は晋助様と本当に幼なじみなんッスか?」
『呼び捨てかい。まぁ、昔は晋ちゃんって呼んでたってばよ。』
「なんでナ●ト?つか晋ちゃんッスか!めっちゃ仲良いっすね!」
『そうさまた子。中に入れてくれるかい?写輪眼的なもので晋助がこの中にいることはわかっているよ。いや、白眼だっけ?』
「適当っすね。的な、ってなんっすか。」
『万華鏡なんちゃらになる前に通しなさい。』
「こわっ。いや、無理ッスね。」
『なんだよ!!あ、そういえば写真があるや。これで私たちが幼馴染と証明できるよ。』
「写真あるんだったら先にだせよ。うわ、古い写真ッスね。」
『まぁ、晋助たちと寺子屋にいってた時のだから。ボロボロだね。ほら、晋助。」
「…可愛いじゃないッスかァァ!!」
『で、横のがまた子がいってた銀髪の天パ。』
「この頃も天パッスね。あー、この長髪男も来たっス。ってか名前、幼いッスねー。」
『まぁ、年離れてるからね。』
「まぁ、名前が晋助様の幼なじみって事はわかったッス。一応身体検査していいッスか?今ちょっと色々案件があってピリピリしてるんで。来るなら先に晋助様を通してくれれば疑わないのに、」
『ごめん、ごめん。びっくりさせたくて。というか連絡先知らないしね。はいよ、どーぞ調べて。』
両手を広げればパンパンと体を軽く叩かれる。ナイフや銃はどうしたって?それは色々企業秘密だ。こういう事は想定して色んな場所に隠すのがスパイってやつだ。
「まぁ、大丈夫そうッスね。あ、晋助様を襲ったらどうなるかわかってるッスね。」
『襲いません。襲いたくもない。』
「北島殿、なにをちんたらしてる、おや。これはお客様であったか。」
「河上先輩、早かったッスね。うちだってちんたら道草なんかくってないっすよ。」
「あぁ、案外弱かったでこざるよ。疑って悪かったでござる。で、そちらは?」
「晋助様の幼なじみッス。ちゃんと写真で確認したんで確かっすよ。」
『初めまして。名前です。』
「晋助の。それは珍しいお客様でござるな。拙者は河上万斉でござるよ。」
『あぁ、聞いたことある気がする。』
「晋助と、という事は坂田銀時とも知り合いでござるか。」
『まぁ、』
銀時、お前はいい年こいてまだ暴れてんのかい。逆に話題にでない小太郎が可哀想だよ。近くにきて見下ろされるとなんだか威圧感がある。また子は騙せてもこの人は騙せないかも知れない。まぁ、私だってまだ本気を出してないから大丈夫だけど。つか、また子があっさり信じすぎるんだよ。
「名前殿はよくここがわかったでごさるな。」
『私、仕事が情報収集とかだから。案外早く見つかったよ。』
「そうッスかー。気をつけなきゃッスねー。」
「そうでござるな。…それにしてもいい曲でござる。名前殿。」
『え、私?曲、ってなに。』
「気に入ったでこざるよ。それよりお客様なら早なく中にいれるでござる。どうぞ。」
『はぁ、ありがとう。(変わった人。まぁ、疑われるよりいいか)』
「そうっすね、案内するっすよ。そういえば小さい頃の晋助様はどんな感じだったんっすか!」
「お、それは是非聞きたいでござるな。」
『んー。最近の晋助に会ってないからどう変わったがあんまりわからないんだけど…。優しかったよ?うん。』
「なんすかその疑問形は。あ、晋助様ー。お客ッスよー。」
戸を叩きながら叫ぶまた子。そんな言わなくても聞こえるって。しかし案外早く会えちゃったな。奴がここにいるという事は奇襲作戦に参加するのだろうか。だとしたら人数を応援の増やした方がいいだろうな。え、遠慮とかないよ。
「あァ、客?ほっとけ。今忙しいんだよ。」
「いや、でも…。」
「口答えするな。」
『何?なにをあんなにキレてるの?逆ギレかよ。やな上司もったねー。つか、忙しいとかめっちゃ三味線の音聞こえるし絶対暇でしょ。客ぐらい会えよ、小さい男だな。』
「聞こえるっすよっ。それにそんな事ないッス!晋助様は世界一ッス!」
『んな事ないよ、また子。世界を見渡せばイケメンは沢山いるよ。もっといい男がな。河上さんだって格好いいよ。身近にもいるっていうのにお前は。』
「嬉しいでござるな。名前殿も可愛いでござるよ。」
『まじでか。ほぼすっぴん状態で褒められなんて、嬉しいかぎりだよ。』
「よければ万斉と呼んで、」
「名前!!」
「晋助…、ビックリしたでござるよ。」
『そうだよ、寿命縮まったよ。というかいるならさっさと出てきなさいよ。なに引きこもってんの?便秘?」
「ヒロインがそういう事いっちゃ駄目ッスよ。」
『私にだって人権はある。晋助?』
突然出てきたと思ったら固まっている。目の前で手を振れば意識が戻ったのか頭をがっ、と掴まれた。てめぇは今までどこに居やがった!なんてヤンキーさながら凄んでくる。怖いし頭ぎりぎりいってる、痛い。
『ごめんなさい、ごめんなさい、離してくださぁあああいっ。』
「…感動の再開ッスね!!」
「どこ見てるでござるか。今度は名前殿首締まってるでござるよ。」
「愛のムチッス。」
『嫌だなそんな愛。それに晋助が愛とか…、気持ち悪いだろ。晋助離して。」
「…ちっ。あんまりどっか行くんじゃねェよ。」
『うん、ごめん。』
「あれ、目、悪くなったかな?」
「あれ誰ッスか!!晋助様ッスか!!まじッスか!!やけに素直ッスよ!!捨てられた子犬の目をっ、」
「斬り殺されてェーか?万斉、標準語気持ち悪ィ。」
「だって晋助が…、元どおりでござるが。」
「また子、酒もってこい。今日は泊まってくよな、名前ちゃんよォ。久々に顔を出したのにもうさよなら、なんて薄情な事しないよなァ。」
『…はい、勿論泊まらせていただきます。』
まぁ、泊まりになればこっちも聞き込みをしやすい。情報を掴んですぐに知らせることが出来るか、それが要だな。なかなか帰してくれなさそうだし…。しかし真選組に入った事は黙っておこう。帰る時にサッと言ってサッと帰ろう。秘密に出来るならしておきたいが、
『(後でバレて怖い思いするなら自分から言っといた方が、)』
「名前。銀時やヅラにはあったのか?」
『あ、うん。2人も全然変わんないね。晋助もね。」
「てめぇは大人っぽくなったなァ。昔はこんなガキだったのによォ。」
『なんか親父みたいですよ…。1番晋助が歳近いしあんま変わらないでしょ。』
「ま、もう大人なんだしヤルか。」
『どういう話の切り返しだ。やんねーよ。本っ当に変わんねーな、外見も中身も。死ね。』
「あァ、誰に口聞いてやがる。」
『晋ちゃん。』
「…犯すぞ。」
『調子乗ってすみませんでした。あ、ってか小太郎に変な事吹き込んだでしょっ。』
「変な事ってなんだ?」
ニヤニヤ笑ってやがる。これやっぱり確信犯じゃん。しかし私と晋助がヤッた、とも言えないし。いや、言ってもいいけど今は横にまた子がいる。こいつの嘘です、なんて弁解の余地を与えぬほど騒ぐのは目に見えている。今でさえ晋助に嬉しくない誘いを受け睨まれているのに。ちくしょう。
「…仲いいんッスねー。」
「まぁ、ガキの頃から一緒だったしなァ。」
『苛められ苛め返す幼少時代。あれで私は強くなったのよ。』
「嫌な時代でござるなぁー。」
「ククッ、飲み込みが早くて色々教え甲斐があったぜ。で、まだ情報収集とか変装とかやってんのかァ?」
『え、あははー。まぁね!』
「そういえばさっきも言ってたっすね。まぁ、晋助様とあの銀髪たちと成長したなら一般人には育たないっすよね。あ、褒め言葉っすよ!」
「全く褒めてないでござるよ。」
「名前。一つ言っとくが、真選組には近づくなよ。」
「そうッスよ!!危ないッスよ!」
『いや、過激派攘夷志士のが危ないッスよ…。(言えない!!私が真選組に入ってるなんて言えないっ。どうする、私)』
「名前殿。鬼兵隊に入ってはどうでござるか?」
『いやいや、は?』
「いいッスね、それ!」
『よくない!わ、私戦えないし。』
「情報収集があんじゃねぇーか。」
『何晋助もノッてんの!?そんな簡単に入れていいもんじゃないでしょうがっ。酔ってる!?酔ってるのか!』
「酔ってねぇーよ。別入りたきゃ歓迎するぜ。それに世の中に反感のある奴が入るんだ。別に難しい審査なんてねェ。潰したい奴は入ればいい。」
『いや、私船にずっといるのは…。』
「そうッスか…、残念っす。」
『いや、あの。江戸にいる予定だから遊びにくるし!』
「いやー、楽しみでござるな。」
…なんで私ってこうフォローしちゃうんだよ。トシに負けない程、フォローしてるよ、私。そんなにほいほい遊びにきていい場所でもないだろうに。なんかここにいると変な約束をしてしまいそうだ。外の空気吸ってきます、と甲板に逃げる。海の匂い、髪がちょっとパサつくけど気にならない程の開放感。ため息をついたとこで耳元から機械音がし、聞き慣れた声がする。
【名前ー。聞こえますかィ?】
『あ、うん。小声でしか話せないけど聞こえてる?』
【あぁ。おい、そっちは大丈夫か。】
『あ、トシ?大丈夫だよ。今日は船に泊まるからね。』
【あぁ、わかった。情報さえ掴んだらさっさと切り上げろよ。高杉も江戸にいるって情報がはいった。いつはちあうかわからねぇ。】
『あらまぁ。(もう会ってます)それなら警備の人数は増やさないとね。』
【ああ。情報がわかって帰るときに港の船も見てきてくれ。1番はあいつが奇襲攻撃でどこからくるかわかるのが1番だが読めねぇやつだ。高みの見物で来ない可能性も、】
「名前ー。」
『また子!ちょっ、切るよ。どうしたの?』
「空気吸いに来たっス。2人共酔っ払って手に付けられないっす。…晋助様があんなに笑ってるの初めて見たッス。」
『…笑ってたか?また子の目は節穴だよ。』
「でも、リラックスしてたッス。…仲がよくて羨ましいッス。」
『…。また子はずっと晋助の傍にいるんでしょ?』
「そうッスよ。入ったあの時からの晋助様はかっこよかった。」
『晋助がさ、ずっと傍に置いてるって特別だと思ってるんじゃないかな。もし特別だと思ってなくても、ずっと傍にいるって事はそれなりに重要って事だと思うよ私は。あの晋助だもん。少しは自信持ってもいいんじゃない?』
「晋助様が名前にかまう理由がわかった気がするッス。」
『過保護なだけだよ…晋助の事よろしくね。ワガママだし突拍子も無いことするけど。だから見守ってくれる仲間が必要だし。』
「そんなの当たり前っすよ。」
『危ない事だし世間から疎まれてるのもわかってる。私はそっちにはいけないけど晋助の気持ちもわかる。早死にしないか、それだけが心配なの。全てを壊すっていってるけど晋助が壊れそうで…。まぁ、簡単に死ぬ奴じゃ無いけどさ。よろしく頼みます。』
「…当然ッス。」
やっぱり仲間になればいいのに、なんて呟くまた子が可愛い。その後女子トークや小さい頃の話なんかをして仲良くなる。なんか今日は女の友情を深めた気がする。しばらくして甲板まできた晋助と万歳に捕まって酒盛りに付き合わされた。ちくしょう。