関係

今日も江戸は快晴で、屯所の中も覚えた。環境に慣れた私はバリバリ仕事をしよう!と意気込んでます。という事で副長の部屋に来ています。見るところトシの机には書類が山の様になってるし忙しそうだ。警察が忙しいなんて世の中が乱れてる証拠だけども。でもこんだけ忙しいなら私にも仕事位あるでしょ!

「ねぇな。あ、いや!お前は観察だからよ。まだ潜り込む所もねえし。そんなに落ち込むなよ、平和でいいじゃねえか。」

『それを見つけて部下に仕事を押し付けるのが上司の役目でしょうが。暇なんです。今までスリルの中生きてきた私にはこのどうしようもない時間が苦痛でたまらない。なにしていいかわからない。皆休日って何してるの、私何したらいいの。』

「苦労する性分だな…。」

「じゃあ俺と遊びやしょう。俺もちょうど暇だったんでさァ。名前も暇してるんだったら江戸の町でも案内しますぜ。おいしい甘味屋があるんで案内しまさァ。ついでに土方の激辛団子も買いましょう。」

『総悟。副長室に来るなんて珍しいね。暇って仕事は?』

「あー…、終わった。」

「嘘つけェェ!!てめぇねぐせついてんだろ!絶対今起きたんだろ!つか激辛ってなんだ、俺はいらねぇぞ!」

「うるせぇひとだなぁ、おい。それより働きたいなんて珍しいですねィ。」

『タダで泊めてもらうのは気が引けるっていうか。本当に暇なんだよね。今まで依頼もずっとコンスタンスにとってたし、時間あいても情報収集とかしてたしさぁ。』

「はぁ、分かったから落ち着け。そして地味に書類の端に落書きすんな。」

べしっといい音がした。デコが痛い、デコピンされたみたいだ。総悟が可哀想に、と私の頭を撫でる。土方さんが総悟を殴る。で、仕事は?と聞くがない、と一刀両断されてしまう。いや、今の話の流れだと仕事くれる感じじゃなかった?!

『何でだよぉおお!こんなに仕事を欲しがる子珍しいよ!私あとからやらなくなっちゃうよ!』

「あとからちゃんとやれよ!今日は江戸を回ってこい。」

『は?ふざけてんのかコラァ。観光しに来たわけじゃねぇんだよ。激辛団子がそんなに欲しいか、あ?』

「なんで喧嘩ごしなんだよ!立派な仕事だ。道聞かれたらどうすんだ。激辛団子はいらねぇっていってんだよ!」

『なる程。でも私隊士服きてないので皆さん私が警察だとわからないと思います。』

「見回りぐらいすんだろ。道迷われたら困る。観察なら適当に潜り込める場所とか路地とかみつけてこい。あと必要なもん買ってこい。今日からここに住むんだから。」

「なら俺が案内してもいいじゃねぇですか。色々案内するし、危ない裏路地も教えますぜ。」

「危ない裏路地じゃなくてお前が危ないから駄目だ。あと仕事しろ。」

『でも確かに隠れ場所とか道とか覚えておくと便利だからありがたいや。じゃあ妙ちゃんにここに住む報告してお菓子をお土産に買っていこう。』

「じゃあついでに近藤さんに戻って来るように言ってくれ。いつ帰ってくんだよ、あの人。あ、名前。お前金あんのか?」

『…誰かから、』

「駄目に決まってんだろ!お前今日から真選組だからな!サツが堂々とスルんじゃねえよ!」

『はいはい。わかってるよ。んな事!冗談に決まってるじゃないの。』

「逆切れかよっ。お前の場合前科があるから嫌なんだよ。」

『そんなに私がいやなら出てけばいいじゃない!幸子の所にいきなさいよ!私の過去も愛してくれない男なんて私だっていやよ!』

「幸子って誰!!なんで俺が浮気してるみたいな感じなの!?なんで俺が悪いみたいになってんの。悪いことしたのそっちだからな!」

「あーぁ、土方さん。どうすんでィ。名前と幸子どっちをとるんですかィ?」

「お前はちょっと黙って、」

『行ってきまーす。』

「このタイミング!!?」

自分からふったくせに!!とかぶつくさ言ってるけどシカト。からかうと面白いなぁー。突っ込みが激しいからついぼけちゃうよ。お金は持ってますよ。だって私これでも政府から依頼を受ける身ですから。銀時と違ってリッチなんですよ。でも安定した職も魅力だよね、やっぱり。とりあえずブラブラと町を歩き適当に入ったお店で必要な物をかう。寝間着や私服も長期滞在になるので買ったらあっという間に大荷物になった。

『妙ちゃんにも買ったし。あ、銀時の家だ。丁度通り道か、…あいつに嫌がらせにいこ。おや、留守?インターホン鳴ってるけどな銀と、』

「いらっしゃーい。」

『早っ、いるならさっさと出てこいよ。』

「いや、今ババァに家賃返せってよぉ。うるせーんだわ。返せてたら苦労しないの。」

『あぁ、プーだしね。やっぱり職って大事だわ。』

「だからババアかと思ったわけよ。いや、別に浮気とかしてないからね。名前だってわかってたらすぐ開けたからね。怪しいもんとか別に隠してねぇし、綺麗だよ。ちゃんと片付いてるって。」

『なんで初めて彼女が部屋に遊びに来た、みたいになってんの。』

「あ、名前!遊びに来たアルか!!玄関で何やってるあるか。早く入るヨロシ。」

「あ、いらっしゃい。どうぞ、今お茶いれますね。」

『ありがとう、おじゃまします。あ、これお菓子。』

「まじでか、あー。さすが名前。俺の好みをわかってるよな。これって愛?」

『いや、神楽ちゃんたちも食べれるのはお菓子かなー。あ、そういえば銀時も甘党だったな。じゃこれで、って感じで銀時はついで。』

だからなんでお前はそーいう事言うかな!と呆れた顔で言われた。一言多いってやつ?知ってる知ってる。それが私のいい所でしょ、とかわい子ぶっといた。あー、買い物も疲れた。肩と腕が痛いよ。

「あきらか違うよね。もっとオブラートにだなぁ。で、今日はどうした?仕事はねぇのかよ。あんだけ野郎に好かれてんのに。」

『好かれてるっていうか、銀時と張り合って入れられたようなもんだけどね。総悟は完全におもちゃとしかみられてないし。今日は銀時をからかいにね。仕事はないの。』

「今日は仕事はないって、お休みですか?」

『トシが観光して道を覚えろと。ついでに必要な物を買ってこいってさ。で、大荷物なわけよ。』

「よし!!銀さんが送ってってやる。ついでに観光も任せとけ。名前が使えそうな裏道も近道も俺は詳しいぜぇー。」

『それってあまり褒められたことじゃないけどね。大の大人が裏道とか近道とか色々知ってるってどうなのよ。』

「ズルいね!銀ちゃんばっかり!!」

『神楽ちゃん。今度またゆっくり来るから。あ、お土産なにがいい?なんでもいいよ。』

「なんでもいいアルか!!じゃあ、天パじゃない銀ちゃん。」

「おいぃいいい!俺のアイデンテティを潰す気か!」

それはもう銀時ではない。違うのは?と聞けば竜宮城と言われた。なんでハードル上げたの?この子。それは無理かな、と言えば酢コンブと言われた。いいんだそんなんで。駄菓子屋で数十円だよ。もっと高いお菓子でもさぁ、いいけども。

「名前ー、行くぞ。」

「来たばかりなのに。今度は予定のない時にまた来てください。」

「そうネ、絶対ヨー。ほら定春も待ってるね。可愛いでしょ。拾ったアル!」

『…何これ、犬?犬ですか?でかい、でも可愛い。ぎゃあ!なんか屋根から落ちてきたよ!穴開いてるっ。って事は上から…人?』

「おいおい、なにをやってんだよ。俺原付にエンジンかけて待ってたのに。え、なにどうした?」

『ぎ、銀時…。人が天井からふってきたんだけど。この人大丈夫かな。』

「げ。名前、早くいくぞ。」
 
「銀さん!!そうやって他の女とイチャついて!!私をじらしてるのね、嫌いじゃないわ。むしろ好きよ。もっとそうやって私の愛を計ればいいわ!私はそんなんじゃ嫌いになんてならないんだからねっ。」

「黙れ、ストーカー。なんでこうよりによってこういうときに来るかなお前は!」

『ストーカー…。銀時ストーカーにあってるの?大丈夫?(妙ちゃんを見ているとストーカーという単語がとても大変なものに聞こえる。あの場合大変なのは近藤さんもだけど)』

「なに、俺の心配してくれてるの?大丈夫だよ、心配すんな。可愛いーなチクショー。」

「シスコンが2人になったアル。」

「2人って1人は僕か。僕の事か?」

「他に誰がいるね。ダメガネ。」

「メガネ関係ないでしょうがっ!」

「まぁ、銀さんの妹さん!妹さんだったなんて私知らなくて、とんでもないことを!だって髪の毛が全然違うんだもの。親の遺伝子はどこへ行ったのかしら。まさか血の繋がらない?なんでもいいわ、ライバルじゃなきゃ。初めまして。銀さんの妻さっちゃんです。」

『なんか色々失礼なこと連発してたけども、…銀時。結婚してたの!?なんだよ言ってよ、おめでとうー!!銀時がいつもお世話になってます。なんだよ、ストーカーじゃないじゃん。え、って事は神楽ちゃんは?』

「こんな天パの子供じゃないアルよ。それこそ遺伝子どこいったアルか。」

「ハゲの子供に言われたくねぇーよ。ってか名前、誤解だから。」

『そうか、そうか。銀時も結婚かぁ。あ、お祝いなにがいい?』

「人の話を聞けェェ!!」

「銀さん。この子いい子ね。名前さん?私の事はさっちゃんって気軽に呼んでね。私女の友達が欲しかったのよ。それも銀さんで語れる。でもライバルはいやじゃない?だから親族なら安心っていうかー。」

『あ、私銀時の妹じゃないけどね。銀時の話も盛り上がれる自信ないからパスで。でも、おめでとうー。』

「名前。人の話聞いてる?どこ見てる?俺の事見てる?しかもお前もさらっと失礼なこと言ったよ。でも俺は気にしない。俺の話さえ聞いてくれれば!だからお願い聞いて!おーい、名前ちゃーん。」

『うっさいな!!なんだよ!!』

「だから結婚してねぇーよ!!」

は?…もうすぐ結婚?と言えば違う!と肩を揺らされながら銀時が説明する事30分。つまりさっちゃんを助けてからなんだか惚れられちゃって。ストーカー行為を受けてて、妄想が激しくて結婚とか言ってるけども。本当は好きでも何でもないって事らしく。なんだそれ。

「その通りです!!俺は名前一筋です!!わかってください!」

『そこは本当どうでもいいや。でも、こんな綺麗な人もったいないよ。銀時は晋助みたいにモテないんだから今のうちにさ。』

「うるせー!なんであいつがモテるかが謎だ!!あんなの鬼畜でエロ杉なだけじゃん!チビだし目とかやばいしよォ!中二病こじらせたやばいやつだからね、あいつ!」

『この機会を逃すともう一生ないかもよ。天パだし。ぷーだし?なんか駄目駄目だし?ほら小太郎はあれはあれで面倒見がいいしさ、黙ってればそこそこ綺麗だけども。銀時は昔はよかったよ。でもほら、今目が死んでるし。』

「いざってときは輝くから!」

『万屋かお尋ね者って言ったら万屋かもしれないけども…。小太郎は人妻好きだし別に愛人とかでいいと思うけどさ。銀時はそういう性癖じゃないんだし今決めとけば?スタイルいいし。』

「冷静に分析しないでくれるかな!しかも性癖とか言わないで!」

もうそれ以上なにも言わないで!と涙目の銀時が訴える。あら。まじ泣きですか?言い過ぎたかな。なんて思ってたら、さっちゃんがいきなり立ち上がった。そうやって私をシカトするのね!いいわよ!のってあげるわ、寧ろ興奮するじゃない!とか顔を赤くしてなんか言っている。わぁオ。ドM初めて見た。

「銀さんはこんな変人嫌です!」

『えー、ピッタリだよ。銀時もSじゃん。相性バッチリ。まさに運命の相手なんじゃない?』

「どこがバッチリィ!?俺を四六時中イライラさせるんだぞ!?」

「はい、銀さん、あーん。」

「いてて。そこ目だから!!しかもこの揉めてるときになんで納豆を食わそうとするかな、てめぇは。」

「さっちゃんさん!メガネ!」

「メガネがないと何も見えないネ。」

『キャラ濃いなー。いやー、私江戸に大丈夫かな?やっぱ都会は怖いなぁ。田舎者にはびっくりな異常者が多すぎるよ。変装が得意で退屈嫌いでぐらいしかないよ、私のキャラ。こんな風になりたくないが。』

「名前さん。あなた銀さんのなんなの!?私たちの仲を邪魔する気!?」

『いきなりだな…。納豆向けないで、臭いから。確かにこれはイライラするね。銀時も大変なストーカーに捕まったね。』

「超人事だな。」

『だって人事だし。私は銀時の幼なじみ。銀時には小さい頃から面倒をみてもらってる。お兄ちゃんみたいな存在だよ。』

「お兄ちゃんねぇ…。」

「家族に当てはめられてる恋は実らないってテレビで言ってたヨ。」

「まじでか。こんなに心配してやったり、アプローチしてんのに気づかないのはやっぱり家族意識が高いからか。」

「まぁ、昔から一緒にいたらそんなもんヨ。ねえ、名前は銀ちゃんやヅラと育ったアルか?」

『?うん。寺子屋で仲が良かったのは銀時と小太郎、晋助だったから。ちょっとだけ戦争に参加した時も辰馬とかと一緒だったし。』

「名前は男に囲まれて育った分本当の男を知らないネ。こういう女こそ恋に気づかないアル。銀ちゃん…、名前は手ごわいネ。」

「まじでか。ってか何お前。いくつですか。ドラマの見過ぎですか?」

『ねぇ、何話てるの?』

「いや、なにも、」

「名前さん!貴方を私のライバルとするわ!せいぜい頑張る事ね!!」

さっちゃんの言ってる事の意味がよくわからなかったが天井からまたいなくなってしまったので、ほっておいた。ライバル視されても私達はただの幼馴染なもんで。でも厄介払いできたしいいや、と座れば新八くんが話を切り出す。

「名前さん。ちょっと戦争に参加してたってのは?」

『あぁ。うわ!!もうこんな時間!?結局観光いけてないし、今度話す!じゃあね。』

「おい、送ってく。原付エンジンかけっぱなしなの忘れてた。お前ら留守番頼んだぞ。」

『あ、じゃあ妙ちゃんの家寄って。お礼がしたいから。それじゃあねー。』

「ばいばーい。…どうなるか楽しみアル。銀ちゃんがんばれ!」

「?」

銀と書いてあるまたなんとも言えないセンスの原付に乗る。ヘルメットをかぶって銀時に捕まれば風が感じられて気持ちい。なぜか銀時から甘い匂いがした。昔から落ち着くにおいだったけどあのころとは違う。土や血や色んな匂いが混じったそんな香じゃないのに、銀時のにおいとわかる。

『…パフェ食べた?いい加減糖尿病になるよー。』

「あー!!聞こえませーん!!」

『うわ。絶対聞こえてんだろー。うわっ!!スピード上げないでよ!』

「…好きだ。」

『えー、なんか言ったー?!風と車まで全然聞こえないんだけど銀時!!』

「…しっかり捕まっとけよ!(お前はいつ俺の気持ちに気づくだか)」

銀時が原付のスピードを上げる。ぎゅっと回した腕に力を入れると銀時の鼓動がさらに伝わる気がした。とくんとくん、という鼓動に安心するのに不安になる。私はいつだって皆に甘えている。この関係を壊したくない、そうお互い思っていたことなんて知る由もなかった。


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