僕の好みは君なんだ

僕が初めて好きになった女の子。彼女は僕の理想通り、とはずいぶんとかけ離れている。光もハルヒみたいな豆たぬきが好きだし僕たち双子は理想とはかけ離れた人を好きになるみたいだ。なんだかなぁ。

『どうした、考え事?』

「まぁ、ちょっとね。名前について考えてた。気になる?」

『嫌、別に。』

「あ、そう。」

『今読書中だから邪魔しないでくれる。』

サラリと返ってくる言葉、そしてまた本に視線を戻す名前。庶民って皆こんなに冷たいのかな。第2のハルヒみたいだよ本当に。そりゃ僕だって本は好きだけど彼女といるときにする事ではない。

「ねぇ、出かけない?」

『えー、いいけど。馨どこ行きたいの?』

「うーん、そうだなぁ。普通にショッピング、かな。名前がショッピングか…微妙。」

『誘っておいてなんだとこのやろっ。私だってなー、女の子なんだから服とかにそりゃ興味はありますよ。失礼しちゃうよまったく。』

「え、本当に。」

『ハルヒよりましだから。』

そんな拗ねた事を言いながらも視線は本から外さない。名前も服に興味あったんだ意外すぎる。でもハルヒと比べられたら皆ましなんじゃないか。まぁ、彼女が乗り気になってくれたんだからいいか。

『でも服買うなら違うもの買うよね。もったいないしさ。機能的にズボンの方が楽だし。』

「服の優先順位が低いんだね…。なんで僕名前と付き合ってるんだろ。」

『好きだから?ってか本人の前で言うなし。』

「そりゃ、好きなんだけどさ。なんか自分の好みとまったく違うから驚いてるっていうか。」

『そんな事いったら私だって馨は好みじゃないよ。でも好みなんてすぐ変わるしさ所詮理想だし現実は違うでしょ。それに私は好きになった人が好みだと思うよ。現に今は馨が好きだし。だから今は馨が好みかな。』

今度は本から目線をあげてそのセリフって反則なんじゃないかな。やっぱり名前はハルヒとは似てないや。ハルヒよりずっとずっと好き。可愛いし、大事にしたいと思う。

「名前がハルヒに似てたら光は名前を好きになってたかもだし僕にとっては良かったのかな。」

『何の話?』

「僕も名前が好きだなって話。そうだよね、好みなんて所詮理想だし現実は違うものだよね。でも僕が名前を理想に近づけるのって結構ありじゃない?」

『俺色に染めてみせる、って?環先輩みたいな事言わないでよ。馨の好みに合わせるのは別にいいけどさ。』

「そのままの名前も好きだよ。っていうか僕が名前にワンピース着せたいだけなんだ。きっと似合うよ、ほら。」

だからショッピングいって僕が好きな服を着てみせてよ、と笑えば仕方ないから馨くん色に染まってあげましょう、と意地悪に笑う君。僕の好みは君なんだ。例えどんな格好でも好きなのは変わりない。





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