君に近づく一歩を
最近の自分はおかしい。それは自分自身一番よくわかっていたからなるべく皆にわからない様にと隠していた。だけど気を抜くと名前の事ばかり考えてしまう自分がいる。どうしよう、こんな事初めてだ。
「…はぁ。」
「どったの悠太。」
「え、なにが?」
「なにってため息。」
「嫌だな。お兄ちゃんはいつでも元気だよ。それより祐希、それは名前のお菓子じゃない。なんで君が食べてるの。」
「置いてあったから。」
自分の机じゃなく彼女の机に置いてあった、ということ位わかっている。だからきっと机のお菓子がなくなって泣きついてくるのも目に見えていた。今彼女にこられたら色々ばれそうで怖いのに。
『悠太ぁああー。あ、祐希!やっぱり犯人はお前か!ったくいつもいつも!』
「いつもいつも学習しない名前が悪いんだよ。ね、悠太。」
『なにその責任転換!あのね、私は私で学習してんだ。それは私じゃなくて千鶴のお菓子だから。朝一で盗んだから。』
「名前もなに堂々と泥棒してんですか。」
「あー、いつからそんな他人のお菓子を盗む子になったの。」
「いや、祐希くんは人の事言えないし。」
まぁ、千鶴だしいっか。なんて一件落着するこのたわいもない感じが好きだったりする。だからもし、もしも想いを伝えて名前が俺から去ってしまったら、それが怖いんだと思う。今のままがいい、なんて甘い考えだろうか。
『あ、要じゃーん。聞いてよ。また祐希がお菓子を、って悠太?』
「ん?どうしたの。」
『いや、どうって腕掴むからなにかあった?』
「え、いやっ。」
名前の声で我に返る。要に伸ばしかけていた腕を俺が掴んでいた。無意識だったそれは他の男には触ってほしくなかった、なんて…。声をかけられるまで全く分からなかった。どうしよう、だから今は会いたくなかったのに。無意識に好きが溢れる。
「袖に糸くず。はい、いいよ。(どうしようもないな、)」
『お、ありがとうー。本当に悠太はおかんだな、大好きー。』
「…、いいえ。」
彼女の何気ない一言にずきり、と心が痛みまた舞い上がる。もしも関係が崩れてしまってもこのままなにもしないのは嫌だった。話があるともう一度話した腕を掴む。?マークを浮かべて頷く彼女に想いを伝えよう。きっと今まで通りにいかなくて後悔する事もあるけどこの感情を塞ぐのはもっと後悔するから。今一歩踏み出した。
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