眩しい日差しに目を覚ます。見慣れない場所だ。そういえば昨日帰ってきたんだ。自分の国では到底着ないような民族衣装のような服をきる。こういう服は結構好き。自分の国ではできないことをせっかくきたんだから思う存分やってやる。
『でも一千万Gねぇ…。まぁ、なんとかなるでしょ。なんとかならなかったら、結婚するのもありかな。』
皆どっちかといえばイケメンだし。金も持っているし、普通国をもらえるなんねないしね。とりあえず25日間頑張ってその後のことはその後考えよう。身支度を整え簡易キッチンに行く。よくここに来て自分の国の料理を作っていたのだ。メイドさんに言っておいたので材料も器具も揃っている。
『(スチュアートとタイロンは知ってるから別にいいよなぁ。2人はお兄ちゃんって感じで婚約者とは思えないし。シャーク、カーティス、ロベルトの三人かな。今日はとりあえず、シャークにでも会いに行こうかな)』
ってことはお弁当は2個必要か。外国人って沢山食べるのかな?あっちから見たら私が外国人なんだけどさ。ウィンナーや卵焼きなど色々つめていく。料理は楽しい。自分が普通だって思えるし。ああ、本当に私って一般人なのにな。
『(じゃあ一応3つ作ろうかな。あ、姉さんは鍛錬所にいるのかな?じゃあ弁当作った方がいいかな。あ、じゃあライルの分もいるかな?そういえばロベルトはライルの知り合いっぽかったなー。今日もしいたらお弁当あげた方がいいかな。2人には渡してロベルトだけ渡さないのは…。未来の旦那になるかも知れない訳だし)』
色々考えた結果ロベルトの分もいれた数を作った。足りないより余った方がいい。材料が沢山あったので作りすぎた、という理由もあるが。弁当を覚ましている間にライルにもらった王宮の地図を見る。昔いたとはいえあまり覚えていない。それをたよりに鍛練場に行けばお目当ての人たちがいた。
『あ、ビンゴ。』
「名前、どうしたの?」
『おはよう、姉さん。ライル、ロベルト。』
「おはようございます、お嬢様。お嬢様も鍛錬を?私で宜しければ教えますが。」
『いや、今からんな事しても無駄でしょ。』
「おはようございます、プリンセス。いやぁ、ギルカタールの服も似合うっすねー。」
『ありがとう。ロベルトはやっぱりライルの友達なんだ。いるかな、って思って。』
「まぁ、認めたくはありませんがね。」
「誰が杖をプレゼントしてやったと思ってんだ。」
「人が呼ばない限り出かけないくせになにを言うんです。言っても来ないくせに。」
「わかってんなら呼ぶな!!もう俺はガキじゃねぇんだ!!」
『いつもこう?』
「私も実際ロベルトの事よく知らないのよ。よくライルに会いにきてはいたんだけどね。話す機会なんてなかったし。存在は知っていたけど。」
『そっか。まぁ、まさか婚約者候補になるなんて思わないもんね。あ、姉さん今日はずっと鍛錬所にいる?』
「わからないけど。スチュアートかタイロンを同行させようかと。」
『あぁ。私とはまったく逆だ。私はあの2人以外にいくつもり。あそこだけは結婚なんて考えられないんだよね。お兄ちゃんみたいな存在だし。』
「じゃあプリンセスは俺を選んでくれるかも知れないんっすね。」
『うん。とりあえず1人ずつ行こうかなって。今日はシャークの所に行こうと思ってる。なんか一番安全そうじゃない?』
皆してそうでもない、みたいな顔された。でも完全にカーティスは危なさそうだし。ロベルトはここにいるし。暗殺者とギャンブラーと医者。どれがいいと言われれば医者だ。まぁ、見た目は一番カーティスが普通なのだけれど。チェイカが近づくな、とかいうし。前途多難だなぁ。
『まぁ、悩んでても仕方ないし。って事で私は出かけるね。はい、これ。お昼に食べて。』
「わぁ!!ありがとう!久々の名前の料理。ずっと食べたいと思ってたのよねー。」
「お嬢様、あなたは本当に普通ですねぇ。いいお嫁さんになりますよ。ギルカタールには向いてませんが。」
『それは私が一番よくわかってるって。は、って事は姉さん。まだ料理できないの?』
「え、プリンセス料理できないんっすか?」
「うるさいわね。必要なかったのよ。」
『自由になったらどうすんだか。あ、はい。ロベルト。』
「…俺にもあるんっすか!?まさか、プリンセスの弁当が食べれるなんてっ。俺感激です!大事に食べますね!」
『んな大袈裟な…。対したものじゃないし、味の保証はしないけど。じゃあ行ってきます。』
「気をつけてくださいね。」
「プリンセス!同行待ってますね!」
ぶんぶん、と手を振るロベルト。なんだか可愛いなぁ。お弁当喜んでもらえてよかった。姉さんの妹ってことは実質身内だ。やっぱりギルカタールは身内に優しいね。さてさて、町に出てみたが私は8年ぐらいギルカタールには帰っていない。当然道も変わってる。なんとなくしかわからなーい。
『…ここはどこだろうか。でも病院は見えてるんだよなー。正面玄関がわからん。病院のへいだしたどればつくよね。あ、行き止まり。』
「あのー、どうかされましたか?」
『ん?』
「あのー、上です。」
『上?あ、本当だ。こんにちは。』
「こんにちは。なにか困りごとですか?」
上を見上げれば病室の窓から男の子がこっちをみていた。下でウロウロしている怪しい人に見られてるのか私。恥ずかしいな。でもまぁ、なんて美少年。可愛い、ちょっと病弱そうだけど。まぁ、病院にいるって事は病弱なんだろうな。せっかくだから道を聞こう。
『正面ってどっちですか?道がわからなくて。シャーク=ブランドに用があるんだけど…。』
「え、兄さんにですか?」
『兄さん?…って事は兄弟?まじかよ。(に、似てねえ!ってか弟のがタイプなんですけど!)』
「はい、そうです。僕、メイズって言います。」
ニッコリ笑ったメイズはスッゴく可愛いかった。シャークとはまるで似ていない。あの人どっちかっていうと柄悪いし。色黒だからそうみえるのかな。もしかしたら私と姉さんみたいに血が繋がっていないのかも知れない。まぁ、そんなことはいいのだけれど。
『私は名前=オラサルバ。』
「…オラサルバ?プリンセスですか!?でも、プリンセスの名前はアイリーンじゃ、」
『私アイリーンの妹なの。留学みたいなのしてて帰ってきたんだ。』
「そうなんですか!?まさかプリンセスだなんて!!すみません、軽々しくっ。」
『んなたいした物じゃないよ。なんか運がよかっただけ、みたいな?』
「そんな事ないですよ!凄いです!!プリンセスが目の前に…。」
『そんな純粋な眼差しでみないでっ。なんだかいたたまれなくなるから。』
まじで私運がいいただの少女なんですけどっ。んー、とりあえず中に入りたい。上見て話すのは首が痛い。塀の横に木があるのでよじ登る事にした。落ちたら目の前病院だし、でかい病院なので正面にいっては時間がかかる。中には行った所でメイズに会えるかもわからない。
「えぇ!?プリンセス塀を登きですか!?危ないですよ!!」
『大丈夫だって。外が暑くて弁当も心配だし。お腹もすいたし。よっこらしょ。あー、やっぱりスカートは動きづらいなー。』
「危ないですよ!プリンセス!!」
『ちょっと、メイズ。下がっててー。』
「は、はい。」
『はい、着地成功ー。案外落ちないもんだな。』
「姫さん!?」
『あ、おはよ。もうこんにちは、かな。』
「今どっから!!」
『窓。正面玄関わからんくてメイズが声かけてくれたから。木が丁度あったし登った方が早いかと。』
「だからって窓から入るか!?ここがメイズの部屋だったからいいものを…、いや逆によくねぇか?」
『まぁまぁ。細かい事はもういいんじゃん。』
「いや、細かくねぇよ。」
『あ、そうそう。お弁当作ってきたんだよ。メイズもどう?多めに作ってよかったー。』
「わぁ!!いいんですか!!」
そっからシャークが渋々お茶を入れてくれてお昼ご飯に。仕事は?と聞けば丁度オペが終わってメイズの様子を見に来たんだとか。こうして並ぶと凄く似てないけど仲は良さそうだ。のんびりとお弁当を食べる、なんてやっぱりここが最初でよかったかも。
「で、何しにきたんだ。同行か?」
『いや。今から砂漠とか暑いし。めんどくさいじゃん?』
「…姫さん。あんた取引する気あんのかよ。」
『まぁまぁ。なんとかなるって。』
「美味しいです、プリンセス。」
『よかったー。あれ、ってか病院食じゃなくていいの、メイズ。』
「たまには大丈夫ですよ。ね、兄さん。」
「たまには、な。で、本当になにしにきたんだ?」
『なにって、結婚するかも知れない人を知るのは大切な事でしょ。』
「兄さん!!プリンセスと結婚するんですか!?」
「い、いや。まだわからねぇんだ!!」
『そーそー。他にも婚約者候補がいてね。とりあえず1人ずつ会いに行こうと思って。』
「で、俺か。」
『一番安全そうじゃん?病院って。もし病院向かってる途中に殺されそうになって怪我してもみてもらえるじゃん。』
「いや、怪我しない方向でこようぜ。」
「プリンセス。ぜひ兄さんと結婚してくださいっ。」
「ぐはっ、メイズ!!」
『え、ごめん!卵焼きまずかった!!吐くほどなんて…。』
「いや、驚いて吐いただけだ。メイズ!!お前なぁ!!」
いい弟じゃないか。ってかなんでこんなに可愛いんだ。ドストライク?なんていうか、婚約者候補に入れたいんですが。寧ろこの子と結婚したい、と素直に言えば2人がご飯を吐きだした。ごほごほ、と咳き込む2人にお茶を渡す。
『きったないな…。人の作った弁当を吐かないでもらいたいんだけど。』
「だって、プリンセスがっ!!」
『顔が赤い。照れるなよ、可愛いな。』
「姫さん…。あんたロリコンだったのか。」
『違うんですけど。』
「そういえば姫さんって若いよな。」
「…じゃあ逆に兄さん。」
「なんだ、メイズ。」
「犯罪ではないのですか。」
『…キャー。』
「めっちゃ棒読みじゃねぇか!って俺はそんなに年じゃねぇよ!!」
『え、シャークいくつ?』
「いくつに見えてたんだよ。姫さん、あんた童顔か?」
『私の国は皆こんなもんだよ。きっと。多分メイズよりは年上だ。』
「じゃなきゃ俺は困る。」
『メイズ。もし婚約者候補が全部嫌だったら私メイズにするから。よろしくね!きっと幸せにするよ!』
「プリンセス!?」
「誰がやるか!!」
『シャークはブラコンっと。いやぁ、これはマイナスかなー。』
「姫さん!?なにメモってんだよっ。」
『でも、まぁこんな可愛い弟がいたらブラコンにもなるわなぁ。』
「いや、まずブラコンじゃねぇよっ。」
えー、ブラコンだろ。空になったお弁当箱を2人から受けとる。こんな結婚生活も悪くない。ああ、そっかなるほど。シャークと結婚したらもれなくメイズがついてくる。なんだその素晴らしい結婚。
「オマケみたいに言うなっ。」
『いや、むしろメイズがついてくれないと嫌!!』
「それはそれで俺が否定された事にならねぇか?」
「ふふっ。なんだか楽しいですね。」
『そ、よかった。』
「プリンセスがお姉さんだったら楽しいでしょうね。」
『そこはお嫁さんにしてよ。』
「姫さん、さっきからオバサン化してるぜ?セクハラみたいだ…。」
『…確かに。ってかまぁ、取引に勝つ事も考えないとね。取引に勝ってもギルカタールにいるのもありだよね。』
「本当か?帰りたがってるように見えたが、」
『まぁ、考えの一つとして。知り合った以上、皆と離れ離れになるのは嫌だよね。』
きっとこうやって考えるのもライルには計算のうちに入っているんだ。で、ギルカタールに残ったらライルの思う壺なんだ。帰りたい、でも帰れない。その帰れない、がいつ帰りたくない、に変わるのか。
『ちくしょー。いつかあの眼鏡わってやる。』
「ひ、姫さん?」
『まぁ、これからよろしくね。』
「あぁ。」
「もちろんです。またきてくださいねっ。」
『…シャーク。持って帰っていいですか。』
「駄目だ。」
けちー、と文句を言う私と笑うメイズ。ちなみにその後病院を案内してもらった。シャークの部屋は病院の一室らしい。怪我したらすぐ呼べよ、と頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。なんだかタイロンみたい、と思ったのは秘密だ。面倒見がよいのだなシャークは。