朝早く起きて船の上で歌う。私の歌には防御効果があるからだ。最近は平和だし体調面も考えてこうして能力を使って歌うことは減ってしまったけど。それでもこうやってたまには能力を使う。大証も体調ももう関係ないのだし。振り返ればレガーロ等が朝日にキラキラと輝いていた。
「今日もいい美声だったな。名前が歌うと身が引き締まる。」
『あら、ダンテ。なんだか会うのが久しぶりな気がする。』
「まぁ、そりゃあお前たち若いやつらはラブゲームとやらを楽しんでいるからな。俺は一人寂しく仕事をしてたんだ。」
『そのセリフ凄くおやじくさいよ。そこまで変わらないじゃない。』
「かわるわ!」
『それにラブゲームだなんてやめてよ。私がちんたらしているのが悪いのかパーパとマンマが最近やたらしつこく聞いてくるのよね。なんなのあれ。』
「あー、この前ファミリーに遊びに来た他国の領主がいるだろ。時期領主の挨拶回りっていうことで若旦那とその奥さんが来たんだが。」
『ああ、来てたらしいね。私は丁度外交問題だったんだっけ。』
確かあの日は歌姫に会いたい、と向こうも言ってくれたがたまたま海賊が現れて。珍しく暴れられるぜ、と私とフェイとライが突っ込み、それにリベルタが加勢。港がぐっちゃぐちゃになってルカとノヴァの怒られたのは新しい記憶だ。いや、まじで平和すぎて暇。
『平和なのはいい事なんだけどねぇ。いかせん退屈なのよね。』
「まぁ、今までの名前の経歴を考えたらな。島を飛び回って敵と戦って施設の子供を助けデータを取り。島を潰し、敵を煮るなり焼くなり、ちぎっては投げちぎっては投げ。」
『そこまでしてないよ、多分。』
「本当か?」
『う、ダンテだって昔は暴れてたんでしょうが。』
「昔の話さ。おまえさんは女なんだからあんまり怪我するようなことはしてほしくないんだがなぁ。」
『今更じゃないのそれ。私以上に第一線で動いてる奴いる?ダンテ達幹部を抜いたら次に戦えるの私たちくらいだったし。まぁ、今はリベルタやノヴァ、お嬢様にも任せられるけど。』
「そうだな。成長しすぎて俺は年をとったと最近感じるんだが。まぁ、俺も今では成長しているへ、へ、せいちょーん!ダーンテな!」
『ごめん、全然わからなかった。』
「どうしてだ!成長とくしゃみのへっくしょんをかけてだなぁ!こういうのは説明したらギャグとして成り立たないんだぞ名前。」
『ギャクの腕は成長してないってことよ。寧ろ後退してるんじゃないの。というか話がそれ過ぎよ。』
そういえばそうだったな、なんて豪快に笑い始めるダンテ。成長というかおじさん化がやばいぞ。おもむろに内ポケットから出した一枚の写真。それを渡されてみれば天使がいた。くりくりの目にふわふわの髪。小さな体と満面の笑みでパーパの膝に座ってる。なんだこれ、くっそ可愛いな。
『パーパの隠し子!?私も会いたい!抱かせてほしい!ずるい!』
「そんなものがいたらスミレに殺されているんじゃないか。その新しい領主の子供だ。レガーロを見せてあげたいと連れてきてくれてな。まだ3歳くらいだったか。名前のステージも見たいと言っていたんだがな。」
『呼んでくれたら海賊なんてほっといて行ったのにっ。どうして私を呼ばなかった!』
「お前は本当に年下に目がないな…。そうやって荒ぶると思ったし仕事だし呼ばなかったんだ。それで意味は分かるな。」
『この子を私にくれるというのですね。ありがとう、大切に育てます。これこそ光源氏物語!私好みの子に育てるわ!』
「馬鹿かお前は!孫が欲しいという事だ!」
『は、誰が。』
「モンドとスミレだ。」
『話がめっちゃ飛ぶなあの人たちっ。つまり私に産めと?』
「話が早いな、名前。」
『大事なこと言っておくね。私が生んでも孫じゃないよ。』
「自分の子供は可愛い。まだ年も若いし結婚はまだいいだろう。しかし孫は見たい。そういうえば名前のラブゲームは進んでいるのか。そうだ、あの子が産めばいいじゃないのよ、とまぁこんな感じで2人で盛り上がっていたぞ。」
納得いかないんですけどぉおお。しかしキャッキャと盛り上がる2人が目に浮かぶ。どうりで最近どうなの、進んでるの、と聞いてくるわけだ。ここだけの話だが急に休みを上げるから旅行に行って来いと言われて喜んだんだけど。
「いいじゃないか。」
『それがあきらかにハネームーンで行く定番の国でチケット見たら怪しい2人部屋だったの。明らかにこうことに至りそうな怪しい。お1人様不可ってかいってあったし。何をさせる気なんだあの人たち!』
「出来婚は…、どうかと思うぞ。」
『マンマとパーパに言ってよ!』
「これもそれもはっきり言わないからだ。悩むのもわかるが名前らしくないな。いつもならもう少し早く決断するだろ?ルカにも相談したそうじゃないか。そうしたらもう決めるもんだと俺は思っていたんだが。」
『よくご存じで、年の功?』
「小さい頃から見ていたからなぁ。悩んでも心のどこかで決めていて、ルカやデビトやパーチェに相談して背中を押してもらったらそっからは早い。お前たちはそういう仲だろ。昔っから仲が良くていいバランスでできていると思ってた。」
『決めたのよ。』
「ここにいるってことは誰も選ばなかったのか?」
『それがダンテの予想?』
「いや、ジョーリィーがな。今の役職に名前と名前の部下は不服で退屈を持て余しているから誰も選ばず島を出るという選択肢もあるかもと。ファミリーを抜けなくても外部からとな。」
『それも最初は考えた。今までウロチョロしてたからどこかに身を固めるのってどっか違うかなって。』
「じゃあ島は出ないのか。」
『ダンテがパーチェに幹部の座を譲ろうと思ってる中、パーチェは領主になることに悩んでる。他の皆だって島のために将来の事考えてる。だから私も力を生かしてこの島のためになにかしたいって思ったらここにいるのが一番かなと。皆の成長も見たいしね。アッシュもまだまだファミリーに慣れてないし。』
「なるほどな。じゃあ、このままか。」
『いやね、ちゃんと決めたわ。私はその人を愛して、一緒に島を守ると。』
「本当か!?」
にっこりとほほ笑めばダンテが嬉しそうにする。ルカの言った通り誰を選ぼうが皆応援してくれて私たちファミリーの絆は変わらないだろう。だからこそ私は絆を深めるためにその人を選びこの力とファミリーと島のために生きていきたい。誰なんだ、そう聞くダンテに私は言う。その名を口にすればのその人との未来が見えた気がした。ずっとこの島で幸せそうに笑う。物語は始まったばかりなのだから。