マンマの一言から始まったゲームもようやく1人1人とのデート?が終わった。今考えるとこれってあり得なくないか。なんで私がこんな複数の男にっ、と考えるだけで頭痛がしてきた。しかも奴らときたらこれからどうするか、なんて提案してきた。そりゃ一周回ったくらいじゃわからないけども。
『もう二週目にいく気力がない。』
「だからここのところ部屋に引きこもって書類仕事ばかりしているんですね。それでもいつか捕まりそうなものですけど、よく逃げてますね。…あなたの部下たちはよく見るのはもしかして、」
「名前が会いたくないっていうからよー。俺たちが手分けしてお前らの行動を見張ってるわけよ。」
「それで鉢合わせないように私が調節してるわけです。こちらには鼻の利く犬もいますからね。名前様の能力もありますからなにかあればすぐに知らせてます。」
「俺は犬じゃないんですけど!でもそんなにやなら断っちゃえばいいのにー。」
「全くだな。ファミリーに恩があっても別に結婚まで強制できねぇだろ。大体自分の娘の時もそうだけどやり方がワンパターンなんだよ。そもそもお前が命を大事にしないのが原因だけどな。」
『ライ、ごもっともだからそれ以上言わないで…。』
「スミレ様に恩義があることは重々承知ですが、あまり過度なことは断ってもいいかと。それに名前様の夫となるということは私たちにも大きくかかわります。私が認めた男でなければ許しません。」
「フェイさん、ルカさんみたいだよ。」
「はっ、変態従者だな。」
「ライ!私ここにいるんですけど!?」
「私はルカ様ほど優しくはないですよ。邪魔者は排除するのみです。」
「目がマジだよ、名前さん。いいの?」
まぁ、こいつなら本気でやりかねないけど大丈夫だろ。私の命令とあらば聞くし。そもそも誰も結婚するとか言ってないし。確かにフェイは昔より小言が多くなったけどそれは私が無茶するせいだからなにも言えない。とりあえず案件を3人に振り分け外に出す。ようやくルカと2人になったところで溜息をつく。苦笑いをしながらも紅茶をいれてくれるあたり、ルカはやっぱり優しい。
『避けてるわけじゃないんだけど…。』
「わかっていますよ。名前にだってゆっくり考える時間が必要です。その辺はデビトやパーチェも大人なので話し合ってましたよ。きっと皆の違う面がみれて思うところもあっただろうから、少し時間をおいてまた1人1人アピールしていこう、と。」
『あの駄目な大人組が!なんだか意外。』
「まぁ、案の定そのあとに俺に惚れるのは時間の問題だけどなァ、とか。俺なんかもう身内に紹介したからね!とか大人げない口論を繰り広げ。アッシュが俺はキスしたぜ、と勝気な態度をとりノヴァとリベルタは悔しがって喧嘩してました。」
『やめてー、これ以上醜態をさらさないでぇー…。』
「うまくいかなかったんですか?」
『うまく…、はいったと思う。皆の思いとか、知らない面とか色々わかったし。仲間とか家族って思ってたけどやっぱり男なんだな、って意識したし。』
「それはよかったですね。」
『よくないっ!』
このゲームはそういう目的でしょう、と呆れるルカ。そうなんだけども…。私が望んでいたのはこういうのじゃなくてっ。ルカが運んできてくれたアップルパイを見て自己嫌悪に落ちる。私だって今思えばのりのりでお菓子やいたり、抱き着かれたりしてたし。隙だらけだったよな。キスぐらいで大げさな、とか発言しちゃってるし前に。
『自分が阿婆擦れに見えて仕方ない。』
「そんなこと思ってたんですか、貴方。」
『そんなことって何さ!だっておかしくないか!お嬢様ならともかく、権力も美貌もない私にファミリーの有力者がここぞってアプローチするってなんだよっ。もうドッキリなの、って疑いたいくらいだわ。』
「あなた権力も美貌もあるじゃないですか。名前をこの島で知らない人はいないんですよ。もっと自信を持つべきです。」
『歌姫とか呼ばれてるけどね、私の歌なんて少しうまい程度ですよ。あそこまで人を引き付けるのは能力のおかげだって。そういう効果もあるんだって。美貌なんてメイクと若さでどうにかなるし。数年後枯れたアイドルですよ。アイドルじゃないけども。』
「酒でも飲んでます?」
『酔ってないよ!ただどうしてこんなにももててる理由が不明です。』
「名前は昔から素敵な女の子ですよ。もっと自信を持ってください。それに貴方の歌や権力、美貌だけじゃない。自分の命をなげだしてでもファミリーを守るとことか、心配だけどその姿勢。心意気とか内面の美しさに惚れてるんですよ。」
『理解しがたいっ。』
「そんな苦虫を潰したような顔をしなくても…。貴方は本当に欲がないんですから。」
『私は皆といれるだけで満足だもん。それ以上望むなんて。』
しかもあの中から1人を選べなんて。私は変わってしまうことがこわいんだ。誰か1人を選んで、他の人と距離ができてしまったら。リベルタやアッシュを選んだら島を出るかも。パーチェも領主だ。この館をでたら関係が変わるかもだ。ノヴァやデビトだってそれぞれ考えがあるはずだ。
「名前が心配するようなことはありません。そんなことで絆が壊れるファミリーではないですよ。そうでしょう?」
『…そうだね。どうしてルカは私が悩んでるとわかるの?』
「名前はわかりにくいけどわかりやすいですから。それに一応幼馴染最年長としてあなたたちを見守ってきましたからね。それくらいわかりますよ。」
『ルカちゃん、アップルパイうまいです。』
「それはそうですとも。お嬢様のために丁寧に作りましたかね!でもリンゴは名前に頂いたものですから。リンゴがよかったのかもしれません。」
『私ルカと結婚したらよかったのに。』
「ぶっ!ななななななにをっ!」
『なんだかね、皆と付き合うとこまでは想像できても結婚までは想像できないんだよね。皆ドキドキしたり心動いたりして恋かな、って思ったんだけどさ。ルカはいつも洗濯とか料理とかしてるからなんか結婚後が想像しやすいっていうか、』
「それ私完全に主夫してるじゃないですか!」
『え、お嬢様と結婚しても家事はやるでしょ?』
「当たり前です!そもそもお嬢様と結婚だなんてっ!そんな大それたこと、」
『え、手を出してないの。』
「何てこと聞くんですか!」
あんなに一途に思ってるルカでさえお嬢様に手を出してないなんて。私なんて1日でキスまでいったよ。ああー、本当どうかしてる。いや、ルカがヘタレなのか。でも確かに友人として成立してるのにおしゃべりからはいってたらすごく時間がかかってしまうのだけど。本当にビッチか、自分。キス程度されどキス。ううーん、それ以上は絶対NGだけど。
『そういうの皆わかってないよねぇ…。今考えると私結構ほいほい2人きりになってるし。そういう目で見てなかったからなぁ。』
「あなたって案外ピュアですよね。」
『だからなんで私ってそんなに遊んでるイメージがあるのかなっ。小さい頃から仕事一筋の真面目な子ですよ。』
「わかってますよ。でも、いつも飄々としてるのでなんだか意外なんですよね。皆キス位じゃ動じないからその、…それ以上の事をして意識させようとしてるのでは?」
『好きって言ってくれてもさ、向こうだってこれが恋心か見極めるみたいなところあったじゃん。まぁ、一週目でそれを認識させちゃったわけだけど。そんな簡単に手を出せるもんなの?男って。』
「私に聞かないでくださいよ!どうして貴方とこんな生々しい話をしなくてはいけないんですかっ。」
『だって今のこの関係の中でルカぐらいにしか聞けないでしょうよ!私が案外ピュアだとしてもお嬢様よりは汚れてますよ!そんな処女で可愛いいたいけなお嬢様にこんな質問をしろと!』
「ごめんなさい、やめてください。そもそもしょ、…してないとか大声で言わない!お嬢様はそりゃあとても繊細で美しいそういうことを一切しない天使なんですから!」
『おい、それやっぱり私を阿婆擦れだと言いたいのか。そしてお前はその発言をしたからには一生お嬢様に手をだすんじゃねえぞ。』
「そんなっ!」
『自業自得だ!悟りでも開け!』
大体自分の部下に相談すれば?と言われたが溜息しか出ない。奴らになんか相談できるか。能力を使う事もこの島のファミリーになることも快く思ってない。そして私がこのゲームに参加すること自体反対なのだ。しかもあいつらの女経験といったら来るもの拒まずが2人とリベルタ並みにピュアな奴1匹だ。
『参考にもならん。』
「まぁ、もてそうですしね。でもあなたの部下になってからそういう女関係は断ったとききましたけど。」
『この島ではやめてくれって言った。旅先で一生会わないような女の子とワンナイトラブなら可。全責任自分持ちで避妊絶対ですが。』
「それもどうなんですかっ。こほん、とにかく相談してくれたのが私でよかったですよ。」
『そうでしょうよ、案外ルカは普通ですからね。』
「褒めてるんですかそれ。」
『相談するにはいい相手だと思ってる。お嬢様がかかわらなければ口固いし、親身になってくれるし。それで、どうですか。』
「どうって?あー、手を出すか出さないかですか。私なら手を出すならそれなりの覚悟がいります。その子を大事にしようと思って、一生大切にしたいですね。」
『…重いよ、ルカちゃん。』
「あなたが聞いたんですよ!大体デビトのように軽く扱われたら嫌でしょう!」
『そりゃそうなんだけどさ。一線は超えないつもりだけど、そうやって思われたらますます二週目行きづらいわぁ。でも、皆真面目に考えてくれてるんだから真面目に考えなきゃだよね。』
「そうですよ。何度も言いますけど貴方が誰を選ぼうと私は貴方の味方です。それにファミリーの絆はそう簡単には壊れません。きっとうまくやれますよ。だから名前にできることは真剣に1人1人と向き合って自分の心に素直になることです。誰が好きなのか、はたまたこの中にはいないのか。見極める、大切なゲーム。」
『ゲームっていうと軽く聞こえるけど、そうだね。ありがとうルカ。』
「いいんですよ、一応相談役と仲裁役なので。」
あなたの幸せを願ってますよ、とおでこにキスをされる。昔私が落ち込んでた時よくやってもらったな、となんだか嬉しくなる。なんで私の初恋ってルカじゃなくてデビトなんだろ。ああ、お嬢様のところに行っちゃったからか。あの時側にずっとルカがいたら変わってたのかもしれないな。優しくて、いざって時には頼りになるルカにいつまでも私は甘えている。敬愛を表して私もおでこにキスを返した。