ノヴァ、アッシュ、リベルタのピュア組が終わってしまった。年下の可愛い3人が終わればもう後は私自身のどうでもいい。後に残るのは幼馴染だし、今更知りたい事などない。恋愛対象になるかどうかなんて判断はぶっちゃけ難しい。というかあまり考えたくない。
『だって今まで兄妹同然で育ってきたというか…。』
「俺は名前みたいにいい女だったらいつでも大歓迎だぜ?」
『あんたのそういう台詞はどこの誰にでもいってそうで嫌なんだけど。』
「そう拗ねるなよ。他の女に嫉妬するのも可愛いけど俺はお前しか見てないぜ?」
『わー、嬉しいなぁー。』
「棒読みすぎるだろ。まぁ、確かに俺達はお互いを知りすぎてるけどな。ルカがバンビーナの所に行ってる間は俺とパーチェで名前の面倒を見てたし。パーチェよりも俺とるつるむ方が多かった。」
『まぁ、その分こうして若干不良娘に育ったわけですよ。』
「俺に比べれば名前はいい子ちゃんだけどな。」
『そうかなぁ。』
昼から酒を飲む、カジノをやる。少しのサボり癖とマイペース。デビトと一緒に居て学んだ事は多く、今の私の生活リズムもそこから来ている部分はある。裏の仕事だってデビトの影響であり、人を殺すのも騙すのも仕事ならと割り切った。
「ルカとパーチェは俺みたくなってほしくなかったんだろうけどなァ。」
『仕事なら仕方ない。それに誰かが代りにやる位なら私がやった方がいい。デビトも同じでしょ?私はね、そんなデビトの姿を見て少しでも負担が減ればいいと思ってやったんだよ。』
「俺はお前に殺しなんかさせたくなかった。この綺麗な手を汚したくなかったんだぜ?」
『この能力をもったときからそんなのは覚悟できてる。それに昔よりここのほうが居心地いいから。この場所を守れるためなら私はどんな犠牲だってかまわないよ。』
「そういえば名前の昔の話はあまり聞いた事がねえな。マンマと同じジャッポネから来た、っていうだけで。マンマも色々ありそうだからなァ。」
『あら、聞きたいの?』
「あぁ、これはそういうゲームだろ?お互いをよく知って深く繋がる。俺はこの島に来た時からの名前なら誰よりも知ってる。だから誰も知らないお前を知りたい。」
『確かに過ごしてきた時間で言えばデビトが一番長いからね。』
「だろォ?それはつまり俺達がお似合いって事だ。」
にやり、と笑って距離を詰めてくるデビト。彼の部屋で昼間から酒を飲んでる私達は不健全だ。しかしデビトが近くに来た事でもっと不健全になった。高級そうな革張りのソファが軋み、沈む。デビトの吐息と共にワインの香りがする位近い距離。
「キスは、アリなんだろォ?」
『あんたとのキスはなし。』
「差別はいけないだろ。」
『それだけで終わる気がしないから。デビトの部屋に呼ばれた時からいい予感はしないんだから。』
「こりゃ手厳しいねぇ。最近ご無沙汰だろ?ちゃんと気持ちよーくしてやるぜ?」
『結構です。』
「じゃあこんないい雰囲気の中なにしろってんだ。過去の話でもしてくれるのか?」
『私の過去なんてつまらないから聞かなくていいよ。』
「ほらな、言うと思ったぜ。名前はなんだかんだ秘密主義だからなァ。」
『そんなことないでしょ。デビトが一番私を知っている。』
「能力使うと寿命が縮むのも、それをかえりみず島救おうとしてぶっ倒れた事。彼氏がいて海賊だったこと、他にも俺達が知らない事は山のようにあるはずだぜ。」
『それは…、うん。でもデビトだって一々付き合った女性を私に報告しないでしょ。それと一緒だよ。』
「俺は愛に生きるレガーロ男だからな。お前が知りたいなら教えてやるけど?」
別に知りたくもない。つか、一日で足りるのだろうか。手からワインを奪われデビトを見ればキスがふる。デビトのキスは深く、情熱的なものだろうと思っていたのに降るキスはどれも可愛いものだ。ただ触れるだけのキスが唇や頬、首、色々な所に落とされる。
『…デビトっぽくない気がする。』
「お前は俺をなんだと思ってんだ。名前は俺達の中で大事な女だァ。だから俺も大事にしたい。」
『それは、…ありがとう。』
「別に付き合えなくてもいい。俺はこの通り女にだらしないし、綺麗じゃねえ。汚い事をやってきたのはお前が一番よく知ってるだろ。巻き込んじまったのも悪いと思ってる。島のためとはいえジジィは嫌いだ。だから俺の側にいなくても名前が幸せならそれでいい。」
『そうなの?』
「…本当は俺のそばで笑ってるのが一番だ。でも俺にはそんな資格はねェ。きっと危ない目にあわしちまう。だけど名前が近くに居ないのは落ち着かねえ。」
『矛盾してるし我儘だよ。』
「ああ、俺は昔からそうだ。ないものねだりするただのガキだ。只名前がこの島で元気で過ごしてくれればそれでいい。それを引きとめる手段がこのゲームだったから参加しただけだ。」
『…私の事好き?』
「ああ、愛してる。」
そういうデビトは今にも泣き出しそうな子供のように見えた。いつもそうだ。彼は大人びていて、遊んでいても他人をどこか寄せ付けない。人の見えない所で辛い事をし、皆を守っている。ぎゅう、と抱きしめて背中を撫でる。大きな子供みたいな人。
『デビトは甘えるのが昔っから下手だけど私には甘えてくれるよね。』
「なんでだろうな。昔から名前の側だけは安心してよく眠れる。」
『側にいてほしいの?』
「…ああ。誰のものでもいいからこの島に居てくれ。じゃないと眠れねェ。」
『あのね、デビト。私をここまで強くしてくれたのはデビトだし、ずっと側に居てくれたのもデビト。だから私の初恋はデビトだし、きっとなにかあって頼るのはルカとかパーチェだけど本音とか、愚痴とかさ。最初に話したいのはデビトなんだ。』
「それは愛の告白かァ?」
『まぁね。私もデビトの事好きだし。家族みたいなもんだけど、それも愛でしょ?デビトが望むならずっと側にいる。眠れるまで子守歌を歌うし、こうやって抱きしめてあげる。』
「俺達のこれは家族愛なのか?俺は家族がいねぇからわからねェ。ただわかるのは名前が大事で、ずっと俺にとって必要だって事だ。愛しい気持ちに偽りはねェ。」
『それって愛の告白かも。』
笑う私に今度は深いキスを降らす。それから解放された後のデビトはいつも通りの顔に戻っていた。ああ、これでこそデビトだ。私も今ので分かった事がある。私達はお互いが近く仲がいいしなくてはならない存在だ。どんな形であれ、側にいてほしい。
「これが恋って奴かァ。」
『デビトが言うとなんだか気持ち悪いし違う気がする。なんだか私達の場合近く過ぎてわからないよね。』
「まぁな。でも名前が他の誰かとくっついてたらむかつくんだからこれは立派な独占欲だろォ?」
『うーん、そうかな。』
「まぁ、昔から俺達幼馴染にとってお前は特別な存在だったからな。昔は誰が結婚するかとかで揉めたけど…。なんだか現実味がわいてきた。」
『え、待って。結婚するデビトとか想像つかないんだけど。』
「俺の嫁になる奴が酷い台詞だなァ。」
『私あんたのファンに殺されないかな。レガーロ一のモテ男の彼女とか怖い。』
「レガーロ一の歌姫なら皆納得するだろ。お似合いのカップルだなァ。」
『まぁ、まだそうなるとは限らないし。』
「ククッ、なに言ってんだ。俺にこの感情を気付かせたんだぜ?今までは冗談半分だったかも知れねぇが今ならわかる。俺が本気出すからには他の奴に負ける訳ねえだろ。覚悟してろよ。たっぷり可愛がってやるぜアモーレ。」
楽しそうに笑うデビトはなんだか昔の無邪気な頃と重なった。デビトが楽しそうで何よりだけどその矛先が自分に向いているとなると微妙だ。なんだか一番厄介な奴を覚醒させてしまったかもしれない。デビトに向ける愛は確かにある。私はそれが家族愛なのか、特別な愛なのかまだわからない。でももっと知り、彼に触れたいと思った。