愚者と冒険
今日はリベルタと交流の日。リストランテで待ち合わせ、と言われまっているがこない。あれ、私すっぽかされたのかしら。あの、リベルタが?あり得ない。だとすると忘れているか、なにか事件に巻き込まれたか。口ずさんだ歌で鳥達に捜索を頼み案内してもらう。ついたのはなぜか森だった。

『…勇者リベルタくん。こんな所で冒険ですか?』

「名前!?なんでこんな所にっ、つかごめん!俺すっげぇ待たせてたよな!?」

『そこまで待ってはいないけど、なんで崖の下にいるの。』

「あ、はは。ずりおちて怪我しました。」

『上がれないのね。』

「すみません。」

別に謝ることないのに。これが幼馴染3馬鹿だったら怒りの1言くらいあったけど。可愛いリベルタが崖に下に落ちて怪我をしているなんて心配しかない。しかし今日のデートは忘れていなかったのにどうしてこんな森の中で怪我なんてしているのだろうか。

『理由はあとね。とりあえずそっち行くから。』

「ええ!?名前まで怪我したらどうするんだよっ。俺は大丈夫だから、」

『もう来ちゃった。』

「あー、もう。こんなカッコ悪いとこ見せるつもりなかったのに。最悪だ…。」

『まぁまぁ、こっから挽回していけばいいじゃない。』

「できっかなー。」

『私はリベルタとのデート楽しみにしてたけど?』

「デッ、デートかっ。そ、そうか!」

顔を赤くさせ慌てる彼は相変わらず可愛い。こういう疎いとこを見るとノヴァやアッシュの方が大人っぽくみえる。なんだかデビトの隣にいた私からしてみては新鮮でいい。遊び慣れてるより純粋でピュアな方が私も素直になれる気がした。動物をもう一度呼び、軽く応急処置と崖から助けてもらう。

『はい、皆御苦労さま。今度食べ物を持ってくるわ。』

「…いつみてもおとぎ話のようていうか。なんだっけ、白雪姫?そんな感じだよな。」

『それは白雪姫に失礼だよ。私は苛められたら倍返しちゃうし、王子様がきてもなびかないよきっと。』

「でも雪のように白い肌、綺麗な黒髪。歌はうまいし、料理も上手だし。お姫様みたいに綺麗だ、って何言ってんだ俺!」

『じゃあ勇者様が迎えにこないとね。それでリベルタはどうしてこんな所にいたの?幸い足を少しくじいた程度で済んだけど、結構森の奥だよ。』

「ああ、そうだった。今日はちゃんと名前に楽しんでもらおうとプランを考えたんだ。俺と言ったら海!だろうけど実は色々探検してっから島には詳しいんだ。」

『そういえば家の屋根を走って警備してるって聞いた。』

「そ、それはなんというか、」

『別に怒らないよ。上から見下ろした方が周りの状況は見やすい。それに人も物もないから動きやすいしいいと思うよ。まぁ、落ちて物を壊したりあまり暴れるのはよくないけどね。ノヴァは絶対にしないでしょ。だからノヴァは下から、リベルタは上から警備したら丁度いいじゃない。いいコンビだよ、君たち。』

「ノヴァといいコンビって言われるのは釈然としないけどよかった。なんか名前に褒められると嬉しいな。そうそう、それで名前は昔いたとはいえこの島もかわっただろ?それに皆が知らない穴場スポットもあるから案内しようと思ってさ。」

『それで山の奥に?』

「昨日夜雨が降ったから。だから朝早く起きて最終確認してたらずるっと…。本当にごめん!」

無事ならそれでいいよ、と頭を撫でると少し顔を赤くしてほほ笑んでくれた。ああ、まじで可愛い。でも森を探検に捻挫はつらいと思ったら、さっき動物を歌った時のおかげかリベルタの回復力が早いせいか普通に歩けるようだ。走ったり暴れたりはできないけど。

「さすがに暴れねーし。でも屋根の上の警備も見せてあげたかったなぁ。」

『まぁ、機会はいくらでもあるじゃない。じゃあさっそくどこに行くのかな。』

「森に用があるのは夕方だから先に町だな!お昼食べてショッピングでもしようぜ。それから軽く晩御飯を用意して森に来る。なにがあるかはお楽しみつーことで!」

『わかった。じゃあとりあえず戻りますか。』

「なぁ、1つ我儘いってもいいか?」

『なあに?私にできる事だったらどうぞ。』

「ノヴァは小さい頃よく名前にお菓子を作ってもらったって言ってたし、アッシュはこの前アップルパイを食べたって言ってた。だから俺にもなにか作ってくれないかなー、って。」

『それは勿論いいけど、』

「本当に!」

『そこまで喜んでくれるほどいい物作れないよ。絶対ルカの方が美味しいし。』

「ルカから貰うのと名前から貰うのだと意味が違うし。名前が作ったものなら全部うまいって!」

『そういう事さらりと言えるのにね、リベルタは。』

「?」

『なんでもないよ。リベルタはお菓子より辛い物がすきだったよね?じゃあ晩御飯を私が用意するよ。せっかく森に来るなら夜のピクニックみたいで楽しそうだし、お弁当作るわ。動物達にもお礼のおすそわけしたいから。』

「やった!今から楽しみだ!じゃあ俺も一緒に手伝う。早く町に行って色々しなきゃ、時間が勿体ないからな!」

『こら、絶対安静ー。』

文句を言うリベルタの手をとって歩きだす。照れたのか急に黙りこむリベルタに思わず笑ってしまう。たまにもっと恥ずかしい事するくせに。その後はお昼食べて、ショッピングをして。自分じゃあまり行かないような店も入ったり話したり。リベルタは顔が広いのか皆が話しかける。

『凄いわね、リベルタ。』

「えー、でも名前には負けるだろ。歌姫は俺より顔が広い。」

『そりゃ話すけど、私の場合一方的に知られてるって感じでこんなに親密じゃないし。それにリベルタは年齢問わず、って感じ。』

「やっぱり勇者リベルタのおかげだな!」

『リベルタの人柄のおかげだよ。』

「そんな事言ったら名前もだろ?俺はアルカナデュエロの時も凄く励まされた。おかげでちゃんと能力も使えるようになったしお礼をしたかった。でも名前倒れた時、俺はないもできなくて…。」

『そんなことないよ。皆に助けてもらった。』

「それじゃあ駄目なんだ。名前の人柄で皆助けたい、って思うのはいいことだ。でも俺は好きな女は自分で守りたい!」

『…えっと、ありがとう?』

「え、うわぁあああ!今は忘れてっ、」

『忘れていいの?』

「いや、駄目っ。ほ、本音だけどああもう!もっとカッコよくいうつもりだったのに、俺の馬鹿野郎っ。」

『そこが愚者のいいとこでしょ。リベルタらしくていいじゃない。カッコよく決まって、照れたりしなかったらデビトみたいで気持ち悪いよ。』

複雑そうな顔をするリベルタの手を引っ張り館に戻る。手伝うと言ってくれたが足も心配なので私の部屋でまたもや欲しい荷物を漁ってもらう事に。案の定仮面に興奮してくれてなんだかあげるこっちも嬉しい。リベルタが物色している間に素早く料理を作る。勿論動物たちにお手伝いしてもらいながら。だって早いんだもん。そして準備を整えて夕方の森へ足を踏み入れる。

「もう大分暗くなってきたし、目的地に着くころには夜だと思うけど名前がいると安心だな。」

『どうして?』

「いきなり熊とか狼が襲ってきても仲良くなれるし。」

『それだったらリベルタの言霊も有効なんじゃない?止まれ!とか色々やり方はあるでしょう。』

「ああ、そっか。でも俺のは仲良くはなれないだろ。動物達も悪気はないし、傷つけるのは可哀想だろ。」

『そう思ってくれるだけで皆喜んでるわよ。それで、どこまで歩くの?さっきの崖のとこまできたけど。』

「この崖の向こう側なんだ。この岩を登らなきゃいけないんだけど。足はもう全然平気だから先に荷物を置いてくる。名前はここで待ってて、すぐ戻るから。」

『わかった。』

猿並みの動きで登っていくリベルタ。マストとかによく登るからなのかな、凄い。宣言通りすぐ戻ってきたリベルタに差し出された手を借りて岩を登っていく。最後の大きい岩を超えて前を見ればレガーロの町と海が見渡せた。夜の海に星と町の明かりがキラキラと光っている。

『綺麗…。』

「だろ!ここって山の奥だから誰も知らないし、岩登るから邪魔な遮りもない。レガーロ島の一部しか見えないにしろ凄く綺麗なんだ。しかもほら、丁度諜報部の船とか外交の船が行き来するから松明の明かりとかランプとがキラキラしてるし、」

『ええ、凄く幻想的。私も知らなかったもん、こんなとこ。』

「まぁ、ダンテに怒られて逃げてきた時に見つけたんだけどな。海には諜報部の皆がいるし館にいけばノヴァに馬鹿にされるだろ。それで山をひたすら走ってたら木々の間から海が見えたからさ。これ、もっと上に登って遮りがなければ綺麗なんじゃないか、って思って冒険したらここについたんだ。」

『リベルタの冒険の一部ってわけね。素敵ね、それ。』

「まぁ、勇者リベルタとして話して子供達がこんな危ないとこきたら困るし穴場じゃなくなるから誰も知らないんだ。でも名前にはどしても見せたかったんだ。」

『いいの?』

「ああ!2人だけの秘密だ。あ、そうだ、あとこれ。本当はここでちゃんと言おうと思ってたんだけどさっき町で先走っちまった。でも俺の気持ちに偽りはない!俺はいずれ島の外に出る。できれば隣にいてほしいけど仕事で無理な時もあると思うから、持ってて欲しいんだ。」

『綺麗なネックレス。作ったの?』

「おう!その石はルカに貰った石だから体にいい奴だし。なんでいいかは話し難しすぎてわっかんねぇけど。俺だと思ってもっててくれ。仮面も貰っちゃたしな。」

『ええ、いつもつけとくね。』

「よかった。…ずっとこうして綺麗な場所を一緒に見たいんだ。」

海を眺めるリベルタの顔は嬉しそうだ。ネックレスの石はガラスのように透き通っていて空にかざすとキラキラ輝いた。それからご飯を食べながら今まで行った国の話とか、どこに行きたいとか身振り手振りで幸せそうに話す彼に私はずっと笑っていた。このまま隣で冒険してこういう景色を見るのも悪くないかもしれない。そう思えた充実した1日だった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -