さんさん、太陽の中。本当に今日が体育祭だったらしくジャージに着替えてグラウンドへ。殆ど練習していないけれど、こんなんでいいのだろうか。まぁ、きっと体育祭なんてものに力を入れている訳ではないのだろうが。仕方ないからどっか安全な端の方で高みの見物でもしようと思ったら駆り出された私。いきなり手伝ってくれなんて言われても。しかしこれも卒業のため!内申点を稼ぐのよ私。ピストルをもって手を挙げる。
『いちについてー…、よーい…、ど「おっそい!」え、なんだいエリオット。』
「遅いんだよ!!いちについて、よーいどん。でいいだろ!なんでそんなにため込むんだよ。いつスタートしていいかわからねえって!」
『だってやる気ないし…。引き受けたはいいけどさぁ。しかもこの濃い面子の中。きっとあんたらがいるから私が呼び出されたんだよ。きっと役員の人怖がって逃げちゃったんだよ。押しつけられた私の身にもなってみなさいよ。優しい心で引き受けてあげたんだから。』
「そうなんですか?」
『内心のためだけど。』
「めちゃくちゃ私利私欲の理由じゃないですか。まぁ、その辺の役なしがこんな事で手間を取らせたら容赦なく撃ち殺してますけどね。」
「てめぇがそういう事言うから名前に面倒な役がいったんだろうが!」
「ギャーギャーうるさいですよ。貴方が騒がなければとっくにゴールして、彼女も解放されていました。人のせいにするなんてこれだから野蛮な奴は…。」
「なんだと!やんのか!」
「なんですか!受けて立ちましょう。」
『あんたら兎同士仲良くしなよ。いつになったらスタートする訳?喋ってちゃできないよ。』
「俺は兎じゃねぇ!!」
「兎ですよ。こんなのと同種なんて僕のが可哀想です。」
「なんだと!!」
「なんですか!!」
『あぁ…、ギャーギャーうるさい。この中にグレイがいるなんて可哀想だわ。グレイ頑張ってね、よいどん。』
「だから俺は兎じゃねぇって!!…よいどん?」
「名前!!よいどんってなんですか!!」
『よーい、どんの略。遅いって言うからー。グレイ頑張ってー。』
頑張らなくても一番だけどね。おー、足早いなぁ。スポーツもできるなんて、さすがグレイだね。ピストルはどうしたんですか!と騒ぐペーター。いいからお前走れよ。ピストルってうるさいし火薬くさいじゃんか。別にやる気ないくせにと思えば2人とも微妙に落ち込んでいる。なんだ、やる気あったのか。アリスに、ブラッドにいいとこ見せたかった、とはもる兎2匹。こいつらも私利私欲な理由だな。
「名前ナイス。」
『アリス。これ個人戦でしょ?グレイが勝ったら賞金は私のものだよ。』
「ん?」
『私たち!!』
「その通り。」
『そうね、ナイトメア以外のね。』
「なっ、なんでそこで私を除外するんだ!皆のものだろう!?」
『ナイトメアは競技に出ないんだから賞金はあげない。当たり前でしょ。働かざるもの食うべからず。働かざるもの貰うべからず!もらいたきゃ動けー。』
「ぐっ、いいさ!私は賞金なんてなくてもリッチだ。と、いうよりさっさと帰りたい…。」
『いや、じゃあ帰れよ。なんで来たの。てっきりサボるかと思ってた。』
「帰ったら仕事がある…。こっちの方がまだ何もしないだけましかと思ったんだ。それに皆がグラウンドにいるのに私だけ寮で仕事とか可哀想すぎるだろ!」
『自業自得だ、仕事しろ。あ、グレイ、一位だよ!おめでとう。かっこよかった。』
「ああ、ありがとう。なんだか1位になってよかったのか微妙なスタートだったが、」
『普通はやり直しになりそうなもんだけど。さすがこの学校だね。でも、最高!!誰さんも見習ってほしいわー。転校生の私より働いてないって何だー。』
「ぐすっ、酷い!」
『本当にヘタレだなぁ。玉入れくらい頑張るんだろ。あ、ボリスだー。次の出番?』
「あぁ、そうみたいだね。でもあんまりやる気になんないなぁ。賞金とか興味ないし。」
皆興味ないのね…。私だけ?確かにここの人ってお金には困ってないみたいだ。寮は綺麗で大きいし施設は整っている。だったらお金があっても使い道ないのかな?でも今よりもっと施設が充実したり、好きなもの買えたら嬉しい、と思うんだけど。庶民の考えなのか、嫌だな。でも命がけで領土争いとかするの嫌だし、こうして安全なやり方で賞金がでるのっていい事だ。頑張ってよ、とボリスに言えば嬉しそうに笑った。
「あんたが応援してくれるなら頑張ろうかな。」
『…ボリスって本当に可愛いわ。』
「…はぁ!?」
『(あ、嫌がってんの忘れてたよ。これで機嫌悪くなられても困るしな)あ!体育祭勝ったら森に遊びに行く。うん!!賞金とれたら魚料理を作ろう、ね!!』
「…本当に?」
『うん。賞金でたらいいお魚買えると思うし、ボリスの好きなの作る。私も遊びに行きたいしね。だから頑張って!』
「ああ、俺頑張るよ!じゃあ、ちゃんと見ててね。行ってくるから!」
『うん、わかった。えーっと、次は。あ、ピアスも同じレーンか。ねぇ、グレイ。ピアスって鼠だからやっぱり早いよねぇ。』
「まぁ、動物は基本脚が速いだろうな。だが彼も猫だろ?俊敏さでは勝つんじゃないのか?」
『でも猫が鼠を追っかけてる時なかなか捕まらないじゃん?まぁ、本当の猫とネズミは大きさが違うから、ってのもあるんだろうけど。ピアスはどんくさそうだけど逃げ足は速そう。』
「ああ、確かに。猫と同じレーンなら逃げて早くなるかもな。まぁ、大丈夫だと思うが頑張れ、と声をかけてやれ。」
頑張れ、とは言うけどさ。もう一度ピストル係をやらなきゃいけないらしく私もレーンの横に立つ。ピアスは明らかに怯えている。あれ?ブラッドがいない。…サボリだな、きっと。他の顔なしさん達はお行儀がいいので勿論すたんばっている。ボリスと目があったので口ぱくで頑張れ、と言ってからピストルを打つ。すっごい速さで駆け抜けて行った。さすが猫だ。明らかに1位なので次のレーン者の紙を見る。
『えっと次はナイトメアと、ディーだね。』
「夢魔さん死にそうだよ、お姉さん。」
『本当だ。ナイトメアやめとく?なんだか走れる、って顔じゃないよ。今にも天に召されそうだよ。』
「いや、今やめたら寮に帰って仕事が…。」
『普通は死より仕事をとるよ。どんだけ嫌なんだよ。まぁ、いいや。よーいどん!!そういえば1人足りないな。あれ、生徒会がいない。エースか、…迷子だな。まったく。』
「いやー、さすが双子くん。若いだけあって早いなぁ。」
『エース!!あんたいんなら走れよ!スタートしちゃったよ。』
「え、俺って今だったの?でも双子くんもうゴールしちゃったしな。」
『あらまぁ。ま、クローバーの寮が勝てればいいや。なんとかなるっしょ。』
「エースくん、また迷ってたんですか。まぁ、貴方に最初から期待はしてないですけど。いるなら参加くらいしたらどうですか。僕がこんな外で汗かく連中と嫌々ながらやっているというのに。貴方だけ涼しい顔をしているなんてむかつきます。」
「あはは、すっごい理不尽な理由だな。どんなに嫌なら、サボっちゃえばいいのに。大方アリスにでろ、って言われたんだろうな。でも、ペーターさんだって負けたくせに。」
「あれは名前が悪いです。」
『てへ。』
「あ、アリスー!」
「げ。」
よくあんな遠くにいるのにわかるな。逃げるアリスと追いかけるペーター。競技でないのに競技より体力を使いそうだ。せっかくエースに会えたのだから迷わないように見張っておく。体育祭くらいしっかりしなよ、と説教してみる。爽やかな笑顔でスルーされた。まぁ、貴方の場合どうせ迷ってしまうんだろうし。体育祭という感じがしないほどに皆自由でぐだぐだしている。ピストルを用具係に返していると、ようやくアリスが戻ってきた。
「…っ名前…、」
『アリス…大丈夫?息切れが。』
「あいつから逃げてきたから…。男子の競技が始まるからっ、避難しましょう。あー、疲れたわ。」
『あ、あの高い所ね。あぁー、登りたくない。別に高所恐怖症って訳でもないけど高すぎじゃないあれ?』
「低かったら意味ないじゃない。死にたい?」
『行こうか!!』
-
「おぉ。やっと来たか。」
『ビバルディ。なんでここに?ビバルディなら弾丸ぐらい軽やかによけそうだけど。寧ろ誰かを盾にしそうだけども。』
「弾丸なぞ気にしておらんわ。ここからの方が見やすいだろ。」
『…ビバルディ、ビバルディ。』
「なんじゃ?」
『皆の頑張ってる姿がだよね?ここの方が汗と青春と努力が見れるからだよね?』
「そんなもの見てなにが面白いのじゃ。ここの生徒にそんなやつはおらん。見よ、1人死んだ。」
『やっぱり殺しがみたかったんかっ。アリス、どうしよう。私やっぱりこの世界になじめる気がしないよ!』
「私は何も見てない。銃声なんて聞こえない。そうよ、あれは偽物のピストル。競技で使う奴よ。体育祭だもの、あって当たり前。」
『アリスよ、現実から目を背けてはいけないよ…。まぁ、こんなグロいの嫌だよねぇ。私もさっきから見ないようにしている。これ降りるの嫌だな。早く片付けて、寧ろさっさとやめてくれ。』
「私は毎年止めてるのよ。こんな競技…、命を軽くみすぎてる。」
『うん、本当にありえない。』
「でも私たちの住む世界とは違うのよね…。」
『…うん。皆怪我しなきゃいいけど。いや、もう時すでに遅しかな。』
本当に物騒な世界よね、とため息をつくアリスに大いに同意。なんか訳もなく疲れるよ。もっと違う事でストレス発散したらいいのに。皆きっと学校を出たら楽しいよ。留年なんてしないで未来を見よう。きっとここの生活の方が楽なんだろうけどさ。寮とか施設とかみれば外より今の方が儲かってるだろうし。でもそのお金の発信源には何人という犠牲者が…。あー、考えないようにしよう!プログラムを見て気分をごまかす。次は私の出番だったので恐る恐る下に降りる。
「名前、でるのか。頑張れ…あ。でも無茶はするなよ。」
『はは。大丈夫だ…なにその怪我!!』
「あぁ、たいしたことない。」
『あぁ、って!!血ダラダラですよ!!しかも顔、ってか頬!!血を拭うグレイもかっこいいってそうじゃなくって。誰じゃい!!イケメングレイの顔に傷なんか作った不届きものはァァ!!』
「名前、落ち着けっ。かすり傷だ。」
『なんだ。重傷かと思った。いや、血ダラダラだから!!大丈夫?!』
「あぁ。騎馬戦で囲まれた時にな。しかし彼が助けてくれた。まぁ、同じ位邪魔もしてきたがな。」
「だって皆ばっかりトカゲさんとやりあえるなんてずるいじゃないか。俺達が敵同士だったら容赦なく戦えたのに。残念だぜ。」
『エース、恐ろしい事を。でも。2人がいるんだから安心だった。』
「いや、白組も強いからな。借り物競走だったよな?頑張れ。」
『うん。』
普通に頑張るぞ。普通にね!!無茶したら死に至りそうだしな。一応平和なのを選んだし、転校生処置的なものがあるらしいが。スタンバイしてピストルの音が鳴り走り出す。さて、赤組が勝ってもこれは団体だから食堂券か。いらないような、欲しいような。でも食堂いいよなぁ。やっちゃうぞ、食堂デビュー。最初のお題の紙を引く。開ければナルシスト、と書いてあった。物じゃねえじゃん!なんでもありだな、まじで。探してる途中珍しい組み合わせに出会う。
「名前、なんだった?なにか貸せるかな、俺達。」
「なんかヤバいの引いちゃった?」
『ボリスにエース。ありがたいけど仲良かったの?2人とも。』
「次競技なのに集合場所と反対方向に行くからさ。」
「えー、あっちだろ。」
「あっちは校舎だから。もうお願いだから体育祭が終わるまで大人しくしててよ。俺も名前のために勝たなきゃいけないんだから。」
『ボリスも大変だね…。私の事はほっておいていいよ。』
「まぁね…。で、なんだった訳?あんたのためなら力になるよ。なになに、ナルシスト?」
「あはは!これって人じゃん。というより性格だよなぁ。」
『笑い事じゃないよ、エース!ナルシストって。あぁ…、負けちゃう!』
「大丈夫みたいだぜ、ほら。」
「理事長の髪!?殺される!?」
「ブラッド=デュプレの紅茶!?手放すわけないだろ!?」
『…私まともだね。』
「案外な。なんだかお題にそったら皆死んじゃいそうだよね。」
『これ誰が書いたの?命知らずもいい所だよ。私安全だっていうから選んだのに。』
「多分ペーターさんだぜ。」
「日頃の恨みつらみを晴らしてみました。スッキリです。貴方が参加しているなんて知らなかったものですから。」
「会長さん。いつからそこに?ってか黒いなぁ。」
仕方ないので客席や応援席をざっと走る。あまりこっちに知り合いがいないので困る。ナイトメアでも連れて行こうかな、と思って探す。が、見つけた時にはあまりの具合の悪さで倒れていた。まじでこの人つかえないな。何しに来たんだろう。他に誰がいるっけ?と頭を悩ます。1人思いつきその人の元へ走った。なんとか1位でゴールして優勝ができた。絶対寿命が縮まった。体力ではなく精神的に疲れた。こんな感じで体育祭は終わったのでした。
オマケ
『ブラッド!借り人競争!!来て!!』
「借りもの競争はいつ借り人競争になったんだ?」
『いいから!!いえーい、1位。』
「紙にはなんて書いてあったんだ?」
『え、いや…紅茶を愛してる人って!!もうブラッド以外いないなー、って!!』
「なる程、いいチョイスだな。私以外にはいないだろう。」
『(ナルシスト)』