番外編


昔の話@



友達の幼馴染とたまたま出会った時に顔を合わせた
正直、女子と関わることはあまり好きではなかった
他人によく言われるこの端正な顔に関しては、自分でも理解していた
都合がいい事もあるけど、やっぱり不都合なことの方が多い

奢るからと言われて、仕方なく合コンに行くことになった
高校生で合コンって普通なのか?
勿論、この間の友達の幼馴染も来る
うんざりしていた、でも……


「こいつ、私の幼馴染なんだけどね、なまえ狙いなんだよ〜」

「え」

会話の中心にいる彼女に目を奪われた
さっきから様子を見ていたけど、彼女も多分数合わせで連れてこられたんだろうなと思っていた
でも、僕の友達が狙っていたらしい
なるほど、これはそういう目的も潜んでいたのか

しばらく女子を適当にあしらっていると、他の男子といい感じになったらしく、僕に構ってこなくなった
安心していると、例の彼女が歌うことになった

「みょうじさんって歌上手いんだ?」

「そうだよ〜
 俺の歌に酔いしびれろ!みたいな感じ〜」

なまえさんの代わりに他の女子が答えてくれた
笑いがこみあげてきた、ツボに入った

その声はひどく綺麗で、心が安らいだ
今日は来てよかった
歌っているのを聞いている時に、目が合った
彼女は微笑んだ、心臓がドキリと音を立てる
あ、好きだ





他の奴らはみんなカップルが出来上がったようで、そそくさと帰ってしまった
まあ、まっすぐは帰らないだろうな
奴らが歩いて行った方角を見ながら、思う


「あの降谷くん私のこっちだからばいばい」


「あのみょうじさん
 歌素敵でした
 俺、一目ぼれしました」

何か言わなければと思った
咄嗟に出た言葉は本音が丸出しで


「はい?」

「みょうじさんとあわよくば交際したい」

一度言ったら止まらなくなった
これが、恋というものなのか
遅すぎる初恋は、重く深いものへと変わっていく

「私彼氏ほしくないので、ごめんなさい」

「友達からでいいので!」

何度もしつこく言うと、友達からならと返事をしてもらうことができた
連絡先を交換して別れる

ちょうど家に着いた頃にみょうじさんからメールが来た
今着いたのということは大体あの辺に住んでるのかもしれない
Googleで地図検索をしてみる、みょうじさんは××高だったな
家から結構遠いな、心配だ…
朝早く起きて、家を探してみよう

朝に通学……なんて欲張りすぎるか
後ろからそっと見守ろう


(当日に我慢できなくて、家の前で待ってしまうのはまた別のお話)