番外編


その後の話



私は少しだけ丸くなった体を引きずりながら、赤井さんの住むアパートへ向かった
あれから、一度アメリカに戻った赤井さんはまた再び何らかの任務で日本に戻って来た


「最近どうなんだ?零くんとはうまくやっているのか」


「赤井さんと零…いつからそんなに仲良くなったの…」


「零くんはまだ俺の名を読んでくれないがな」


「付き合いたてのカップルかよ…」


「そのイライラ加減から見て、かなり大変なようだな…」


赤井さんについつい当たってしまった
すみませんと謝ると気にするなと言われた
カッコいい、赤井さんと結婚すればよかったかなあ


「愚痴っていいですか」


「ああ、ストレスはお腹の子にも毒だからな…」


「そうですね」


私は結婚してしばらくしてから妊娠が発覚した
結婚初夜は本当にひどかった
あの絶………ああだめだめ、子どもの前でそんな…


「零は本当に結婚してからウザさが増してて…
 俺が全部やるから座ってろとか、お風呂やトイレにまで心配だからってついてくるし…
 優しさなのかもしれないんですけど…さすがに…」


「ストーカー気質がすごいことになってるな…」


「零に愛されているのは分かってるけど…過保護すぎる」


好きなのに、なんだろこの気持ち


「好きなのになあ」


「そういうことはよくある」


「も〜赤井さんスマホいじらないで、ちゃんと聞いてください〜!」


赤井さんは気が付くととスマホをいじっていた
話の途中でいじった罰だといわんばかりにスマホの画面を覗くと、Lineの画面が表示されていた
その連絡先は…


「零!?」


「俺のところに連絡がきた
 すぐに来るそうだ」


「も〜なんでこの2人仲良くなっちゃったの〜」


仲良くなってくれたのは嬉しいけど、私の逃げ場がない
その時、ピンポーンとチャイムが鳴った
え?連絡って数分前のことだよね?零早い!


「迎えに来たぞ、なまえ」


「零…」


「今、お前1人の体じゃないんだぞ…」


軽率なのは分かっていた
でも家を出ないと気が滅入りそうで、お腹の子にもよくないと思った


「零、聞いて
 零は結婚してすごくウザくなった
 そして、私の事とお腹の子を愛してくれてるのは分かってる
 でも、私は無理しないからそんなに心配しないで」


「……なまえ」


零はゆっくり頷いて、私のお腹を撫でた


「赤井……また世話になったな」


「いや、彼女の友人として当然の事をしただけだ」


ああ、やっぱりこの2人が仲良くなってくれて良かった
仲が悪い2人を見ているのは辛かった


「帰るぞ、なまえ」


「うん」


零が気まずそうに私の横を歩く
零は昔から私と喧嘩したら、すぐにしょげる
特に私が怒った時

あ、犬の尻尾と耳が見える気がする
私の想像の尻尾と耳はだらんと垂れていた


「零」


なまえを呼ぶと耳がピーンと立った
思わず、笑いそうになるのを必死にこらえる


「帰ろ
 もう怒ってないよ」


そういって、手を握ると次は尻尾を左右に激しく揺らした
赤ちゃんが生まれたら2人いるような感じになる気がする


「今日は夕食何にしようか」


「なまえの肉じゃがが久々に食べたいな」


「じゃあスーパーに寄ろう」


零のことはウザイと思うけど、やっぱり私は零から離れられない
きっと、零も同じだね
お腹の子に語りかけるように優しく撫でるとお腹の子が蹴った気がした