朝起きると、お姫様みたいなベットに眠っていた
普通なら声を出して驚いたりするものなのだろうけれど、妙に冷静だった私は横に眠る紅子ちゃんを見ながら、昨日の事を思い出していた


「ああ…私泣き疲れて寝ちゃったんだ」


紅子ちゃんの肌綺麗だななんてのんきに思っていると、紅子ちゃんの綺麗な目が開いた
ああ、男子たちが紅子ちゃんに夢中になるの本当にわかる
綺麗だもの、同じ性別だと思えないくらいに


「おはよう、なまえ
 ちょっと目が腫れてるわね…すぐ冷やしたのだけど…」


「そんなにひどい?」


「気にするほどじゃないわ、ただ少しだけ腫れてると分かるくらいよ」


「そっか」


静かな朝だった
広くて豪華な部屋にはあまりにも私が不釣り合いで何だか居心地の悪さを感じ始めた
狭いところが好きな私は、緊張してしまう

紅子ちゃんがふわりと私の手を握った


「紅子ちゃん、昨日はありがとう
 もう、元気になったから大丈夫だよ」


「……なまえはこれからも黒羽くんと付き合っていくつもりなの?」


「どうだろう、私はそうしたいけど、快斗は私の事嫌いになっちゃったかも」


少しだけ笑えるようになった
これも紅子ちゃんのおかげだ
私にとって、大切な友達


「なまえにとって……黒羽くんは何?」


「……大切な人だよ」


「黒羽くんになら、何をされてもいいって、好きでいてくれたらそれでいいって……思ってるでしょう?」


唾をごくりを飲む
昨日の件だって、私が過剰に反応しすぎただけで、青子ちゃんとは何もないって…思ってる
快斗は、何も悪くない

昨日のことがあっても、私はまだ快斗が好きだし……


“快斗には私だけを見ていてほしい”


あの星空の下での出来事が頭を過った
私はあの時、どういう気持ちでキスをした…?


「なまえ、好きでいてくれるだけでいい……それだけじゃ本当は足りない
 黒羽くんの目に自分だけが写っていて欲しい、本当はそう思っているんでしょう?」


「そんな……ドロドロした気持ちを持っていたとしても……快斗に向けられない」


「……ねぇ、なまえ
 相手を自分だけのものにしたいという気持ちは恥ずかしいものじゃないのよ」


「……知られたくないの
 自分の中にこんなドロドロとした醜い感情があるなんて……」


知られたら、引かれるに決まっている
快斗には嫌われたくない


「……黒羽くんにだってあるわ、ドロドロした気持ちが
 誰にでもあるものなのよ
 でも、それをみんな隠したがる
 本当は恥ずかしいことではないのに
 なまえ、あなたは綺麗すぎるの
 もっと、汚くなっていい」


「汚く…?」


「もっと、黒羽くんに感情をぶつけるべきよ
 大丈夫、私の占いはよく当たるの
 あなたは絶対に幸せになれる」