一瞬呼吸が止まったかと思った
息を吸うのを忘れていた私の口がゆっくりと息を吸い込む
コナンくんが私の異変に気付き、私の名前を呼んだ


「コナンくん、今日はありがとう
 また、今度ね」

「え……あ、うん!またね、なまえ姉ちゃん!」


コナンくんと別れて、快斗たちに駆け寄る
いやだ、嫌だ、嫌だよ
何このもやもやして、黒くてドロッとした気持ち
二人は幼馴染で別に出かけていたっておかしくない
ただ、お母さんに何か頼まれたとか……そんな感じかもしれない


「珍しいね
 米花町に来るなんて」

「まあな…
 青子、先に帰っててくれ」

「あ、うん!二人ともまた明日ね!」


青子ちゃんの姿が見えなくなったのを確認した後、快斗が口を開いた


「なまえ、もう探偵と会うのは辞めてくれ」


「どうして…?」


「あいつ…薬で小さくなってるけど、俺たちと同じ年なんだ
 信じられない話かもしれないが、本当だ」


大人びたコナンくんを見ていれば、それが嘘じゃないことだってわかる
コナンくんは少し常人離れしている、小学生とは思えないくらいに


「信じるよ、でもどうしてコナンくんと私が仲良くなっちゃいけないの?
 快斗は青子ちゃんと私に内緒で出かけているのに?」


我ながら嫌な言い方をしたと思った
でもここで言わなかったら、私はきっと後悔する


「快斗は私が、女子と仲良くしないでって言ったらできる?」


快斗がコナンくんに正体がバレることを警戒して、そういったのかもしれない
でも、快斗の表情を見ている限りはそのことじゃない


「……ごめん、言い過ぎた
 でも……」


自分でも訳が分からなくなって涙が出た
私はそのまま走った
快斗の顔を見れなかった
絶対嫌な女だと思われた


しばらく走り続けたところで、携帯が鳴った
少しだけ、期待をした
もしかしたら、快斗じゃないかって


「はい…」


《なまえ?》


「紅子ちゃん…?」


《泣いているの?
 今、どこにいるの?》


私は紅子ちゃんに居場所を告げた
すると、たまたま近くにいたらしく、すぐに来てくれた

目を真っ赤に腫らして、人前に出られないような顔をした私を見て、紅子ちゃんは綺麗な顔を歪めた


「何があったの…?」


「私、快斗にひどいことしちゃった……」


「なまえ、私の家で話をしましょう
 ここだと落ち着いて話ができないでしょう?」


軽く頷くと、紅子ちゃんは私の手を引いて歩いてくれた
ふらふらした足取りの私に合わせてくれて、それが嬉しかった


「約束、破ったわね…黒羽くん」


「あ、紅子ちゃん…何か言った…?」


「なんでもないのよ、気にしないで」