朝に珍しく、学校に行く途中で青子ちゃんと快斗に会った


「ひ〜っくしゅん!」


「なまえちゃん、聞いてよ
 快斗、セリザべス号を見物に行って、海から落ちたんだった!」


「うっせぇな…」


そういえば、快斗がそのセリなんちゃら号に何かを盗みに行くって言っていた気がする
私にはよくわからないから詳しくはきかなかったけど

私は、快斗が何故怪盗を続けているのかを知らない
きっと、何か理由があってやってるということだけは分かってる
私にはそれを聞く勇気はない
聞く権利はないと思った

快斗が話してくれるその日まで、私は何も聞かないことが一番なはずだ

と、思い込むようにしている

頭の隅でそんなことを考えながら、2人の言い合いを見守っていると不意に視線を感じて、振り返った
そこにはなぜか連絡先を交換した眼鏡の男の子と青子ちゃんにそっくりな女の子がいた


「なまえちゃん、早く〜!」

「あ、ごめん」

青子ちゃんに駆け寄り、隣に居る鼻水を垂らしたままの快斗にティッシュを渡した
なんか平和だなと呑気に考えていると「なまえちゃん、ぼーっとしすぎ!」と青子ちゃんに手を引かれた
私は引かれるまま学校へ向かった


「あら、なまえ
 今日は珍しく3人で来たのね」


教室に入ったところですぐに紅子ちゃんに声をかけられた


「紅子ちゃんおはよう」


「おい紅子…」


「あら、黒羽くんもいたの」


「いてわりーかよ
 てか、なまえから離れろ」


気が付いたら、紅子ちゃんは私の隣にいて、しかも抱き付いていた
瞬間移動でもしたのか、私がぼーっとしているせいなのか…


「嫌よ」


2人の間に不穏な空気が流れた
2人ってこんなに仲悪かったっけ?
紅子ちゃんはむしろ、快斗を好きだと思っていたんだけど…


2人の言い合いを見ていると青子ちゃんが遠くで手招きをしていた
私はそーっとその場を抜け出して、青子ちゃんの方に向かった


「なまえちゃんは大変だね…」


「え?」


大変、という言葉にどんな意味を含んでいるのか分からず、首をかしげると、青子ちゃんは笑った