毛利探偵事務所と窓ガラスに書かれた建物が見えると蘭さんが「ここです」と一度立ち止まった
一階には喫茶店でその上に毛利探偵事務所があるらしい
探偵事務所の喫茶店の名前が『ポアロ』だなんて、運命的だなあ
わざとここにしたのかな?それはそれでロマンチックだと思う

階段を上がっていくと探偵事務所についた


「今日、父も仕事でいないのでこっちでお茶しましょう」

「はい」


探偵事務所は思ったよりも居心地が良かった
もっとビシッとしてるイメージだったけど、なじみやすい空気だ
毛利探偵ってどこかで聞いたことがあるなと思ったら、あの有名な名探偵の毛利探偵か
今更ながらに気づいた


「蘭姉ちゃん!ごめん、僕…友達に遊びに誘われたんだった」

「あ、大丈夫。いってらっしゃい」

「じゃあなまえ姉ちゃん、ゆっくりしていってね!」


コナンくんはそういって、いなくなってしまった
突然、初めましての人と二人っきりになってしまった


「あの、なまえさんってもしかして高2ですか?」

「え、はい」

「じゃあ同じ年だ!敬語やめて、タメ口にしよう!
 なまえちゃんって呼んでもいい?
 私は何でもいいよ」

「うん、蘭ちゃん」


同じ年ぐらいだと思ってたけど、まさか本当にそうだったとは
蘭ちゃんは大人っぽいな……


「なまえちゃん……?」

「あ」


安心して、私の目からはぽろっと涙がこぼれた
蘭ちゃんの困惑した表情がぐにゃりと涙で歪んだ


「何か心配事があるなら、私話聞くよ?」


向かい側に座っていた蘭ちゃんが私の隣に座って、背中を優しく撫でてくれた
まるで、お母さんみたい


「……好きな人がいて、その人にひどいことに言ってしまったの……
 私ね、好きな人の幼馴染にヤキモチ妬いて……」

「……そっか、なまえちゃんは本当にその人のことが好きなんだね
 でもね、多分その人もなまえちゃんがヤキモチ妬いたって分かってるんじゃないかな
 むしろ、喜んでるかも」

「……喜ぶ?」


よくわからなくて、首をかしげると蘭ちゃんが目を輝かせた
私、変なこと言ったかな


「なまえちゃんが他の男の人と歩いてて、もうあいつと会わないでって言われたらどう思う?」


「何でだろ…?って思う」


「それが、俺の彼女なんだから他の男と一緒にいるなって意味だったら?」


蘭ちゃんの言いたいことが少しずつ分かってきた気がする
私は、快斗がヤキモチを妬いてくれたらきっと嬉しいって感じるはずだ
それは快斗もきっと同じで…


「なまえちゃんが思っている以上に、なまえちゃんはその人のこと大好きなんだよ
 私もそういう気持ちになったことあるからわかるよ」


「蘭ちゃんも…?」


「うん、あの推理バカはいつも……」


推理バカっていうのはきっと蘭ちゃんの大好きな人のことかな
乙女らしい表情を浮かべる蘭ちゃんが可愛らしくて、つい笑顔が零れた


「あ!なまえちゃん、笑った
 笑った顔、すごくかわいいよ」


「そ、そうかな……ありがとう」


私、決めた
快斗と話をしよう。

ちゃんと私の気持ち伝えて、快斗の気持ちも聞かなきゃだめだ

いつまでも、綺麗なだけの恋じゃいられない
相手に対して、負の感情をいだくこともある。
相手を自分だけの物にしたいとか、私だけを見てほしいとか

私はその初めて抱く感情を汚いものだと思っていた
そうじゃなかった、普通の事だった
みんな抱く普通の感情。


青子ちゃんが好き、快斗も好き。
みんな好きで大切だ

私は私の中できちんと決着をつけなければいけない