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そのまま走り、地下鉄のホームに着く頃にはクリームパンはほっぺに押し込んでぎゅっと入っている状態。
階段を駆け下りると、ちょうどドアが閉まって行ってしまった。
くっそー。
あと3秒早ければ……!!
雨でびしょ濡れのローファーに今更気付き、やけに重たく感じる。
もーやだ。
心がへし折れそうな時、聞き慣れた声が聞こえ振り向くと、快斗君が友達と楽しそうに話しながら階段を降りてきた。
やばいっ!!
とりあえずほっぺの膨らみをなんとかせねば……!!
顔を俯き加減にし、もぐもぐと口を早く動かし飲み込んだ。
「あれ、なまえじゃん。おはよ」
「!!お、おはよー……」
うっ……!!
朝から何故そんな眩しく輝けるんだ!
キラキラとした笑顔は、雨なんか感じさせないほど。
私のオーラと全然違う……!
あーかっこいいよ〜っ……。
どーりで人気なわけですよね。
なんて思いながらヘラっとしていると、一瞬何か気づいた様な顔をした快斗君は、クスリと笑い出した。
「えっ……顔になんかついてる?」
なんてありきたりな返事をしてみると、肯定された言葉が返ってきて一瞬固まってしまった。
直後、優しく微笑んだままの快斗君に指で口元をグイっと拭われ、自然とその指に目がいく。
あれは!!
「クリームついてた」
にししと笑った彼は、そのクリームをパクっと口にした。
セクシーに舐め取る、とかでは無くて。
ごく自然にパクッと。
そんな所が快斗君らしい……じゃなくて!
「なななっ……?!」
今何されたのかを再認識し、顔に熱が集まる。口元を腕で隠すが、今更だ。
困った様に笑う彼はぺろっと舌を出し、「あまっ」と口にした。
そ、そ、その行動が甘いです……!!
「おーい快斗ー!何してんのー?地下鉄来るぞー」
「おー今戻るー。……ごちそーさん♪」
ポンッと私の頭に手を置き、友達の元へ戻って行った。
占いって、最下位の日に限って当たるよね。
「快斗……君……」
それでも、恥ずかしい。より、嬉しいの方が大きい私。
脳内お花畑の私がまたもや乗り遅れそうになったのには重症だ、と恋の病を恨んだ。
くそぅ…
くそぅ……!!
かっこいいよばかやろぉおおおっ!!
と心で叫んでいることは、溢れている人の隙間から見える快斗君の笑顔から見ると届いていないようだ。
まぁ、届いてたら怖いけど。
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