■ 桜の下の嘘と確信A

しばらくするとジョディさんと新一が男性に声をかけられていた
哀ちゃんも密談が気になるらしく、新一たちをちらりと見ていた

子どもたちが近づいていったので、私たちもついていく
どうやらこの男性はどこかであったことがある人だったらしい
男性は赤井さんらしき人を目撃したと言った

デパートの時のように赤井さんに変装した安室さんかな


「まだ思い出せない?
 彼とどこで会ったか…」

「昨日は風邪で1日ぶっ倒れていたので記憶が…」


男性の声はガラガラ声だった
すごい風邪なのにお花見に来るなんて、まるで新一たちみたいに密談をしにきたみたいだ…
どうしても来なければいけなかった……ようなそんな感じだ


「この水でうがいするか?」と元太くんが聞くと男性は風邪がうつるからと断っていた

「もしかして、どこかの缶コーヒーの自販機の前とかで見かけたんじゃない?」

「か、缶コーヒー好きなんですか、彼」

「ええ、よく飲んでたわ……
 そう、彼らが今にも病院に襲撃してこようかっていうあの時も…」


それは私が知らない話だ
私が普通に過ごしていたあの時……赤井さんたちは……

ジョディさんが男性に連絡先を渡して、別れた
子どもたちが神社の鈴を鳴らすのを哀ちゃんと私とジョディさんと新一とで、少し離れたところで見ていた


「ねぇ…」

「ん?」

「今、話してた赤井って人……どういう人?」

「何で?」

「なんか私の知ってる人とよく似てる気がするんだけど……」


そうか、哀ちゃんは赤井さんの存在をちゃんとわかっていない
でも、赤井さんが明美さんの恋人だった人だってわかったら…


「き、気のせいじゃねーか?
 それに赤井さんはもう……」


すると周りの人が騒ぎ始めた
ちょうど新一の携帯も震えた


「博士か?どした?
 何ィ!?殺人事件を目撃しただと!?」


新一は電話を切ると、急いでジョディさんと人ごみの中に消えていった


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