■ 不思議な宅急便

沖矢さんと家でゆっくり過ごしていると、チャイムが鳴った
インターホンのモニターを確認すると、どうやら宅配便の人が来たみたいだった
沖矢さんが受話器を取り、返事をした


「はい…」

《あのー…チーター宅配便ですけど…
 そちらに阿笠博士って方はいらっしゃいますか?》

「ああ…阿笠なら隣…」

《工藤様方 阿笠博士様宛の荷物を届けに来たんですが…》

「工藤様方?」


そんな送り方普通ならしないと思うんだけど
するとしたら、新一くらいしか…
あ、もしかして…

沖矢さんも気づいたらしく、私にアイコンタクトをした


「あぁ、思い出しました
 ケーキですね?
 本人は隣の部屋で手が離せない作業をしているので私が受け取りましょう」


受話器を置くと、沖矢さんが私に書斎にあるスマホとその箱を持ってくるように頼んできたので、私は急いで書斎へ走った
箱にスマホを入れる
そう、あんな風に書き足せるのは車内としか考えられない

理由は分からないけれど、新一は今宅配便の中にいる
そして、かなり危険な状態

私はスマホを入れ、軽く包装した箱を持って急いで玄関に向かった


「すみません、集荷を頼んでもいいですか?」

「はい」


沖矢さんが私から包装した物を受け取り、宅配便の人に渡した
これでいいのかな…
宅配便の人が出ていくと、沖矢さんは書斎に戻り、宅配便の車の様子を見ていた


「沖矢さん、大丈夫そうですか?」

「あのボウヤなら……」


その時、工藤邸の前に白い車が停車して、人が出てきた


「安室さん!?」


様子を見ていると安室さんが宅配便の人たちのお腹にパンチを入れた
あれは痛い

そして手慣れた様子で犯人たちをテープで縛っていく

結局何があったのかよくわからないけれど、新一たちは助かったらしい
その後は新一から事件の話を聞き、ぐちゃぐちゃになったケーキを食べた


「沖矢さん、今日はそんなに遅くないので大丈夫ですよ
 歩いて帰りたい気分なんです」

「分かりました、気を付けてくださいね
 何かあったすぐに連絡してください」


ぼーっと街中を歩いていると誰かにぶつかった
慌てて謝ると大丈夫ですよと優しい声が聞こえた
ぶつかった人を見ると丸眼鏡をかけた男の人だった
あれ、どこかで会った?


「あの、もしかしてどこかでお会いしたことがありますか…?」

「いえ、ないと思います」

「すみません、気のせいでした…」


お互いに会釈を交わしながら、また逆方向に歩き出す
すると、街中にあるテレビに目が入った


《では次は太閤名人の特集です》


「あ、さっきの人だ」


テレビで見たのかな
それだけでもない気がするのは、私の気のせい…?


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