■ 真実を暈すのは@

「名前、久々だな」


赤井さんと会えたのも一週間ぶりだ
今でもまだ組織の監視が強くなっている状況だ
沖矢さんは私の恋人だと知っているから、安室さんもベルモットも心配はしていないみたい
ただ、帰りは迎えに行くと言われた
ギムレットが姿をくらませている
でも、私はギムレットの居場所を知っている


工藤家の一室に入ると手錠をはめられたギムレットが椅子に座っていた
彼は私を見つけると苦笑を浮かべた


「君、本当に変な子だね
 殺されそうになった奴に会いに来るなんてさ」

「……話があるの」


赤井さんにアイコンタクトをすると、赤井さんは部屋を出てくれた
監視カメラがついているだろうし、心配しなくても大丈夫だとおもう
それに、ギムレットはもう私を殺さない


「話?いいね、退屈してたんだよ…面白い話にしてね」

「FBIがあなたを引き取ることになった
 処分とかはよくわからないけど……ひどい目には遭わないようにはしてくれると思う」

「お人よしだな…
 本当にむかつく……僕はキティのそういうとこが好きだったんだなあ」

「私はキティでもシンデレラでもない……名前」

「名前、会えて良かったよ
 君の言う通りだよ、僕に君は殺せない
 君も僕を殺せない」


私たちはお互いを憎み合ったとしても、お互いを殺すことができない
お母さんはギムレットに殺された
でも、お母さんはギムレットのこと……きっと恋愛関係とかじゃなくて、普通に好きだったと思う
私と過ごした鈴木くんはきっと、ギムレット自身なんじゃないかと思った
優しくて、ちょっと可愛らしくて、でも時々頼りになって
きっと、私も赤井さんと出会っていなかったら恋に落ちていたかもしれない


「お母さんのこと好きだった?」

「ううん、愛してたよ」

「お母さんの代わりに言うね
 “愛してくれてありがとう”」

「本当に君はバカだね……
 両親が死んだ原因を作った俺にそんなこと言うなんて」

「死んだ原因?」


殺したじゃなくて、死んだ原因を作ったという言葉がひっかかった
ギムレットは失言したといった顔をしていた
ギムレットが殺したわけじゃないの?


「違ったね…僕が殺したんだ」

「ギムレット…あなた嘘ついてる
 本当の犯人は別なの?」

「違う、僕が殺した」


私は思わず立ち上がって、ギムレットの胸倉をつかんで、目を見た
目がキョロキョロと動いた


「……誰が私のお父さんとお母さんを殺したの?」


その時、バァンと大きな音がして、赤井さんが部屋に入って来た
監視カメラで見てただろうから、私の行動がおかしいことに気づいたんだろう


「名前」

「赤井さん……」

「面会は終わりだ
 もうしばらくしたら、ジョディたちが来る」

「……そうですか」


私はしぶしぶ部屋を出た
でも最後までギムレットから目を離さなかった



[ prev / next ]