■ ギムレットE

「ああ〜それは君の大親友の工藤新一くんと同じ原理だよ」


突然、新一の名前がでてきて、青ざめる
そんな私をおかしそうに笑った


「そうそう、君を捜している時に色々調べてさ。君が小さい時によく遊んでいた幼馴染の二人がいることを知って…
 あとシェリーも生きてるなんてね、ジンが知ったらどうなるのやら」


「やめて!私の大切な人に手を出さないで!」

「あは、いいね…その表情
キティも君に手を出すなとか色々言ってたなあ
まさか、組織にあんな約束を取り付けていたなんてね、おかげで組織内にいると手が出せなくなった」

「だから、姿を消したの?」

「うん、君を殺すためにね
 でも、ただ殺すだけじゃ面白くない
 どうせならバーボンとライの目の前でやってやろうと思って…
 その方が面白いでしょ?」

ライと君はかなり深い仲みたいだしねとギムレットは付け足した
全部ばれてる……
でも、ギムレット…あなたは大事なことに気づいていない


「新一も安室さんも赤井さんが揃ったら最強なんだよ
 あなたに勝ち目はない
 黙って、私を殺しておいた方が良いんじゃない?」

「その減らず口、本当にキティにそっくり」

「…お母さんはきっと、あなたにわざと殺されたんじゃないの
 そのせいであなたは私に手を出せなくなったんだから…
 この家で“あの時”だけが唯一私を殺せるチャンスだったのに」

「……ふーん
 じゃあ、せっかくだしお言葉に甘えて、殺してあげるよ」


ギムレットは私の眉間にポケットから出した銃を突きつけた
怖くない、私が一番怖いのは大切な人たちが殺されること
私の命一つぐらいくれてやる


「つまんないな〜
 そんな吹っ切れた顔……
 もっと苦虫をかみつぶしたような顔をしてくれなきゃ!」

「あなた、さっきから……私を殺さない理由を探してるみたい」

「……何言ってるの」

「さっさと殺せばいいんじゃない!
 さっきからあなたは理由を付けて、引き伸ばしてる!
 赤井さんとか安室さんの前で殺したいとかそんなの言い訳だよ!
 
 ……ギムレット、あなたは私の事を殺せない」


私の眉間から離れた銃に近づいた
コツン、私の眉間にまた銃が当たる


「……あなたはお母さんに想いを受け入れてもらえなくて悲しかっただけ」

「うるさい!うるさい!うるさい!」


ギムレットが引き金を引こうと力を込めた
私はそっと目を瞑る

その時、銃声がした

しばらくしても痛みがなく、ただ誰かのうめき声が聞こえた
目を開けるとギムレットが手首をおさえて、蹲っていた
私の拘束も解けていた

私の足元にはギムレットが持っていた銃が転がっていた
私は無意識にそれを手に取った

ああ、なんだろう
この感じ………

ゆっくりとギムレットにそれを向けた

お母さんとお父さんの敵
二人とも何も悪い事してないのに


“悪いことをした人には罰が下るのよ”

だから、良い事をたくさんしなさいと母はよく言っていた
ギムレットは私の様子に気づいたようで、目を見開いた


「あは、それが正解だよ
 俺の事を憎んでるその顔、最高だね」

「…………」

「さっきの言葉をそのまま返すよ
 “君は僕を殺せない”」

「………」


その時、誰かが私を後ろから抱きしめた
ふわっとたばこの匂いがした


「赤井さん……?」

「お前が殺す必要はない
 殺す価値もない」

「ライ……」


私の目の前にいるギムレットが私の後ろを睨んだ
ギムレットが私たちに襲いかかろうとしたところで、安室さんがギムレットを取り押さえた


「赤井!飛び込むなって言っただろ!」

「安室さん…!」


私の目からはポロポロと涙が流れた
振り返って、後ろを見ると赤井さんも少し泣きそうな顔をしていた


「赤井さん!ちょっと…!」


新一もこちらに走って来た


「話は後で聞く
 まず、ここから離れるぞ」

「実は、赤井さん今…組織がこっちに向かってるらしくて…ここは安室さんに任せて僕たちはギムレットを連れて、退散した方が良い」


「………分かった」


赤井さんがそそくさと建物を出ていく


「冷静なフリしてるけど、赤井さん…相当焦ってたからな」

「うん…よくわかった」


新一と内緒話をしていると靴音がまた戻って来た
ふと気づいた時に唇に少しかさついた感触がしていた

どうやら、キスをされているらしい
目の前の新一が真っ青やら真っ赤やら、表情がコロコロ変わっていた


「もう大丈夫だ」


その言葉は赤井さんが自分自身にも言い聞かせているそうだった
そういって、赤井さんは私の頬をそっと撫でた。
首を縦に振ると、赤井さんが微かに笑った。

新一が、赤井さんそろそろ…と言うと名残惜しそうに離れた





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