■ ギムレットD

《名前が……攫われた!?》


ボウヤに電話をかけると、思いっきり怒鳴られた
何してたの赤井さんだなんて、いつもは聞かないきつい言葉をいくつかもらった
名前のことを呼び捨てにしてるあたり、かなり動揺しているらしい。


《ごめんなさい、言い過ぎた
 安室さんから連絡あったよ
 ベルモットたちも相当探し回ってるけどまだ見つかってないみたい》

「一つだけ、当てがある」


電話越しでもボウヤの唾をのむ音が分かった
すぐに教えてほしいと言った感じだ


「名前と両親が住んでいた家だ」





目を開けると手足が縛られていた
冷静に今の状況を把握しようと頭を働かせる
そうだ、赤井さんに電話貰って、ベランダに出て…そしたら後ろから殴られて…


「やあ、名前さん……いやシンデレラって呼んだ方が良いのかなあ?」


笑っているのに目は笑っていなかった
冷たい視線が私を突き刺す


「私を殺すの?」

「あは、直球だね
 うん、僕は君を殺すよ…
 ずっと探してたんだ、君を。
 君は忘れてるかもしれないけど、俺…君を殺しに来たの二回目だよ」

「え?」

「ねえ!ここ、どこか分かる?」


辺りを見回すと見覚えのある建物だった


「……私の家…?」


ここは昔、お母さんとお父さんと暮らしていた家によく似ていた
あれ、何でこの家のこと忘れてたの?


「僕は数年前、ここで君を殺そうとした
 でも、邪魔が入ってできなかった
 ライもバーボンもスコッチも本当に昔から邪魔だった……鼠のくせに
 特に、スコッチが邪魔だったな
 君からの信頼を一心に受けてさ?」

「……三人のこと…」

「三人ともノックってこと?知ってた知ってた。キティも気づいてたし」


ギムレットが組織に情報を漏らしたら、赤井さんや安室さんが危険な目に遭う


「あは、気づいちゃった?そーなんだよね〜俺が情報漏らしたらライもバーボンも危ないよね〜
まさか、ライも生きてるなんてね」

「二人に何かしたら許さない」


睨むと、ギムレットはきょとんとした顔をした
しばらくすると、笑いだした


「シンデレラ…キティとは違う意味で面白いなあ
 本当に殺すには惜しい
 でも、君は僕の事を好きになったりはしないだろうね
 じゃあ、殺すしかないんだよ」

「お母さんとお父さんのことそれで殺したの」

「キティのことは本気で愛してたんだ
 ジンとかは、ビビって本気でキティでアタックとかしなかったみたいだけど…
 俺は旦那がいようと何度も何度もアタックした。
 二番目でもいい、でも…キティ何て言ったと思う?
 “二番目なんて何の意味があるの?”だってさ!
 本当に面白い人だよね、そういうところが好きだったんだけど」

「あなた……あの時と姿変わってない……」


記憶を掘り起こしているとそんなことに気づいた
ギムレットは大学生と言われれば、そうかとなるけど、かなり童顔で若々しい
正直、高校生中学生にも間違えられると思う
それほどに彼の顔は幼いのだ


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