■ ギムレットB

シンデレラという響きに私の頭の中で警鐘が鳴る。
私はやばいと思って、進行方向とは逆方向に走り出す
沖矢さんの家に行けない、勿論博士の家にも、自宅も危ない
頭の中で必死に考える、だめ逃げ場がない
交番もこの辺にあったかななんて考えるけど、やっぱりなかった

助けて、誰か……!
私は必死に走る、後ろからは追ってくる気配がする

その時、背後の気配が消えた
止まって、ゆっくり振り返ると誰もいなかった


「名前さん?」


前を向くと安室さんが立っていた
安心で涙が出る


「……何かあったんですね」


静かに頷くと安室さんは私の手を引いて、車に案内した
車の中なら安全ですよと安室さんが私を声をかけた
私は今起きた全てのことを安室さんに説明した
安室さんの表情が険しくなっているのを感じた


「……確かにシンデレラと呼んだんですね?」

「はい」

「組織内であなたに近付けるのは監視役と呼ばれている人だけです
 今はジンたちもほとんど干渉せず、監視役は僕とベルモットだけになっています
 それ以外の奴があなたに話しかけてくるということはまずありえない」

「組織の人間ではないってことですか…?」

「1人だけ……怪しい人物がいます
 そいつは幹部だったのですが、ある日突然いなくなった
 このことは、ジンたちにも報告します
 あなたと僕だけでなんとかできる問題ではない
 実は今から行かなければいけない用事があるので、ベルモットを迎えに呼びます」

「ありがとうございます」


その後はすぐにベルモットが来た
ベルモットはひどく焦っていて、まるであのお花見の時みたいだなと思った


「ジンに軽く説明はしているけど、一応バーボンからも説明しておいて」

「分かりました。名前さんを頼みますね」

「ええ…
 名前行きましょう」

「うん」


ベルモットが車に乗ったところで今回のことについて、知ってることを話すわと言った


「おそらく、あなたの元に現れた男はギムレットよ」

「ギムレット…?」


組織内のコードネームは色々聞いたことがあったが、初めて聞くものだった
新一がコードネームを持つということは比較的、上の立場にいると言っていた
入りたてだとコードネームはもらえない


「ギムレットは……その酒の味のように突き刺すような鋭い男……まるで刃そのもののような…
 組織内でもかなりの危険な男だったわ
 ……そして、誰よりもキティに執着していた」


好いていたのではなく、執着していたと表現したということがギムレットの性格を表しているように私は感じた
ギムレットは若かった
私の母は見た目は若々しかったけど、かなり年はとっていた
父の方が若いと聞いたことがある

ギムレットはいくつの時に私の母に出会ったんだろう


「ギムレットが姿を消したのは、キティたちが事故に遭った後…」

「……ギムレットがお母さんたちを殺したってこと…?」


ベルモットがその可能性が高いわと言った



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