■ ギムレットA

「名前、この間のバーベキュー楽しかったね」

「うん」


本当に楽しかった
久しぶりに同年代の友達と遊んだ気がする
泊まりではなかったものの、夜までバーベキューをしたので、花火をしたり、肝試しをしたり、すごく楽しかった。
赤井さんや子どもたちともやってみたいな


「鈴木くんって本当に名前の事好きだよね。
 名前は答えてあげないの?」

「私にはもう彼氏いるから、答えられないよ
 直接言われたわけじゃないし……本当に私の事好きとは限らないんじゃないかな」


バーベキューで鈴木くんは私をたくさん助けてくれた
人の花火が当たりそうになった時、転びそうになった時、肝試しでペアになった時。
数えきれないくらいだ
常に私の側にいた


「そう〜?
 まあ、名前の彼氏さん見たことないけど、いい人みたいだし…」

「うん、素敵な人だよ
 私には勿体ないくらい」

「……鈴木くん完敗ね」

「え?」

「だって、今名前、すごくかわいい顔してたもの」


そういった友達は笑いながら、次の授業へ向かった
私はもう授業はないから帰ろうかなあ、でもなあ…

また大学内をウロウロしているとポンと肩を叩かれた
振り返ろうとすると誰かの指が頬に刺さった


「!?」

「名前さん、ひっかかったー!」

「鈴木くん…!」


最近気づいたことだ
鈴木くんは茶目っ気がある可愛らしい人


「名前さんもしかしてもう授業終わった?
 俺も終わったんだけど一緒に帰らない?」

「いいよ」


私はすっかり、鈴木くんに心を許してしまっていた。
二人で並んで、帰り道を歩き出す
家の方向が一緒らしく、偶然だねと笑いあった。

しばらく歩いたところで、鈴木くんが立ち止まった。
どうしたの?と声をかけると鈴木くんがにやりと笑った

空気が変わった
嫌な予感がして、後退る


「どうして、逃げるの?シンデレラ」


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