■ 真実は誰かの手で暈されるA

「キティは俺がFBIだと気づいていた
 それを何故かジンたちには伝えなかった」

「お母さんが?」

「ああ…理由が分からないが…」

「まさか……」


最も聞きたくない答えが私の前に提示された


「だが、一つだけ可能性があるなら、組織の人間に殺害された可能性高い」

「一体誰が…」

頭を鈍器で叩かれたような衝撃が走った
組織で母は特に敵視されていたりはなかったと思う
それなら、組織との約束がなくなっているはずだし


「お母さんが組織と私の事について約束したのはそれより前なんですか?」

「そうだな…どうしてここまで頑なに守られてきたのかは分からないがな…」

「そうですか…」


タイミング悪く、今日はジンに呼び出されていた
私は新一の家を出た
赤井さんが心配そうに私を見ていたけど気づかないフリをした
いつまでも甘えてはいられない

新一とのことも、赤井さんとのことも、やっと決着がついたんだ
私は前に進まなきゃ

新一の家から少し離れたところで見覚えのある車が横に停車した
ちらりと見ると、ベルモットだった


「あら、名前
 今からジンのところに行くの?
 私、ジンに用があるから送っていくわ」

「ありがとう」


ベルモットは私にとって、家族のようにものだ
でも、いつかベルツリーの時みたいにベルモットは私の敵になる
それがすごく辛く感じた


「ベルモットってお母さんたちと仲良かった?」

「まあ…仕事で一緒になることは多かったわね…
 プライベートでも何度か食事したことがあるから、仲は良い方だったかしら…」

「……そっか」


私が呼び出されるところはいつも別の場所だ
毎回変わるのは、アジトなとがバレないようにするため

私も少しは警戒されているのかな


「久しぶりだな、シンデレラ」

「…私は名前」

「キティによく似てきたな…」

「ジンって……お母さんと仲良かったの?
 いつも、私に会うとお母さんの話するから」


ジンの表情が少しだけ歪んだ
不快な表情だと思う


「お母さんたちの死に関しても知ったら、私組織に連れていかれるの?」

「そうだ」

「……そっか、じゃあ組織関連の重要機密なんだね」


ジンの表情が崩れた
隣に居るベルモットが少し焦ったように私を見た
叩かれようが、半殺しにされようが、殺されなければいい
組織の人間は私を殺せない

ジンがにやりと笑った
手をあげたのが分かった

私叩かれる
前に世良ちゃんに教えてもらったカウンターを仕掛けると、ジンは後ずさった
一瞬怯んだところを狙って、私はジンに拳を振り上げる
寸止めだから、当たってはいないけど


「私は…いつまでもあなたたちのいうとおりに生きるつもりはない」

「……ずいぶんなじゃじゃ馬に育ったじゃねぇか…躾が必要か?」

「ジン!」


ベルモットが仲介に入って、なんとか落ち着いた
大丈夫、私生きてる


「……私は自由に生きる」

「好きにすればいい
 お前が約束を破らない限りは俺達は干渉しない」


私はジンに背を向けて、そのままアジトを出た
数日後にはきっと移動する捨てアジト、特徴を覚えていても何の意味もない

お母さん、お父さん、スコッチ、ごめん
私はどうしてもあなたたちの死の真相が知りたい


「……名前、あなたいきなりどうして…」

「ベルモット、私やっと前に進めたの
 それに私はずっと前からこの生活がいつまでも続くものだなんて思ってない」

「分かってるわ…
 あなたが両親の事や色々なことを知りたいと思うのは当たり前…
 でも、ジンをあまり怒らせないで
 ジンはあなたに攻撃するつもりはないわ
 ジン、キティのこと気に入ってたから」


気に入ってた?
ジンがお母さんを?


「あなたのこと、キティと重ねているのよ
 だから私とは違って、あなたを撃ったり、攻撃したりはしないと思うわ
 でも、それを知った上でジンを神経を逆撫でするようなことはやめなさい」

「ごめん、心配かけちゃった」

「いいのよ
 家まで送るわ、乗って」

「今日は寄り道してから帰るから大丈夫
 またね、ベルモット」


しばらく歩くと、ベルモットの車が私を追い越した
車の中には銀髪の女性が乗っていた
その人とすれ違う一瞬で目が合った


「綺麗な目…」





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