■ 緋色の疑惑D

目が覚めると見知らぬ部屋にいた
どうやらこの部屋には誰もいないようで静まり返っていた


「縛られてる……」


見たところどこかのビジネスホテルのようだった
手は縛れているものの、足は縛れていなかったので立ち上がることができた


「私の荷物はなさそう
 どうしよう…」


固く縛られているから手の拘束はほどけそうにない






「もしもし、どうしたの?」


コナンは珍しく、赤井から連絡があり、不審に思った
バーボンがまた何か行動を起こしたのか?と思う彼の直感は一級品だ


《さっきから名前と連絡が取れない
 バーボンに先手を打たれたかもしれない》

「どうしようか…」


赤井ならきっと名前を助けに行くというはずだとコナンは思っていた
だが、赤井が言ったことはコナンにとって予想外のものだった


《名前なら心配ない》

「え?」

《名前は俺達が思っているよりも何倍も強い
 俺は名前を信じる
 それに、バーボンも名前が相手なら危害を加えることはないだろう》

「分かった…
 でも居場所を突き止められるようだったらつきとめてほしい」

「ああ……また何かあったら連絡する」

そう言って、電話が切れた
コナンは赤井が言った言葉を思い出していた

名前を信じるか…


“新一、大丈夫?
 あ〜血出てる
 ふふ、大丈夫だよ
 蘭ちゃんには秘密にするから”

“蘭は関係ねぇだろ”

“新一は素直じゃないなあ”


昔、石につまづいて転んだ時、蘭と喧嘩した時、名前はいつでも俺たちにとって頼れる存在だった


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