■ ゼロE

安室さんの言葉を聞いて、みんなが高坂さんを見た


「ちょ、ちょっと待って……最初から毒を塗ってたって…
 樹理はずっとそのハーブティーを飲んでいたのよ?」

「忘れたんですか?
 毒が付いていたのはカップの左手でとらないように気を付ければ…毒を口にすることはありません」

高木刑事が「じゃあ毒はいつから?」と聞くと、「入院前から持ち込んでいたんでしょう」とアろさんが答えた

安室さんはやっぱり頭が良い
だからこそ、新一は警戒している
味方になってくれれば心強いけど、敵になればここまで驚異的な人はいない
私たちの周りの人たちとも深くかかわっている
もし、新一のことや哀ちゃんのことがバレたら、私もただではすまない
きっと、関わっていることなんてすぐにバレてしまう


「忘れてんじゃないの?
 樹理が飲んでいたのは青いハーブティーで伶菜が飲んでいたのは赤いハーブティー
 いくらレモンが浮いてたからって取り違えるわけないじゃない!」


「そう……レモンこそがこのトリックの肝だったんですよ」


安室さんの言葉に蘭ちゃんのお父さんが「肝?」と首を傾げた
安室さんが説明しようとするのを遮るように新一が「わー!ホントに青色だー!」と声をあげた

私は新一に駆け寄る
安室さんや蘭ちゃんのお父さんも駆け寄ってくる

新一が持っていた青い紅茶とレモンが入ったカップを見ていると、青い紅茶が赤く染まっていく


「青いお茶だったのに…レモン入れたらどんどん赤くなってるよ!」

「ま、まじか!?」

「こりゃあすごい…」

「科学の実験みたいだ…」


レモンの酸性が反応して変色した
これ以外にも同じ反応をするハーブティーにブルーマロウがある
酸性を中性にするにはアルカリ性のものを入れる必要がある

安室は棚に入っている重曹を取りだし、新一の持っているカップの中に入れた
すると紅茶はまた青色に戻った

安室さんが一連の犯行を語ると、別府さんが証拠はあるかと言った
確かに決定的な証拠はない


「あれれ?おばさんの左手の親指……赤くなってるよ
 ケガでもしたの?」

「あ、いやこれは……」

「犯人には現場から消し去らなきゃいけないものがあったんです
 それは須東さんが最初に飲んでいたカップについた口紅……
 咄嗟に指でぬぐってついたんでしょう」

「つまり須東さんの口紅とこの赤色が一致すれば証拠になるな……」


高坂さんは観念したように動機を語った
そして警察の人に連れられて行った


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