■ ゼロC

高木刑事が現場には毒物をいれたような容器や袋は見つからなかったと報告をした
床にこぼれたハーブティーからは毒物は検出されなかった


「何!?じゃあどうやって毒殺を!?」

「実は毒が付いていたのは……」


新一が目暮警部と高木刑事の話に入ろうと「もしかしてそれってティーカップの…」と言いかけている途中で蘭ちゃんに捕まっていた
助けに入るべきかなとゆっくりと駆け寄る


「コラ!何してるのよ、もうー!
 捜しちゃったじゃない!ダメって言ったでしょ?うろちょろしちゃ…」

「だってー」


安室さんが蘭ちゃんと新一のやりとりを見ながら、何かを思い出しているような、思いにふけっているような表情をしていた


「名前もよ!
 最近新一に似て…」

「え?私も…?」

「ホラ!もう帰るよ」

「あ、でも事件が〜」


新一の発言を聞いて、蘭ちゃんが「さっきパトカーのサイレンの音してたけど…まさかこの病院で何かあったの?」と思い出したよう言った


「うん…
 女の人が毒で殺されちゃって、目暮警部も高木刑事も小五郎おじさんも頭かかえてて…
 大変なんだよ!」

「でもね、コナンくん
 窓の外を見てみて…青いお空が真っ赤になっちゃってるでしょ?
 子どもは帰る時間なの…
 だから事件はお父さんたちに任せて……ってちょっと〜!」


蘭ちゃんの声にひらめいたように新一は走り出した
私はさっきの安室さんの表情が気にかかっていた

実は少し前から、安室さんと交渉する前から、もしかしたらスコッチが言ってた人が安室さんなんじゃないかと思っていた
だから、わざと交渉して少し反応を見ていたけど、そんな簡単に表情は崩れなかった

でも、さっきそれが少しだけ崩れた
そして、『ゼロ』に反応した時に過ったあの記憶

ぶるりと悪寒がして、反射的に振り返る


「……誰もいない」


最近、悪寒が定期的に増えている気がする
間隔もどんどん短く……なんていうのは考えすぎかな

完全な確証を得ていないから、赤井さんや新一に相談して心配させたくない
もう少しだけ、様子を見よう


「名前どうした?」

「し、コナンくん…」


近くに他の人がいることに気づいて、咄嗟に呼び方を変える
ギリギリセーフ…


「お前、顔色悪いぞ……大丈夫か?」

「平気だよ
 体調も少し良くないみたいで今日は早く休むよ」

「それならいいけど…」


そういうと新一が「犯人が分かった。事件解決してくる」と言ったので「いってらっしゃい」と返した

それでも、まだ悪寒は止まらない
すぐ近くに何かがいるようなそんな感じ
私は新一が立ち去るのを確認してから力を抜いた
そして、そのまま床に座り込む


「誰…?」


勿論、返事はなかった


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