■ ゼロA

「ん?どうかしたか?」

「あ、いえ…
 僕のあだ名も『ゼロ』だったもので、呼ばれたのかと…」

「何でゼロ?確か名前は透だったよな?」

「透けてるってことは何もないってこと
 だからゼロ…
 子どもがつけるあだ名の法則なんてそんなもんですよ」


ゼロ?
どこかで聞いた気がする


“助けて……誰か……”

“誰も助けなんてこないよ、君もキティみたいに……”


え?これは何の記憶…?


“助けに来ましたよ、シンデレラ”

“だれ…?”

“僕はゼロ、あなたの味方です”


覚えのない記憶が頭を過る


「名前お姉ちゃん、顔色悪いよ
 大丈夫?」


ハッとして、顔を上げると新一が立っていた
その視線は私を心配するようなもので、私がよっぽど顔色が悪くなっていたことが窺える


「あ、うん
 大丈夫だよ
 ごめんね、ボーっとしてた」


その時、突然悲鳴が聞こえた
悲鳴が聞こえた病室に入ると女の人が倒れていた







「しかし…病院で毒殺とはな…」

急いで警察に電話すると目暮警部が来た
最近会う頻度が多い気がする
亡くなった女性はお茶会の最中に突然苦しみ出したらしい
死因は青酸系の毒物によく窒息死だと警部さんが説明した


「あれれ〜おっかしいよー!」

「「え?」」

「だってホラ、ここに落ちてた携帯電話に色々写真入ってたけど……
亡くなったおばさん、右手にお箸持ってるよ!
床に落ちて割れてるカップ…よーく見てみてよ
カップの取っ手の右の方に口紅付いてるじゃない!
これって左手で紅茶を飲んでたってことだよね?」

「「た、確かに……」」


私もカップをチラリと見た
本当だ


「でも何で被害者は左手に……」

「右手が何かで塞がっていたからですよ
例えば携帯電話の写真を見ていたとか……
人は何かに夢中になるとその他のことに疎かになる
たとえ、カップの位置や取っ手の向きが変えられていたとしても気づかずにとってしまう
その心理を利用して犯人は被害者に毒を飲ませたんでしょう
毒を入れた自分のカップと被害者のカップをすり替えてね……」

「すり替えた?」

「ええ…気づかれずに被害者のカップに毒を入れてすり替える方がローリスク…
 皆さんカップの受け皿を使っていなかったようなのでカップの位置をずらしやすいですし…
 ですよね?毛利先生!」


安室さんは演技にブレがない
実際にブレがあったら、組織にすぐにバレるだろうけど
新一や私よりもずっと、安室さんは立ち回り方が上手い

亡くなった女性とお茶会をしていた人たちが「すり替えられるわけがないじゃない!」と言った
確かに、紅茶の色はみんな違う
すり替えたら、すぐに分かる

警察の人たちは、被害者と一緒にお茶会をしていた3人に事情聴取することにしたようで、部屋を移動した




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