あなたの色に染まる 番外編 | ナノ
そうだ京都に行こうD


和葉ちゃんや蘭ちゃんたちと別れて、秀一さんと宿泊予定のホテルへ向かっている途中、ふと秀一さんが思い出したようにこんなことを言った


「今日…結婚記念日だな」


そうだ、二年目の結婚記念日だ。
一年目は急な仕事があって、特に何もしなかったから今年も特に何もないと思ってた
というか、覚えてたんだ…と驚いた。


「そうだね…」


何とも微妙な空気が流れる
秀一さんの表情はなんか強張っていた
ど、どうしたの!?


「なまえ、大事な話がある」

「え?はい…」


すると、秀一さんは私の手を取った
まるで、おとぎの国の王子様のように。
その流れが美しくて、私は見蕩れた。


「これからはきちんと日付が変わるまでに帰るようにする
 これからも、俺の妻でいてくれ」


秀一さんの言葉に思わず、目を見開いた
言葉の意味がイマイチよく図り切れず、首をかしげる。
もしかして、離婚されるとかそういう不安があって、言った言葉じゃないよね…?


「もし、俺が嫌になったなら言ってくれ
 お前の事をアメリカに連れて行ったのはいいが、放置しっぱなしだ
 離婚を切り出されても仕方ない」

「待って待って……秀一さんどうしたの…いきなり…
 私、離婚するつもりなんてないけど」


寂しいのは事実だけど、秀一さんのこと嫌いになれるわけがない
秀一さんは私の初めてで最後の恋人だ


「秀一さんは、私にとって全てだよ
 私はもう秀一さんなしじゃ、生きられない」

そういうと、秀一さんは私の手をそっと握った
それを合図に私たちはまた宿泊予定のホテルへと歩き出す


「……嬉しいよ
 秀一さんがそんなこと言ってくれて…
 私の事本当に好きでいてくれてるんだな…って思えた」

「俺はお前が思っている以上に心配性だ」

「昔からそうだったよね…私の事ずっとそれで守ってくれてたんでしょ?」


私はずっと、秀一さんに守られてきた
それを知ることになるまでにかなりの時間がかかったけど、きっとスコッチもそれを分かって……


“おにいさん!私が大きくなったら結婚して!”

“大きくなってまだ俺の事が好きだったらもう一回言いに来てくれ”

“うん!”


「そうだ、もう一つ話がある」

「え?何?」


秀一さんの顔を覗き込むと、顔がすぐ近くまで迫ってきて、そのままキスをされた
唇が離れたことに気づいた時、秀一さんが言った


「そろそろ子どもが欲しい」

「え!?今このタイミングでそれ言う!?」


秀一さんはいつでも突然だ
日本へ行こうと言い出すのも、結婚の時も。


「今、言いたくなった」


もー!と言いながら、嬉しそうに笑う私を見て、秀一さんも笑った
二人で京都の町を歩きながら、これからのことを思い描いた。



end

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