あなたの色に染まる 番外編 | ナノ
そうだ京都に行こうA


私は今、京都にいます
朝早く起きて、秀一さんの車で空港まで行って、飛行機に乗って、あっという間に京都


「わー!紅葉がすごく綺麗ですね!」

びゅうっと少し冷えた風が私の体をすり抜ける
今日は少し冷えるって天気予報で言っていた気がする。

「今日は冷えるな」

「少しだけ厚着してきて正解でした!」

秀一さんがどこかでお茶でも飲もうと歩き出した
紅葉が地面に敷き詰めれていて、まるで紅葉のじゅうたんのようだった

スマホを撮りだして、カシャッとその光景を記録する
本当にかっこいいな、私の旦那さんは

“なまえ、アメリカについてくれないか”

組織のことが片付いた時に、秀一さんはアメリカに帰ると私に言った
私はどうしても日本を離れる気にはなれなかった
今のこの生活を手放したくなかった…

でも、秀一さんがついてこいと言ってくれたら、行こうって私の中で決めていた
もしかしたら、秀一さんは私に日本に残ってほしいんじゃないかと思ったのも日本を出る気になれなかった理由の一つだ

突然の事でその時、私は意味も理解しないまま、はいと返事をした

意味を理解して、私はついていってもいいんだと嬉しくて涙が出た


「新一に送っちゃおう」


LINEで新一に写真を送る。
そして、秀一さんを追いかける

昔は、躊躇していたことを今ならできる
秀一さんの腕に手を添えた

二人でゆっくりと歩き出す
私は幸せだ

ブルルと携帯が震えた
新一かなと思って、開くとずっと連絡が取れなかったベルモットからだった
間違って、ベルモットに画像を送ってしまっていたらしい
ベルモットとは二年前からパッタリと連絡が取れなくなっていた
根気強く何度もメッセージや近況を送ったりしたけど、既読はつかなかった


《幸せになりなさい》


たった一言だったけど、私はその言葉の意味を知っていた
ベルモットなりのさようならなんじゃないかと思った
秀一さんや新一やベルモットのことを恨んだりしていたとしても、私にとっては残された家族のような存在だった
スコッチもお母さんもお父さんもいなくなった私の最後に残った家族


「…なまえ?」

「なんでもないよ!早くどこかの喫茶店に入ろう」

「後でボウヤたちに、連絡でもとって合流できたらするか
 半年ぐらいは会えていないだろう?」

「……もう、本当にできた旦那さんだなあ」

「今更、気づいたのか」


秀一さんが冗談を言うのは久々で、思わず笑う
二人でやっと見つけた喫茶店に入る

まだ旅行はこれからだ

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