良い人、悪い人、悪い女
大学に入学し、零くんとはそれなりに気まずいのが続いたものの、私たちはなんとか昔のように戻りつつあった
同棲をしようと提案され、拒否する理由もなく、私は素直に嬉しかったので了承した
幸せだった
でも、私はすっかり忘れていた
あの未来のことを
「…!」
久々に見た夢は最初に見た夢と同じに戻っていた
隣に寝ている零くんを見た
スコッチさんも救いたい、でも零くんだけならなんとかなるかもしれない
零くんが警察にならなければ、零くんがあの光景を見ることはない
大学の学食でご飯を食べていると零くんは向かいに座ってきた
1人なのが、珍しかったので、どうしたのかと聞いてみると、友達にたまには彼女と食べろよと言われたらしい
零くんの友達は私に結構気を使ってくれる良い人たちだ
私としては、零くんには友達ともっと仲良くしてほしいと思っているので、私のせいで零くんと友達たちの仲にヒビを入れてしまったらどうしようと心配している
「あはは、零くんの友達は本当に良い人だね」
「お節介なだけだ」
満更でもないくせにと笑うと、真っ赤になって言い返してくる
零くんは素直じゃないし、すぐ怒るし、でも私にはそんなの関係ないくらい好きなんだ
「零くん、また警察目指すんだって?」
零くんの友達からきいた話だ
私には何も相談してこないのだ、零くんは
「あいつらから聞いたのか…いうなっていったのに」
「零くんを心配しているんだよ
私の事もね……本当に良い人だよ」
私はそれに甘えてしまっている
あの人たちが良い人なら、私は悪い人だ
「零くんは、警察向いてないかも」
「どうしてそう思うんだよ?」
「だって、すぐに頭に血上るし……」
零くんのどこか傷ついた顔に私は胸が張り裂けそうだった
私には覚悟がなかった
零くんを本気で止めるなら、私が悪い人になってでも止めなきゃいけないのに
私はそんなことに気づかぬふりをして、目を逸らした
零くんはそんな私を悪い女って思っただろうな
心の中で、自分を嘲笑った
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