毒を吐き出す
長髪の人にそっくりな彼は、私を見て、瞳をわずかに揺らした
涙、止まって、お願い
止まらない涙を私は必死に拭う
「どこかで話をしよう」と私の腕を優しく引いてくれた
私は静かにうなずいた
喫茶店に入ると「俺は赤井秀一と言う、君は?」と聞いてきたので、私も名前を告げる
「……ずいぶん、思い詰めていたようだったからな」
「……赤井さん、私の事変な子って思うかもしれませんが、話を聞いてもらっていいですか」
「ああ」
私は事のすべてを赤井さんに告げた
赤井さんは私の話を黙って聞いてくれた
変な子って思われても構わない
私は誰かにこの話を聞いてほしかったのだ
話終えると、赤井さんは「信じられる話じゃないが、信じる」と言ってくれた
「私、どうしても彼を助けたくて…」
「実は、俺はこれからしばらくしたらアメリカに帰ることになっている
だから、協力はできない
でも、将来的には協力できると思う」
「え?」
「俺はこれからFBIの試験を受けにいく
受かったら、多分日本の仕事を任される
だから、未来で俺が日本に存在する」
「赤井さんはいずれまた日本に帰ってくるってことですか」
赤井さんは頷いた
そして、だから「今、君は大学受験だけに専念するんだ」と言われた
私に、今できることは零くんと同じ大学にいって、あの未来を少しでも変えることなんだ
私は赤井さんと喫茶店の前で別れた
念のために、携帯番号とメアドを交換した
協力してくれるくれないではなく、このことを誰かに知ってもらえたのが私にとって、凄くうれしかった
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