私の想い出 | ナノ

私を受け入れてくれて


別れを告げられて、数年が経った
私はあのあと大学を卒業して、小説家になった

今書いている「return(リターン)」は好評
ファンから届く感想やファンレターやプレゼントで部屋がいっぱいになった

零くんは読んでくれるだろうか
いや、零くんは現実主義だから、そんなの読まないかな

少し変わったことと言えば、家に赤井さんが時々来ることくらいだ
良く分からないけど、今は沖矢昴という名で生活してるらしい

スコッチは結局助けられなかった
あの日、私は隣のビルからその光景を黙って見ていた

少し機会があって、スコッチと話をした
彼は自分が死ぬ運命を受け入れた

私にはもう何も言えなかった



「赤井さん、暇なの?」


「今は特にやることがないからな…」


「私は忙しいんだよ…
 もうすぐで最終話が書き終わるけど…」


「…終わったら死ぬつもりなのか」


振り返ると、赤井さんが凄く悲しそうな顔をしていた
私は静かにうなずくと、赤井さんはそうかと言った


「俺は、君の事なかなか気に入っていたんだがな
 あわよくば…と思っていたよ」


「残念でした
 私は零くんじゃなきゃだめなんだよ」


最終話を書き終えて、私は零くんへ手紙を出すことにした
この話は最後、主人公が死んで終わる

私の物語だ
私が終わらせないと


「赤井さん、今までありがとうね
 私も赤井さんのこと好きだったよ」






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