想い出 | ナノ

未来の日


俺は本屋に、本を買いに出かけた
なんとなく歩きたい気分だった

本を買って、また歩いて家に帰る

なんか不思議な気分だった


本を開けて、読み始める
読み終える頃には俺の目からは涙が流れ落ちていた


“私は、彼を守れることができた
 もう安心して、この物語を終えることができる

 彼にとって、私は身勝手で嫌な彼女だっただろう
 それでも、悪役になろうが、彼に嫌われようとも彼の未来を守れるならなんでもよかった
 私は幸せだった
 彼の事を好きでいられて、彼に好きになってもらって、誰かのために何かをしたいと思えて、幸せだった”



俺はここでやっと気づいた
本の作者がなまえだと

1巻から4巻までに隠されていた主人公の名前や、彼氏の正体、守りたかったもの全てが明かされた


現実的にあり得ない話だが、なまえは俺の身に起こることを全てを知っていた
それで、俺を守ろうと必死になった

俺がそれをうっとおしく感じていたことも鋭いなまえはとっくの昔に分かっていた

スコッチもことも分かっていた
だから、俺に警察になることを止めていた

俺が悲しみや憎しみに蝕まれると知っていたから


俺は無性になまえに会いたくなった
謝りたかった
お礼を言いたかった

ゆっくり目を瞑る
なまえが死んだあの日に戻れたら………


「零くん?何でここにいるの?」


気が付くと、どこかのマンションの屋上にいた


「なまえ…?」


「…零くん……」


なまえは顔を真っ赤に泣きはらしていた
こうさせたのは俺のせいなんだろう


「なまえ、俺はどんなに辛い未来があっても、生きていく
 これからも俺の傍にいてくれ」


「……いてもいいの、私身勝手で……」


「それは俺のためだろ?」


なまえの瞳が大きく揺れた


「全部、受け止めるから死なないでくれ」


なまえを抱きしめるとなまえもおそるおそる背中に手を回した


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