想い出 | ナノ

何も分かっていない


“何度も繰り返されるタイムスリップに私は頭が変になりそうだった
 どんな頑張っても、彼を救えない
 彼を救いたいのに、どうして

 私は変わらない未来に抗おうとしていた”



小説の最後を読み終わり、パタンと本をしまう
この小説で主人公は彼の未来を救おうとしていたが、何を救いたかったのかは分からないままだ
きっとこれは、来週の最終巻で明かされるのだろう

これがかれこれ、4巻も続いているのだ
大半が彼との記憶だったり、彼を守るための行動だったり

全て伏線なのだろうか?


時計を確認するとそろそろポアロのバイトの時間だった
俺は急いで車へ向かった




「コナンくん、この間の本を買ったよ
 なかなか面白かったよ」


「でしょ?
 蘭姉ちゃんもみんな読んでて、人気なんだよね」


俺は嘘くさい笑顔で笑う
話は面白かった
しかし、本の内容に妙なものを感じた

何というか、デジゃヴじみたものである


「そういえば、来週最終巻発売だってね」


「そうなんだ、また本屋に行かなきゃだね
 コナンくんは守りたかった未来は何だと思う?」


「……僕は、彼自身と誰かの存在じゃないかなあって思うよ
 3巻で彼氏の大切な人が死ぬ描写があったでしょ
 それも詳しくは書いてないけど、少し引っかかるなって」


「彼氏の部下が死んだんだっけ…」


3巻で彼氏の部下が死に、主人公はその時、『また――……』と途中で言葉を止めたのだ
俺もそれが妙に引っかかっていた


「まあ、どうなるかは来週まで分からないけどね」


すると、コナンくんは用事を思い出したようで、ポアロから出ていってしまった





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