予測不能なことはよく起きるF
部屋に全員が揃い、新一が時計型麻酔銃を蘭ちゃんのお父さんに向けた
その時に安室さんが新一の時計を覗き込んだ
私が入っても余計ややこしいことになりそうだったから新一の様子を見ていることにした
「何してるんだい?コナンくん」
「腕時計のふたが壊れちゃって…」
安室さんの前で眠りの小五郎は何回かしたことはあるけど、今はちょっと危ない
私にやってもいいけど、安室さんがいる中ではどっちにしろ危険だ
「だいたいよォ、あの大きな音って花瓶が落ちた音じゃねぇんじゃねーか?」
「勝手に花瓶が落ちる訳がないし…」
確かにそうだ、新一が寝ぼけて落としたとかそういうこともないだろうし
「建物がきしむ音だったのかなぁ?」
「きしむ音なら冷やし中華を食べてる時に聞こえたわ
でも、あの大きな音とは違ってたよ」
「冷やし中華っていえばさー
氷使うよね?」
“なまえ、花瓶から出てきた水は氷が融けたものかもしれねーぞ”
“もしかして…氷を使って…殺したの?”
「氷って融けるじゃない!
だったら、花瓶が氷でできてたら融けて勝手に落ちるのになーって思ってさ!」
「ちょっと待ってください…もしもあの花瓶の中の片側だけ氷を大量に積み上げてギリギリの位置で棚に置いていたとしたら…氷が融ければ勝手に落ちるんじゃあ…」
蘭ちゃんのお父さんが、氷を運んでいる時にばれるんじゃないか?というと、安室さんがテニスウェアのポケットは大きめに作られているから入れて運ぶことができると答えた
「そういえば氷ってさー
ツルツル滑るよね?」
「そっか!分かっちゃった!お尻の下にあったラケットの下に氷を敷いて遺体を滑らせて動かしたのよ!
ラケットのガットが数か所歪んでいたのがその証拠よ!」
「さすが園子!」
でも、床に氷の融けた水は残っておらず、遺体のズボンも濡れていなかった
「融けても何も残らない氷みたいなのがあればよかったのにね!」
「もしかしてドライアイス?」
「そうだとしても、ドライアイスはそう簡単に運べねーぞ」
「石栗さんに運ばせたんですよ!アイスケーキの中にドラスアイスが入っていたでしょうから…」
蘭ちゃんが「私があの部屋に行った時にクーラーだと思ったのはドライアイスだったんだ…」とこぼした
その時、蘭ちゃんのお父さんが犯人が分かったと手を組みながら、言った
ドラスアイスがあったことを裏付けるような発言をした梅島さんは除外
新一が部屋にいることを知っていた高梨さんも除外
「となると、残りは2人よりも先に石栗さんの部屋に行き、氷やドライアイスが融ける時間を十分に稼げた桃園琴音さん
あなた以外に犯人は考えられませんなァ!」
「じゃあ合鍵はどこにあるのよ」と梅嶋さんが、「鍵、かかっていただろ!?石栗の部屋!」と高梨さんが言った
「あの…スポーツドリンクの中はありえないんですか?」
事件に関われば安室さんに怪しまれるかもしれないから、あんまり何も言わないようにしてたのに、新一から頼まれてしまって、仕方なく私は口をはさんだ
“合鍵の話になった時にさりげなく、スポーツドリンクの話を出してくれ”
勿論、他の人からは無理だろと反論された
新一をチラリとみると、なんか楽しそうで、後で小言を言ってやろうと決めた
「鍵を入れたらすぐ凍っちゃうような魔法の水があればいいのにね!」
「バーカ!そんな漫画みてーな水があるわけが…」
「ありますよ…過冷却水…
振動などの刺激を与えたりすると急速に凍り始める…
恐らく、琴音さんは過冷却になったスポーツドリンクの中に鍵を入れて振動させ、上の方かが凍ってからひっくり返して鍵のドリンクの中央に寄せてから全体を凍らせたんでしょうね
そして、それを園子さんに飲ませたんでしょう」
スポーツドリンクはかすかに色がついているし、ジェル状に凍るため、中の鍵は見えなかった
スポーツドリンクを溶かせば桃園さんが殺した証拠が出てくると安室さんが言うと、他の2人が反論した
「もしでてこなかったらあんたら…」
「ダメよ…出てきちゃうから、私の指紋が付いた合鍵がね…」
桃園さんの殺害動機は好きだった瓜生さんが石栗さんに突き飛ばされて、そのまま雪に埋もれて死んでしまったことの敵討ち
涙を流しながら語る桃園さんに私も涙が出そうになった
新一が私を見て、首を横に振った
わかってる、どんな理由であれ人を殺してしまった人に同情しちゃいけないって
それでも、自分がその立場だったらと考えてしまう
赤井さんが殺されたら?私はその人を許せるわけがない
「私もはまっていたのかもしれないわね
もがけばもがくほど破滅へと導く底なし沼に…」
桃園さんの悲しげな声が静かな部屋によく響いた気がした