予測不能なことはよく起きるA


安室さんがウォーミングアップをしているのを黙って見ていると、ちょうど新一たちもやって来た
新一は険しい顔で安室さんを見ていた
ついこないだベルツリー急行で色々あったばかりだし、新一が警戒するのもわかる


「ジュニアの大会で優勝したことがあるらしいってポアロの店長に聞いて驚いたよ」という蘭ちゃんのお父さんの発言を聞いて、私はだから安室さんが園子ちゃんのテニスのコーチに選ばれたのかと納得した

「まあ、その直後に肩を痛めてこのサーブ数は打てないんですけど…
 教えるだけなら支障ありませんから」

「よろしくお願いしまーす♪」


園子ちゃんの元気な声とは反対に新一は険しい顔をしたままだ
私が安室さんとした取引のことを話したら怒るだろうな
このことは新一だけじゃなくて、赤井さんにも言えない
スコッチのことも新一には言えない

私はみんなみたいに安室さんをそこまで警戒していない
なんか、違う………よくわからないけど、そんな気がする

そう、スコッチに似ているんだ


「でも、大丈夫なんですか?体調を崩されたって聞きましたけど…」

「ちょっと夏風邪をひいただけですよ!
 週明けにはポアロのバイトにも復帰しますし!」


蘭ちゃんと安室さんのやり取りが耳に入って、目を見開く
え?安室さん戻るの?
新一の表情は見なくてもわかる…きっと私と同じ顔してる


「しかし、ギャラリーが多いですね」

「じっかのプロテニスプレイヤーが来たと勘違いしてんだよ」


新一が私に近づいてくる
何を言いたいのかはわかるよ、安室さんが来ることを知らせなかったことを怒ってるんでしょ
新一に言ったら、すぐ帰れとか言ったり、赤井さんや博士に連絡しろとか言うんでしょ?


「なまえ、知ってたのか」

「安室さんが来ること?
 園子ちゃんから連絡がくるまで知らなかったよ
 ……私は安室さんをそこまで警戒しなくていいと思う
 もし、何かをするとしても蘭ちゃんたちがいる前では何もしないよ」


哀ちゃんの命を奪おうとした相手を信用するのは無理なのはわかる
それでも、安室さんは私たちの敵だとは思えない

ただ、赤井さんにとっては危険な存在かもしれない
安室さんが赤井さんの敵となった時は迷わず、赤井さんの味方をする


「…何か言われたのか?」

「ううん、何も」


私は新一に初めて嘘をついた
勘のいい新一のことだから何か勘づいているだろう
だから、私に「何か言われたのか?」と聞いたんだ


「何かあったらすぐに言えよ
 俺にでも沖矢さんにでも」

「うん」

「ではサーブから始めましょうか?」

「なまえ、コナンくん
 ボール危ないから下がってて」


蘭ちゃんの声掛けに新一が「いや、危ないのはボールじゃなくて…」と言おうとした時に安室さんが何かを気づいたようにこっちを見た


「危ない!」


その時、どこからか飛んできたラケットが新一の頭に激突した