漆黒の特急C
哀ちゃんの元に戻ると煙が充満していた
「火事?」
「バーボンの仕業でしょうね」
煙で充満している部屋に入ると哀ちゃんがもうスタンバイしていた
「それよりもなまえ、私に内緒でまた何かしているのね」
「後で新一から説明あるから……そんなに怒らないで…」
哀ちゃんが鬼のような形相で怒っていた
でも、これは哀ちゃんなりの優しさだ
「バーボンが来たわ」
《さすがヘル・エンジェルの娘さんだ…
よく似てらっしゃる…
初めまして、バーボン
これが僕のコードネームです》
安室さんの声だった
バーボンはやっぱり安室さんだった
《バーボンこのコードネームに聞き覚えはありませんか?
君の両親や姉とは会ったことがあるんですが…》
哀ちゃんは隣でキッドに返事を教える
「ええ…知ってるわよ
お姉ちゃんの恋人関係にあった諸星大とライバル関係になった組織の一員…
お姉ちゃんの話だとお互い毛嫌いしてたらしいけど」
《ええ…僕が睨んでいた通りあの男はFBIの犬でね
組織を裏切った後、殺されたっていうのがどうにも信じがたくて…》
諸星大が誰かはわからないけれど、FBI・殺されたというキーワードが引っかかった
《あの男に変装し、あの男の関係者の周りをしばらくうろついて反応を見ていたんです
お陰であの男が本当に死んでいることが分かりましたけどね》
安室さんが変装していたのは赤井さん
つまり、安室さんが指す『FBI、あの男』は諸星大=赤井さんということになる
赤井さんが明美さんと付き合っていた…?
“秀兄、その時FBIの彼女いたのに、別れて、日本行ってすぐに彼女できてさ
隅に置けないなって思ってたんだ”
真純ちゃんとの会話が頭を過った
そうだ、ジョディさんと別れた後に彼女がいたって…それは明美さんのことだったの?
“なまえちゃん、妹をお願いね”
私は大きな爆発音でハッと顔を上げた
「爆発…?」
「最後の車両にたくさんの爆弾が仕掛けられていたらしいわ…
バーボンがキッドを最後の車両に連れて行って…」
「キッドは!?」
「分からないわ」
新一に急いで電話をすると、「キッドなら大丈夫だろ」と呑気に返されたので、「ばか!こんなの聞いてない!」と電話を切った
キッドだって人間だ
あんな危険な目に遭わせるなんて…
「なまえ、大丈夫?
顔色が悪いわよ」
「大丈夫だよ、少し疲れただけ」