漆黒の特急A


「ん…!」


誰かに部屋に引きずり込まれ、口は塞がれているため、声を上げてもそこまで響かない
腕は後ろでひとまとめにされてしまい、逃げることができない

誰?安室さん?ベルモット?


「なまえ」


その声は赤井さんのもので、私は動揺を悟られないように落ち着け落ち着けと心の中で呟く
私は赤井さんが死んで、失恋したことになっている
赤井さんが生きているとバレてはいけない


「んん!」


ベルモットは私の拘束をといて、向き合った
火傷があること以外はいつもの赤井さんだ


「………」

「久しぶりだな、なまえ」

「生きていたんですね」


赤井さんの顔が近づいてきた
これはベルモットの演技だ
ベルモットは本気だ
なら、私も


「赤井さん、私との誰にも言っていない約束覚えていますか」


ベルモットが少し動揺したのが分かった
私はベルモットに言った


「嘘つき」


自分でも驚くくらい低い声が出た
ベルモットは特に気にすることなく、言った


「よく分かったわね、私だと
 何か確証を得る材料でもあったのかしら」


変装をとらないまま、赤井さんの顔のまま、ベルモットは笑った


「私は心の底から赤井さんを愛してた
 分からないわけがないよ」


子どもっぽい理屈のない言い訳を並べる
意識を赤井さんの生存から離せればそれでいい


「ベルモットの狙いは哀ちゃんを始末することでしょ?
 お仲間さんもそうなのかな
 そうだとしても、哀ちゃんには強い騎士が2人もついてるから諦めた方が良い」

「2人…?」

「私も新一も哀ちゃんを守る」

「残念だけど、あなたはここまで退場よ」


睡眠ガスを吹きかけられて、私の意識が遠のいていく
悔しい、また……まただ


「なまえ、今回の件はジンも知っているわ
 あなたが良い子にしていたら、あなたがいたことは言わない」

「残念ながら、騎士は私じゃないよ……
 ベル、モット……」