哀れな男


「久しぶりだな、シンデレラ」

「私はシンデレラじゃない」

「少し会わねぇうちにずいぶんな口をきくようになったな
 男でもできたか?」

「できたって言ったら、どうなるの」


ジンはピシッと動かなくなった
ベルモットはどこか楽しそうに笑っていた

私は、決めたのだ
組織と戦うと、1人じゃなくて、みんなで


「ジン、あなたの負けよ
 本題に入りましょう」

「あぁ…」

「なまえ、あなたの監視にバーボンもつくことになったのよ」

「バーボン……」

“なまえ、バーボンはポアロでバイトしているという安室透だ”


“安室さんが?”

“お前に必ず接触してくるはすだ…”


赤井さんが言っていた通りなら、これも赤井さんの計算通りなのかな
つまり、私も何か役に立てるということだ


「それで近々会わせるわ」


「分かった」


「ジンが、定期的にあなたの様子を見なきゃ気が済まないようだから、呼び出したのよ
 送っていくわ、私の車のところで待っていて」


私は頷くと、ベルモットの車が停まっているところに向かう
安室さんがどこかで会ったことがある気がしたのは組織関連の何かであったのかもしれない


“なまえ、紹介したい奴がいるんだ
 前に話しただろ、お前に似ている奴がいるって”

“うん”

“来週の日曜日、そいつ連れてくるよ”

“本当?楽しみにしてる”


「……!」


あの人はあの後………
忘れてはいけないのに、忘れてしまっていた記憶がボロボロとあふれ出す







「ジン、ずいぶん今日は無口じゃない?」


「男ができたのか」


「まあ…あの子も年頃だし…
 何?ジン、嫌なの?」


ジンは無言で部屋を出ていった
ベルモットは吹き出して、笑った


「過保護ね
 なまえがキティに似ているからかしら」



“あら、キティ”

“ベルモット”

“相変わらず、綺麗ね”

“…ふふ、女優に言われるとなんか複雑ね”

“そんなことないわよ
 だって、組織の男たちは一度はあなたに恋をするって言われているもの”



「……組織で一番綺麗な女に恋した哀れな男」