いってらっしゃいのキスはフレンチでA
「沖矢さん、ごめんなさい…」
「別に気にしてませんが…ちょっと危なかったですね」
沖矢さんが迫ってくるように近づいてくるので、私も反射的に下がってしまった
それが何度か繰り返された時、私は背中に壁が当たったのを感じた
気づいた頃には沖矢さんの手は壁についていて、これは俗にいう壁ドンだ
「お、沖矢さん…」
「今日はもう帰るんですよね?」
「はい…
実は今日、ジンとベルモットに呼び出されていて…」
「……そうか
本当は行かせたくないが、仕方ないな…」
「すみません」
沖矢さんと私の目線が重なった
思っていることは同じだ
離れたくない
私だって、沖矢さんと一緒に居たい
いつもそばに居たいと思ってる
今日じゃなくたって、帰るときは寂しいし、一人でベットに入ると色々考えてしまう
沖矢さんの側で寝ると不思議な程に安心してるからなのか、あの悪夢を見ない
沖矢さんの顔がゆっくり近づいてきたので、私は目を瞑った
言わなくても、分かってしまった
一度合わさり、離れた唇はまた角度を変えてくっついて、離れてを繰り返した
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「蘭ちゃん、園子ちゃん、私用事あるからもう帰るね」
「うん、またね」
「なまえ、またお茶しよ〜!」
「うん!」
沖矢さんと手をつないだままだったので、園子ちゃんと蘭ちゃんはにやにやしながら手を振っていた
離そうとしたけど、沖矢さんがつよく握りしめていたので、無理だった
真純ちゃんはなぜか表情を曇らせていた
「気を付けて
いってらしゃい」
「はい」
「分かりました
家に着いたら、連絡ください」
「沖矢さんは心配性ですね」
「そうですね、なまえさんがどこの馬の骨ともわからない男に誑かされるんじゃないかと心配でしょうがないです
……やっと手に入れることができたんですし、そんな簡単に奪われるのは良い気がしません、奪われるつもりはありませんが」
「え?」
沖矢さんは私の頬に手を添えた
驚いて、顔を上げるとまたキスをされた
沖矢さんは結構キスが好きだと思う
それは、さっきとは違った触れるだけの優しいものだった
「いってらっしゃい」
「い、いってきます…!」