その言葉にこめられた想いに私はまだ気づかないA


「あ…また動き出した
 今度は王石街道を南下して、鳥矢町方面に向かっているわ」

「まだまだ追いつけそうにありませんね」


私が沖矢さんの車の助手席に乗ろうとした時、哀ちゃんが私の服の裾を引っ張った
顔を見て、言いたいことは分かった
きっと、後ろに乗れってことだろう

沖矢さんを見ると、哀ちゃんを優しそうな顔を見ていた
私は、ドキッとした
これは、ときめく方じゃなくて、驚いた方

赤井さんこそ、哀ちゃんに執心しているんじゃないかな…


「しかし、犯人は一体どこに向かっておるんじゃろう?
 うろうろ迷っているようにも思えるが…」

「案外、本当に迷っているのかもしれませんよ?
 自分の望む…血塗られた着地点が見つからなくて…」


新一はきっと大丈夫
いつだって…新一はかっこよくて、私の憧れだ


“……前から思ってましたが、なまえさんはコナンくんに随分執心しているんですね”



「!」


沖矢さんとミラー越しに目が合った
その時、沖矢さんにさっき言われた言葉が頭の中で反芻した
沖矢さんは、江戸川コナンの正体を知った上であんなことを言ったのだろうか

すると、突然銃声が聞こえた


「い、今銃声のような音が…!」

「あの車よ!
 あの車に江戸川くんが乗っているわ!」

「では、この事を毛利さんに知らせてください
 こうなった経緯を説明できるのは彼らのみ…
 車種と色とナンバーを伝えて検問を張れば止められます」

「じゃ、じゃが人質を盾にとって、検問を突破されたら…」

「その時は力尽くで止めるまでですよ…」


隣に座っていた哀ちゃんが顔を真っ青にしていた
蘭ちゃんのお父さんに電話するとちょうど同じ道路の反対車線を走っているらしい


「そんな顔をするな…
 逃しはしない
 博士、ハンドルを」

「ええっ!?」


沖矢さんが突然ハンドルを離した
そして、車のドアを軽く開いて、顔を出した
胸元に手を入れたのはきっと拳銃が入ってるからだ

でも、沖矢さんは顔を引っ込めて、ドアを閉めた
その時、私たちの車の横を一台の車が通りすぎた
その車は、新一が乗っている車の前に飛び出して、衝突した

車からはもくもくと
煙が上がった
どう見ても、ただの事故でない

沖矢さんはそのまま事故の現場を通り過ぎていく

私に気を遣ったのか、哀ちゃんに気を遣ったのかは分からなかった
でも、きっと後者だろう