その言葉にこめられた想いに私はまだ気づかない@


アニメ:671〜674話



「え?コナンくんが誘拐された!?」


沖矢さんが博士の家を盗聴していた時にたまたまそんな会話が聞こえたらしい
新一は誘拐される才能でも持ってるのかな…

前にも何回かあったと哀ちゃんから聞いたことがある
でも、大抵は自分から捕まったり、捕まったふりをしていたりしてるから、そこまで心配する必要はないかもしれない

新一なら………
その時、前に見た夢が頭に過った
私の足元に倒れているたくさんの死体、それにはもちろん…


「なまえ、体調が悪いのか……?」


沖矢さんの顔だけど、赤井さんの口調だった
私の手は自分でも驚くくらい冷たくなっていた

なのに、汗は止まらない
ただの汗じゃない、これは冷や汗だ


「へ、平気です」

「無理をするな
 俺は博士の家に行ってくる」


沖矢さんはもうすぐで煮込み終わるクリームシチューの鍋を手に持ち、エプロン姿のままで家を出ていこうとしていた
確かにその方が自然な御裾分けっぽい


「私も行きます!」

「……前から思ってましたが、なまえさんはコナンくんに随分執心しているんですね」


玄関のドアを開けたままだったから、沖矢さんの口調だったのか、何かを誤魔化したくて沖矢さんの口調で話したのかは分からなかった
赤井さんは、大事なことは言ってくれない
誤魔化す時は、いつも沖矢さんの口調だ

でも、この時はなんとなく前者な気がした


「…今のは気にしないでください
 急ぎましょう」


茫然としている私を置いて、沖矢さんは家を出ていった
ゆっくりと玄関のドアが閉まる
閉まる直前に見えた沖矢さんの顔はどこか悲しげだった







私は我に返って、沖矢さんを追った
ちょうど玄関で沖矢さんはスタンバイしていた

博士との仕込みなのかな
私の玄関の前に立つ
そしたら、中から哀ちゃんと博士の話し声が聞こえてきた


「でも、どうやって追跡する気なのよ?
 博士のビートル、修理に出してるんじゃなかった?」

「あぁ…こうなったらタクシーに無理言って追うしか…」


沖矢さんは2人の会話を聞いて、待ってましたと言わんばかりに博士の家のドアを開けた


「では、私の車で追いますか?
 立ち聞きするつもりはなかったのですが……クリームシチューの御裾分けに来てみたら戸口で何やら不穏な会話が耳に入って…」

「昴くん!」


沖矢さんの後ろからひょこっと顔を出した私に哀ちゃんが気づいたようで、睨んでいた
哀ちゃんには沖矢さんとの関係を話していない
沖矢さんが組織の人間だと思って警戒してる哀ちゃんに余計な心配をかけてしまうと思ったからだ

沖矢さんの正体は哀ちゃんには教えられないし、私には説明できない
新一が話さないのだから、話さない方が良いんだと思う


「さぁ、追うなら早く…」

「じゃ、じゃあ車のキーだけ貸しなさいよ!
 私と博士となまえで追跡するから!」


私も!?と思っていると、哀ちゃんに当たり前でしょ!と言った顔をされたので、全て顔に出てしまっていたらしい


「貸してもいいんですが、あの車は癖があって私の運転じゃないと…」

「だったら、ワシと昴くんで追跡を…」

「ええ、それでも構いませんよ
 君が1人でここに残って、あの子の安否報告をやきもきしながら待っているつもりならね
 よければ君も一緒に行くのをお勧めします
 もちろん、無理強いはしませんが…」


沖矢さんは挑発的な言い方をした
これで哀ちゃんの中で残るという選択肢はなくなったはずだ


「……」


沖矢さんは車を取ってきますとクリームシチューを博士に渡して、戻って行った